SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art

Lマウント用「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」のレビューをお届けします。本レンズはミラーレス専用設計のArtレンズとしては初めてのマクロレンズです。105mmという中望遠域はそのワーキングディスタンスから撮影もしやすく、表現の幅も考慮して選択されたとのこと。レンズ構成は12群17枚。軸状色収差の補正に効果の高い特殊低分散ガラスのSLDを1枚採用しています。最短撮影距離は29.5cmで等倍まで撮影ができ、さらに、テレコンバーターTC-1411（×1.4）およびTC-2011（×2倍）にも対応していますから、単なるマクロ撮影を超え、日常的に目にしているものから新しい発見を得ることができそうです。ただ、テレコンバーターを使用すると収差も拡大されてしまいますから、レンズの素性の良さが問われるところです。今回のレビューではSIGMA fpに本レンズを装着して撮影を行っています。作例をご覧になっていただき、本レンズの実力をご堪能ください。

( Photography : Naz / Text : Rica )

花に虫が止まっていたので撮影してみると、ハチではなくハエでした！ クリックで等倍画像をご覧になっていただけますので、実は思いのほか派手で“虫らしい”ハエの姿をご確認ください。

カメラを三脚に据え、部屋を暗くしてiPhoneのLEDライトを天井にバウンスさせて洋梨を“物撮り”してみました。光量が少ないため、露光時間が長くなりますから、iPhoneも固定した方がよかったかもしれません。腕がプルプルしました（笑）。マクロレンズがあればこんな風に手元にあるもので物遊びもできます。お皿と洋梨の質感の描き分け、背景との分離感も素晴らしく、とてもリアルです。

こちらのウイスキーも洋梨のカットと同様に天井にLEDライトをバウンスさせて撮影しています。グラスの質感や水滴の描写からひんやりとした温度が伝わってくるようです。

おそらくイヌワラビだと思われるシダ植物。ピントを合わせたぜんまい状の葉のシャープかつ精彩な描写に脱帽です。背景にある開いたシダの葉のようなザワつきやすい背景でも、こんな風にうまく溶かしてくれるのは本レンズの大きな魅力です。

光に透ける真っ赤なもみじの葉脈まで、まるで触れられそうなほどのリアリティを伴ってしっかりと描き切っているのはさすが。前ボケも柔らかく、画に奥行き感を纏わせるのに一役買っています。

逆光でバラを撮影しました。フードを装着していますが、逆光には強い印象を受けました。背景の玉ボケも美しく、全体として描写は硬めの傾向ですが、湿度の感じられる描写です。

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街路樹のイルミネーションを開放で。開放付近ではどうしても口径食が多くなりますが、絞ると解消されます。ただし、玉ボケは小さくなります。玉ボケのなかに年輪の模様は出現しないものの、右上から左下に向かって線が入っています（クリックすると絞った画をご覧になれます）。

弱い光でも、その場の雰囲気を上手に描いてくれるレンズです。シャープかつやや硬めではありながらも、ザワつかず落ち着いた描写となるのは本レンズの良さではないでしょうか。

硬めの描写とはいえ、女性の手の柔らかさや、シワはあるものの肌の滑らかさはしっかりと伝わる描写です。

大輪の菊が見事に咲き誇っていました。スナップ的に光と影を生かして、こんな風に切り取るのも中望遠レンズならではの楽しみ方です。

• 105mm F2.8 + TELE CONVERTER TC-2011
• 105mm F2.8 + TELE CONVERTER TC-1411
• 105mm F2.8

あるカメラの基盤を撮影しました。センターにある「750」と記載のあるチップのような部分にピントをおいています。テレコンバーターTC-2011（×2）を装着した際には、マスターレンズよりも最短撮影距離が長くなります。半田やプリント基板の描写、アウトフォーカスになる周辺の像もきれいにぼけていき、崩れる様子はありません。

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マクロから遠景までズームレンズライクに1本のレンズを楽しむ

マクロ撮影から遠景までオールラウンドに使える中望遠レンズ「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」は、近接から風景までとても“カッチリ”とした描写です。硬質な被写体を写すと“シグマらしい”と感じる描写ですが、一方でボケや明るめの露出を活用することでシャープな中にも柔らかさを見せる演出も可能です。さらにテレコンバーターも使用できますので、等倍からさらにグっと寄った撮影ができ、日常の中にこれまで見ることのできなかったさまざまな表情を見つけることができるでしょう。テレコンバーターを使用することを見越してか、色収差を抑えることを優先した設計となっており、AFは爆速とはいきませんが必要十分。カメラ側での補正をONにして撮影していますが、色収差は驚くほど発生しませんでした。また、本レンズはインナーフォーカスを採用しているため、レンズ全長の変化はありません。レンズの重心がマウント寄りなので撮影時は重さを感じにくく、フードまで入れると長いレンズではありますが、その見た目に反して軽量な仕上がりとなっています。フォーカスリングは幅が広くバイワイヤによる動作で、ピントをじっくり追い込むことができます。レンズ鏡胴には任意で各種機能を割り当てることができるAFLボタン、フォーカスリミッタースイッチ、絞りリングのクリックON/OFF、絞りリングロックスイッチなどを備えています。マクロから遠景まで描写も大変安定しており、マクロレンズらしくシャープでピントピークはとても鋭く解像感の高い画を得ることができます。105mmという中望遠域は、初めて使う人にとっては一見画角の狭さに驚くかもしれませんが、被写体に寄って、引いて撮影を行うことで、1本のレンズをズームレンズライクに使うことが可能です。本レンズで、これまで見たことのないマクロの世界を楽しみ、目の前の風景を切り取る感覚を身につけることができるでしょう。もちろん、金属製の外装があなたの所有感も満たしてくれます。

( 2020.12.10 )