PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary
シグマフルサイズLマウント用レンズ24mm F3.5 DG DN | Contemporaryのレビューをお届けします。シグマが掲げた新しいコンセプト ”Iシリーズ”はミラーレスシステムの利点を有効に活かした、”綺麗な画を撮れる”それ以上を追求したレンズシリーズです。コンパクトでありながらスタイリッシュなデザインとアルミ合金のひんやりした触り心地、絞りリングを回した際のカチッとした操作感が特長です。本レンズで4本目となりますが、まず開放F値3.5に驚きました。開放F値を小さくすればするだけ暗所での撮影に強みを持てたり、滑らかなボケやシャープなキレも期待できますが、その代償にレンズ自体が巨大になってしまうというのが難点でした。本レンズは思い切ってF3.5にすることで驚くほど軽量コンパクトに仕上がっています。実際に手に取ってみるとワイド単焦点であるにもかかわらず、前玉はかなり小さくフィルター径は55mm 、全長は48.8mmに重量は225gと、とても小さく軽く、SIGMA fpのコンパクトなボディに着けても丁度よいバランスです。F3.5であることであまりボケないのでは？と思うところですが、本レンズの最短撮影距離は10.8cmとレンズフードのすぐ先まで被写体に近づくことができるので、ぐっと被写体に近ずくなど条件を整えれば思った以上のボケも楽しめます。また、現代のミラーレスシステムの高感度画質の向上により、ISO感度を高くしてもある程度は画質劣化を避けられることからF3.5でも対応は可能だと思われます。この小さな鏡胴の中にシグマの光学設計技術と高度な加工技術により詰め込まれた非球面レンズやSLD（特殊低分散）レンズ、高屈折ガラスを効果的に採用することで画面隅々まで高い解像力を実現しています。現時点で世界最小のフルサイズミラーレスカメラとのセットで、どのような写りと使用感が得られるのか作例とともに見てみましょう。
( Photography & Text : Z II )
冬の時期は色彩が特に乏しくなりますが、冬にしか撮れない景色は必ずあります。葉が完全に落ちきった枝は毛細血管のように張り出していて、枝先まで高精細に描いています。絞りを少し絞ることでフリンジなどほとんどを感じないクリアな描写により、自然が創り出す造形美を余すことなく感じさせてくれます。
トートバッグに入れてもさほど重くならないので、ちょっとしたお出かけ用のカメラセットにも良さそうです。屋根の質感や、山の端の描写、空の濃淡を忠実に再現できています。作例は建物の窓から見える景色ですが、24mmという画角は、眼前の景色をぼんやり眺めているようなイメージでしょうか。28mmとも21mmとも違う24mmらしさは、やはりあるように思えます。
氷柱の質感と寒々しい雰囲気を撮ろうとレンズを向けました。木の枝が画面の前後で邪魔になっていましたが、ピント面から外れた枝はきれいにボケてくれて、寒々しさをより引き立ててくれたように感じます。
およそ10cmまで寄れるので散歩しながら気になったものに、ぐっとよって撮ることも可能です。ワイドレンズは手ぶれに対して、それほどシビアでないことから開放絞りがF3.5でもISO感度を上げすぎることなく撮影できます。またフルサイズカメラを首からぶら下げ、両手をポケットに入れて歩けるのは寒いシーンでは重宝しますね。※転倒には十分ご注意を
朝の何気ないフラットな光のシーンですが、画面上全ての質感描写が見事で、描く線が真っ直ぐで気持ちが良いですね。
F3.5で夕景の手持ち撮影では、さすがにISO感度を800まで上げていますが、ざらつくこともなく十分な写りです。カメラを少しだけ上に向けているのでパースがついていますが、描く線は真っ直ぐで24mmらしい伸びやかな奥行きを感じます。
ほんの少し樽状に歪みがありますが気にするほどでもありませんし、修正できるレベルです。むしろこのコンパクトサイズで、ここまでよく抑え込んでいるといったところでしょう。
さざめく湖面の様子を細かく描写しています。撮って出しのダム湖の水の色が美しくて、ぼんやり眺めていると吸い込まれそうです。
川の流れもいつまでも見ていられます。そうぼんやりと。
標高を下げると景色は春めいていました。24mmでも最短撮影距離まで寄ると小さな蝋梅の花も思ったより大きく撮れます。淡く透き通った花弁の質感描写が見事です。背景のボケは完全に融けて洗い流すほどではないですが、その場の雰囲気を残したきれいなボケですね。
質感の違うものに、ぐっと寄ってみました。ピント面の浮き立った様子や前後のボケも申し分ないですね。24mmのパース感が独特な雰囲気を作ってくれました。
夕焼け空がビルに写り込んでいるシーンですが、艶やかな質感とハイライトからのグラデーションが美しく描かれています。フルサイズセンサーによる粘り強さもありますがレンズの逆光耐性もなかなかのものと思われます。
自分のスタイルに合うレンズを見つける
ワイド単焦点24mmは、これまで単焦点レンズを選ぶ際に、なかなか選択肢にあがってこなかったレンズなのかもしれないです。おそらくですが、まず35mmか50mmの単焦点を手に入れて、その次か、もしくは次の次に選ぶのかなというイメージです。私が思うに、この焦点域にはそんなに必然性が無いからなのかもしれません。人の視界よりやや広いけど驚くほど広くもないことで、何となくぼんやりと眺めた画角なのかなと感じました。でも今回使用して、ぼんやり眺める視界を意識した切り取り方も、ちょっとおもしろく24mmに興味が沸きました。そんなゆったりとした撮影スタイルにはやはり軽量でコンパクトが合いますよね。シグマはそういうスタイルを求めた結果、前出の”Iシリーズ”にいきついたのだと思います。この”Iシリーズ”はとても潔く割り切っていて、超弩級の写りは他のラインアップに任せて、目指したのは、写真好きが納得するレベルの綺麗な画が撮れること、レンズ自体がカッコ良いこと、軽くて小さいこと、そしてお求めやすいことに注力しました。つまりスマートフォンのカメラでは絶対に撮れない画をトートバッグに入るほどのサイズで実現したわけです。元々その役目はつい最近までコンデジと呼ばれていたコンパクトカメラが担っていましたが、もはやどんどん進化するスマホに寄り切られ土俵から去っていきました。そして今、カメラのミラーレスシステムがようやっと熟成し始めたことで画質、サイズなどいろんな面で自由度が増し、新たに登場してくるレンズに明確な役目を与えることができるようになったと思います。自分の撮影スタイルや写真の用途に合わせて機材を模索してそれを実行できる時代になりました。SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryはスマホでは味わえない高画質な写真とともに「写真を撮る所作」を楽しみながら、コンパクトでスタイリッシュなデザインを提供してくれるそんな一本です。
( 2021.02.03 )
時代はスタイルに合わせたレンズ選びへ。
システムをコンパクトにすることでシャッターチャンスは確実に増えます。他のLマウントボディをお持ちの方も是非SIGMA fpを。
紫外線の影響により晴天時の色の転びをを軽減してくれます。ちょっとした衝撃からも守れますからね。
SIGMA fpはコンパクトですが意外と電力を消費します。予備電池は3〜4個あると安心できます。