PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

Carl Zeiss Milvus 2/50M

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

標準域のマクロレンズとしてはいちばん明るいF2という開放値を持つMilvus 2/50M(ニコンFマウント用)のレビューをお届けします。本レンズはCarl Zeiss Planar T* 2.0/50の後継モデルとなっており、最短撮影距離24cm、最大撮影倍率1:2のハーフマクロです。ハーフマクロというのは、被写体がカメラのセンサーに写る像の大きさが半分(つまり1/2)のマクロレンズのこと。センサーに写る像の大きさと被写体そのものの大きさの比率が“最大撮影倍率”というわけです。ただ“寄れる”だけのレンズではなく、小さいものでも実物大または半分の大きさで写すことができます。本レンズは50mmという標準域の単焦点マクロレンズ。50mmですからワーキングディスタンスも短めですが、撮影する際に自分が被写体にググっと寄っていけば、これまでに見たことのない世界がファインダーいっぱいに広がるでしょう。ClassicシリーズのMakro-Planar T* 2/50のレンズ構成を継承した本レンズは、デジタルに最適化したコーティングを適所に施しており、描写性能も向上。F2という明るい開放値は、標準域のマクロレンズとしては最も明るく、マクロ撮影のみならず、日常的に使っていくことのできる一本です。

( Photography : A.Inden / Text : A.Inden & Rica )

Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

ツァイスらしい滑らかな階調を活かして水の質感を表現しようと、コップに注がれた水、雨の路上に放置されたペットボトルをシンプルな画面構成で撮影しました。重さを感じさせる水の表現は、このレンズ独自の世界観ですね。水を表現するためアンダー気味に撮影していますが、暗部は潰れることなく、画面すみずみまで水の質感を再現しています。

Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

後ろボケを確認するため少しうるさい背景を選んでみました。もう少し嫌なボケ味になるのではと思ったのですが、柔らかく素直なボケ方に好感が持てます。マクロレンズはボケ味が硬いと言われることもありますが、そんな様子はほとんど感じられません。

Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

ツヤっとした表現が美しいですね。お店で出されたものを座ったまま撮っただけですが、不思議な雰囲気に仕上がりました。お皿全体を撮るには少し長い焦点距離ですが、食のシズル感を表現するには50mmマクロがいちばん使いやすいのではないでしょうか。F2というマクロとしてはかなり明るい開放値も効いていますね。

Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

レースのカーテンで前ボケと後ボケの違いを確認してみました。前ボケの方がボケ量は大きいいですが、ボケ方の傾向は同じに感じられます。

Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

ヌルっとした金属の質感、柔らかいボケ味。説明はいらないですね。これぞプラナーという写りです。


Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

被写体が少し逆光気味に光を受ける条件で、開放で少し露出オーバーで撮るとピントピークの周りに若干にじみが見られます。このにじみはコーティング性能の違いか、前作の「Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/50」と比べて若干抑えられているように感じられます。

Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

緑と赤の世界。大口径のマクロレンズなのでボケ味の柔らかさに注目してしまいますが、描写はクリアーで色乗りも素晴らしいですね。開放で撮ると画面の周辺に若干口径食が見られます。

Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

絞って撮影することで周辺まで均一な“ザ・プラナー”という描写になります。


Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

後ろの車の形がわかる程度に絞って撮影しました。同じ条件で開放でも撮影しましたが、全体から受ける雰囲気は被写界深度が深くなっただけで、ほとんど変わりませんでした。絞り値で描写が変化しないことは、狙った雰囲気に仕上げるための大事なポイントです。

Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

Nikon D850, ZEISS Milvus 2/50M, Photo by A.Inden

50mmは町の風景を切り取るのに適した焦点距離。気になった被写体だけでなく、その周りの雰囲気をも含めてシンプルに画角に収めてくれます。表参道付近で、クリアーな描写、柔らかなボケ味のイメージがうまくいかせるようなシーンを狙って撮影しました。違う描写のレンズを手にすると、全く違った切り取り方になるでしょうね。


  • PHOTO YODOBASHIプラナーらしい柔らかなボケを味わうため、ティルト式液晶を使い地面ギリギリで撮影しました。MFですが、液晶の拡大機能を使えば、花弁の先端、雄しべ(?)も難なくピントを合わせることができます。
  • PHOTO YODOBASHIピントピークに大好物のにじみが出るはずだったのですが、コーティングが変わったためか、ほとんど感じることができませんでした。にじみがないとピントピークがさらにシャープに見えますね。マクロレンズとしては正常進化ではないでしょうか。

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さまざまな条件でプラナーらしさを堪能できるレンズ

プラナータイプのレンズ構成といえば、柔らかなボケ味が魅力です。ふわっとボケていく様は、素直に美しいなと思います。実際このタイプのレンズを持つとボケ味を活かせそうな被写体を探してしまう自分に気付きました。ツァイスがプラナーを生み出したコンセプトは、画面周辺まで均一な描写を持ち、絞りによる描写の変化がなく、開放から写りの良いレンズというものでした。しかし、コーティング技術が現在ほど発展していなかった時代では、全ての条件でこのコンセプトは実現できず、逆光ではフレアが出たり、開放でピントピークににじみが出たりしていました。現代のレンズでは、最新技術でのコーティングが可能になり、時を経て、このコンセプトが見事に形になったのではないかと感じました。逆光開放でのにじみやフレアーは“あばたもえくぼ”と思われるかもしれませんが、実は捨てがたい魅力があります。少し古いPlanar 50mm F1.4と共に本レンズを鞄に入れて撮影に出かけられれば、これほどの幸せはないのではと。欲深くて申し訳ありません(笑)。


( 2019.08.28 )

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マクロレンズがあれば、これまでの写真より、さらに一歩、いいえ、5歩も10歩も被写体に踏み込んだ撮影が可能になります。F2という明るい開放値のマクロレンズで日常の1シーンをこれまでとは違ったアプローチで切り取ってください。

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T*コーティングを施した、ツァイスのUVフィルターです。T*コーティングでレンズの性能を最大限に引き出し、レンズの前玉の保護にも重宝します。もちろん純正フードやキャップもきちんと装着できます。

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現行のレンズを手にし、ZEISSレンズやその歴史が気になった方は、ぜひこの一冊をどうぞ。往年の名レンズの描写とともに、ツァイスのこれまでの軌跡がわかる一冊です。

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電子書籍のいいところは、配送を待たずにすぐご覧になれることです。また、紙で見るのとは違う発見もあるかもしれません。見て、読んで、ZEISSを堪能してください。

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