PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Nikon NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
ニコンからフルサイズ(FXフォーマット)対応のF2.8通しとなるズームレンズ「NIKKOR Z 28-75mm f/2.8」がリリースされました。Zマウント用の標準ズームで明るいレンズが欲しいとなれば、ハイエンドなS-Lineに属する「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」 の一択という状況でした。そして今回のレンズはズーム域をテレ側に若干スライドし、スリムなフォルムの565gにまとめ上げてきました。鏡胴まわりをスッキリとさせた分、AF/MF切り替えスイッチやFnボタンは備えていないものの、リーズナブルなプライスにぐっと抑えてきたところは大変嬉しいところ。また、最短撮影距離は19cm(ワイド端)と被写体に寄り切ることができます。できるだけ明るいレンズを、と意欲満々の方にとってはとても気になる存在の登場ではないでしょうか。そんな我々の期待にどんな写りで応えてくれるのかと、本レンズの明るさを活かすべく日が暮れるまで試写してきましたのでどうぞご覧ください。
( Photography & Text : KIMURAX )
まずはワイド端を。絞り開放で逆光と少々意地悪な条件で撮影してみましたが、まったくと言っていいほどに不安のない描写です。解像力、コントラスト上々。右上の木はアウトフォーカスしていますが隅で像が流れるようなこともなさそうですね。直線は直線としてビシッと通す。開放から遠景をここまで緻密に描き込むとは頼もしいばかりです。
川に近づき今度はテレ端で。それなりに流れは急なものの、向こう岸から鴨は着々と進んできます。絞りはF5.6あたりでパンフォーカスになる印象。開放から半段ほど絞っただけですがフォーカスエリアの像に甘さはなく解像力の高さが窺えます。
どーんと太陽をフレーム内に入れてみてもフレアはほとんど見受けられず。レンズを向ける角度によってはゴーストが現れますが軽微。ご覧のように逆光耐性は高いと感じました。
高コントラストなシーンですが、枝のハイライト部分に嫌な色づきはありません。色収差がしっかりと抑え込まれていることがわかります。フォーカスした樹皮を拡大していくと、その細やかな描き込みにぞくっ。画全体としての立体感というか奥行きのある表現が見事です。
AFは素早く、確度や追従性も申し分なし。さすがは純正。それにしてもハイライトもシャドーも曖昧になることなく、バランスよくびしっと描き込んでいますね。シャドーエリアの情報まであますことなくきちんとセンサーに届けられているのがわかります。
ブロンズ像のように微動だにしない大道芸人さん。ピント面が克明に描き出した無機質な表情。その佇まいをより象徴的に浮かび上がらせる前後のボケが、実にいい仕事をしています。
背景を程よくぼかしながら金属の形状や質感、ほのかな湯気の様子までもリアルに表現しています。珈琲の香りがふわっと鼻に届いてきたかと錯覚しそうなほどです。
ワイド端では最短撮影距離19cmと被写体に肉薄できます。ボケのボリュームはたっぷりですね。ちなみに1枚目の菜の花も最短での撮影です。
色々と試してみたところ、最短で撮影するよりも30~40cmほど距離を取った方が、ボケの質的には整ってくるように感じました。
中間域での撮像もすこぶる良好。色再現もニュートラルで、派手過ぎず地味過ぎることもありません。立体感あふれる画が得られる明るいレンズが、気軽に持ち歩けるのですからスナップ撮影がこれまた楽しくなります。フレームが整理しやすいズームレンズとなればなおのことです。
露出をガツンとアンダーに切り詰めて撮影しても、黒潰れするようなことはありません。
ガラス越しで少々距離はありますが、生地の質感や風合いが伝わるような描写です。
気軽に付き合える明るさがうれしい。
ご覧いただいた通り、高い解像力を持ちながらもカリカリせず、大口径らしいボリューミーなボケを添えてくれるレンズでした。絞り開放からキリっと解像し、メリハリの効いた画はZレンズらしいなと感じさせてくれます。F2.8の大口径ながら軽くてスリム。3年ほど先行して投入された「Z 24-70mm F/2.8 S」の作例カットに触発されながらも、カメラボディ一台買えてしまうプライスにぐっと我慢してきたという方もいらっしゃるはず。おめでとうございます。待っていた甲斐があるというものです。価格差で言えばおおよそ半分ですからね。一方、描写力が半分かといえばそんなことはぜんぜんないわけで、気軽に軽快にF2.8通しズームが楽しめるチャンスの到来です。あえて言えば、ボケに若干の癖が見え隠れするところがありますが、目くじらを立てるほどでもないかと。軽く、AF/MF切り替えスイッチやFnボタンが無い分、シンプルなオペレーションなのでスナップ撮影にはむしろ好都合。明るいレンズだから一日中スイスイ振り回せる。この一本を足掛かりに、ゆくゆくはS-Lineの「Z 24-70mm F/2.8 S」にという計画だって大いにありです。これで決まりですね。どうぞ、カートへお進みください。
( 2022.01.31 )
気軽さ軽快さという点では、「Z 24-70mm F/2.8 S」ユーザーの方もにおすすめです。日常使いにぜひ。
前玉をしっかり守りながら、レンズ性能を妨げない頼もしさ。こちらも純正で行きましょう。