PHOTO YODOBASHI
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Nikon NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
Zシリーズのボディが発表された際、同時にラインナップされた「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」。発売が延期になり、待っていた方も少なくないでしょう。今回は満を持して登場するNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sのレビューをお届けします。
すでにZマウント用レンズは、「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」が発売されていますが、24-70mmといういわゆる“標準ズーム”を一本持っていると、35mmそして50mmはこのズーム域に含まれていますよね。そこをあえて単焦点レンズで撮るということに、一体どんな意味があるのでしょう。50mmは“標準レンズ”といわれますが、24-70mmが標準ズームと呼ばれる昨今、その中間に値するのは35mmと40mmと50mm。いずれの焦点距離も最近では“標準レンズ”として語られることが少なくありません。標準レンズとしての50mmには、凝視していない際に見ている感覚に近いとか、実画面に対し、対角線の長さにいちばん近い焦点距離とか、広角レンズ、および望遠レンズそれぞれの特徴というのがいちばん弱くなって重なる焦点距離とか、いろんな説があります。確かに、広角と望遠の間である50mmはパースもつき過ぎず、圧縮効果もさほど大きくありませんから、とても自然に被写体を捉えることができます。ネガティブないい方をすれば特徴がないともいえるのですが、だからこそさまざまな被写体にチャレンジしていくことが可能な焦点距離なのではないでしょうか。撮り手が自身の足を使って動き、被写体に寄って絞りを開け、望遠やマクロ的に、引いて絞れば広角的にも撮ることができる。自身の体で距離感をつかみ、構図を工夫して被写体を捉えた一枚には、自ずとそのフィジカルな動きが現れ、スナップ撮影でもいい相棒となってくれるはずです。
NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは、開放F1.8と最近ではやや控えめな開放値だなと思ってしまう数値ではありますが、前玉の凹レンズを見るに、おぬしタダものではないな……と感じます。レンズ構成は9群12枚。EDレンズ2枚に非球面レンズ2枚を贅沢に採用し、さらにナノクリスタルコートが施されていますから、逆光時の耐性はお墨付き。Zマウントでなければ生まれてこなかったであろうこのレンズ配置は、ニコンが謳う“新次元の光学性能”を実現するために他なりません。画質に妥協することなく、高画素機に対応する高い解像度と美しく溶けていくようなボケ味を両立させ、軸上色収差も徹底して抑えられているというのですから、期待は高まるばかり。解像感と描写力というのは似て非なるもの。解像度がいくら高くても、エモーショナルな描写でなければ撮り手の心をつかむことはできません。さて、ニコンはZマウント一本目の“標準レンズ”に対して、どのような解を出したのか。さっそく作例をご覧になっていただきたいと思います。
( Photography & Text : TA )
薄れゆく光
最短撮影距離は40cm、絞り開放での撮影です。フォーカスエリアはキリッとした像を結び、そこからなだらかにボケが発生します。葉脈ならぬ花脈とでも呼ぶのでしょうか?花びらの先に向かってだんだん濃くなっていく紫色の脈まで緻密に描き込んでいます。
被写体のもつお洒落な雰囲気を、さらに上質なものと仕立ててくれるボケ味ですね。被写界深度の浅さがよくわかりますが、生地の縦糸と横糸の一本一本まで丁寧に再現。その柔らかな風合いまでもが直に伝わってくるような描写に感心しきりです。
AFは素早く、スッと小気味よく決まります。AFに不安がないのでスナップではAF任せでスイスイ。今回は、レンズのコントロールリングに露出補正機能を割り当てて、露出を追い込みながらの撮影がスムーズにできました。
かなり意地悪な場面ですが、これ開放での撮影です。普通のレンズならフレアなどが盛大に出てきてもなんら不思議ではないのですが、よく抑えられていますね。コーティング然り、レンズの素性のよさが伺えるカットではないでしょうか。
水面にV字状に映り込んだ空の部分がデフォーカスになり、ベールが掛かったようです。淀みないリアルな描写に写真的な表現が加わることで、ありふれたシーンが様になる。やはりレンズの表現力がものをいうわけですね。
被写体に寄れば中望遠っぽく、引けばご覧のように伸びやかさのある広角のようにもフレームできる。標準と呼ばれる50mmレンズは、単焦点ながら何かと重宝します。
本レンズでのファーストカットです。最短40cm付近での撮影で、マクロとまではいきませんがかなり寄れますね。テーブルフォトにも重宝します。
幻想的な玉ボケとその正体である電飾のあらわな姿の競演?!それにしても綺麗に表現してくれますね。
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誤魔化しの効かない高画素センサーだからこその50mm。
輝度差のあるシチェーションだろうが、フラットな光だろうが、逆光だってなんのその。絞り開放からまったくと言っていいほど破綻が見られない。まあとにかくよく写るものです。フォーカスエリアの解像力だって絶好調。絞り込んでいっても隅々までビシッと精細に、えげつないほどに解像しているではありませんか。これはちょっと隙が見当たらないなぁというのが正直な印象です。使用したカメラボディZ 7の有効画素数は4575万画素、ローパスフィルターレス。そんなシビアなセンサーに、本レンズが光の情報を余すことなくしっかりと届けきっているからこそ、こんなにも厚みのある画が得られていることがわかります。一方、冒頭でも触れた絞り開放F1.8という、一見すると控えめにも感じるスペックでしたが、実際の表現力をご覧になってみていかがでしたでしょうか? 品のある柔らかでクセのないボケ味。ボケ量だってかなりボリューミーですよね。場面によってはちょっと絞って、ボケ量を抑えたくなることもしばしばでしたから。もしこの先、本レンズのような秀逸な光学性能を持ち合わせ、さらに明るいレンズが出てくるとしたら、きっとサイズも重さもそれなりに大掛かりなものになってくるはずです。その点、「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」はミラーレス一眼のアドバンテージであるハンドリングのよさをスポイルせずに、たっぷりとボケが得られるわけです。従来のF1.4クラスをも凌ぐ勢いの表現力とでもいいましょうか、次世代レンズの力をまざまざと見せつけられてしまいました。これだけの描写力ですからお値段もかなり…と思ってしまいますがそんなことはありません。得られる写真からすると、ビックリのバーゲンプライスと言ってしまってもいいでしょう。Zマウントユーザー必携の一本となること請け合いです。
( 2018.12.07 )
Zマウントレンズの標準単焦点レンズが満を持して登場しました。これまでのイメージを一新する新次元の描写力、ナチュラルで美しいボケ味に誰もが魅了されるでしょう。
超低反発ARコート採用。ニコンならではの高い光学性能の実現でレンズ本来の描写に極限まで迫る、高性能な保護フィルターです。Zマウントレンズにはぜひお勧めしたい逸品です。
フルサイズミラーレス、4575万画素という高画質ながら、ニコンらしい質実剛健さは健在。Zマウントレンズの性能をフルに引き出し、圧倒的な解像感を実現します。
Zシリーズボディ双子の弟とも呼ぶべき、2450万画素のスタンダードモデル。高感度に強く、連写能力も高いオールラウンドモデルで軽快な撮影が可能です。