PHOTO YODOBASHI
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SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
フルサイズLマウント向け単焦点レンズ「SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary」の実写レビューをお届けします。SIGMA fpの実質的なキットレンズとして大人気となりました45mm F2.8 DG DN。軽量コンパクトながらも、アルミから削り出した高い質感とメカニカルなデザインがとても秀逸で、ContemporaryラインがArtラインとは異なる価値を提案してくれる存在であると再認識したプロダクトでした。そのコンセプトを受け継いだ製品群には新たに“Iシリーズ”という名称が与えられ、今回紹介します65mm F2と35mm F2 DG DN、少し遅れて登場する24mm F3.5と一気にラインアップが充実してきました。
光学性能が高いレンズほど大きく重くなってしまう傾向はありますが、IシリーズではContemporaryラインのレンズとして、カメラ側の電子補正を積極的に活用しコンパクトにまとめ上げています。見て格好よく、持って辛くない、そして使って楽しいという三拍子揃った1本に仕上がっています。
65mmという焦点距離は標準レンズの50mmより長く、中望遠レンズの85mmよりも短い、絶妙な画角。F2の大口径を実現したため、45mm F2.8 DG DNに比べれば全長が28.5mm長く、最重量も190gアップになるなど、少々大柄にはなりましたが、それでも同クラスの85mmレンズと比べれば十分にコンパクトな印象です。レンズ構成は9群12枚。2枚の非球面レンズと1枚のSLDを採用し、グラスモールド非球面レンズは高精度金型を採用し、収差補正とレンズの小型化を実現しているなど、Artラインと比べても遜色ないリッチな構成を採用していると言えそうです。また絞りは7枚羽根の円形絞りを採用。応答性の高いステッピングモーターを用いたインナーフォーカスにより、高速かつ静かなAFを実現しています。それでは実写レビューをご覧ください。
( Photography : Z II / Text : Naz )
50mmよりも収まりがよく85mmよりも圧縮感のない画角はスナップ撮影においても使い勝手が良い印象です。バイクから2mほどの撮影距離ではピントは極薄というほど浅くはなりませんが、背景との分離も見事。シグマレンズらしいシャープなピントとクリアな描写を併せ持っていますね。背景も程よくディティールを残していて、ボケの中にそれぞれの物の形状と質感がよく再現できています。
猫との距離は約1m。絞りはF2の開放ですが、瞳に合わせたピントの被写界深度内に猫の顔がうまく収まり、輪郭が際立ちました。そこから後ろの背景を美しく溶かしてくれています。ピントのある目やヒゲから胸のあたりまでの毛並みの描写は素晴らしく、立体画像を見ているかのようです。なかなか開けてくれない家のドアを見つめた表情がなんともかわいいですね。
休日の歩行者天国、アンダー調に撮影してみました。ピントの位置は矢印の先端付近に置いていますが、背後を歩く人とさらに奥の街並みもしっかり分離し、立体感を感じさせる描写です。
遠景に前ボケを入れることで奥行きを演出してみました。こういうシーンでは標準〜広角レンズを使いがちですが、画面を整理するのには標準より少し長い65mmの画角や前ボケというアクセントを効果的に活かした画作りがしやすいように感じます。遠景でも絞り開放から素晴らしくキレのある描写です。
道路の反対側から撮影しました。この距離では、車とその周辺の景色をバランスよく切り取ることができますね。都会でのスナップは直線が多く歪みが気になってしまいがちですが、本レンズは各種収差を抑えながらSIGMA fpのボディ内歪曲補正により、ほとんど歪みを感じさせない気持ちの良い写りに仕上げてくれました。
かなり年季の入った歩道橋です。65mmは人の視界に近い雰囲気も残しつつ、50mmよりも少しだけ焦点距離が長いことで生じる圧縮効果により絶妙な遠近感を見せてくれました。赤い錆の凹凸や乾いた葉などの描写はリアリティがあり、乾燥した雰囲気もよく再現してくれています。
最短撮影距離付近まで寄って絞り開放で撮影しました。パッと全体を見ただけでも触り心地が伝わるようなメリハリのある描写です。湿度を感じるレタスの表面や艶やかなパプリカの質感や色彩をリアルに再現し、瑞々しさが際立っています。外出しにくいこの時期に、こんな風に家の中で撮影を楽しめたら申し分ありません。
マニュアルフォーカスで最短撮影距離の55cmに合わせ、カメラを前後しながらグラスの手前側にピントを合わせました。ここまで寄るとピント面はとても薄くなり、グラスの縁が溶け始めている程です。それでもガラスの厚みや形状、重さや肌触りまでも感じ取れてしまうのは見事というしかありません。最短での撮影ではボケ量も最大になり、ご覧の通り背景を完全に溶かしています。開放でも撮影しましたが、グラスの端の溶け具合で1/3段絞ったこちらをセレクトしてみました。
射し込む朝の光が人物を浮かび上がらせてくれました。85mmだと寄りすぎとなり、50mmだと周囲が入りすぎてしまうシーンです。使い始めは65mmの馴れない画角に戸惑うこともありましたが、標準ズームのテレ端手前と考えれば知らない画角ではないんですよね。
画面中央付近ではきれいな円形の玉ぼけですね。四隅に近づくと口径食の影響が出てきますが、F4まで絞ると口径食は解消されます。本レンズで採用されている高精度グラスモールド非球面レンズは、各種収差補正を行うために使用する非球面レンズの形成方法のこと。シグマではこの非球面レンズの形成に使用する金型の表面を+/-5ナノメートル（=0.000005ミリメートル）以下の精度で管理を行い、美しいボケ玉を実現しているそうです。
普段使いのレンズに新たな画角を
いかがでしたでしょうか。Artラインの写り＋コンパクト＋美しいデザイン＝Contemporaryラインかというような結果が得られた印象です。しかも、アルミから削りだした鏡胴はサンドブラストによる艶消しとアルマイト加工がされ、スタイリッシュでメカニカルなデザインと相まって所有する喜びを与えてくれていますよね。Iシリーズの製品は、撮影の道具として必要かどうかということに加え、どうにも揃えて並べたくなってしまう「モノとしての魅力が詰まったプロダクト」であるといえると思います。45mm F2.8 DG DNより少し大きくなった本レンズや35mm F2では、ピントリングと絞りリングの間にヘアライン処理された左右非対称（上方から見たとき）のリングがアクセントとして配置されており、高品位な印象だけでなく、レンズ着脱時のグリップにも役立つとのこと。また今回、一般的な樹脂製のレンズキャップとは別にアルミ製のレンズキャップが付属し、マグネットにより吸い付くというのもこれまでにない発想と感覚です。こういった新しいアイデアを積極的に採用しているところにも、今のシグマの勢いのよさを感じずにはいられません。
65mmという焦点距離はシグマによれば映画撮影用レンズにも採用されている長さだそうです。現行の写真用レンズとしてはあまりない長さではありますが、標準レンズより少しだけ長く、普段使いする新たな画角として結構面白い存在だと感じました。同じIシリーズの45mm DG DNや35mm DG DNと組み合わせれば、画にメリハリも作れますよね。Lマウントレンズとしてシグマfpだけでなく、パナソニックS1系やライカSL系などとのマッチングもよい本レンズ、シグマの大いなる自信作だと感じ入りました。どうぞ実際に手にしてその写り、その感触を確かめてみてください。
( 2021.01.14 )
カメラ業界のデザインとしてとても優秀なプロダクトだと思います。レンズの性能はもちろんですが、この見た目だけでもありではないかと。
純正の保護フィルター。付属のマグネット式キャップは使用できなくなりますが、かわりにキャップいらずの安心感が得られます。