PHOTO YODOBASHI

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Nikon D850, Irix Dragonfly 45mm F1.4, Photo by KIMURAX

Irix Dragonfly 45mm F1.4

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
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フォトグラファーとエンジニアによって2016年に設立されたIrix社がリリースするレンズは、フォーカスリングの素材違いで異なるペットネームを付しています。金属製の“Blackstone”、そして樹脂製で軽量化した“Firefly”の2タイプ。同一光学系でありながらも、手触りの違いはもちろん重量が異なるのがポイントのようです。今回レビューをお届けするのはフルサイズ用MF標準レンズ「Dragonfly 45mm F1.4」。こちらのレンズには金属仕上げが用意されておらず、樹脂仕上げのみをラインアップ。しかしちゃんと“fly”の文字が刻まれているわけです。45mmというちょっと広めの画角を有する標準レンズですから、軽快なスナップ撮影をお楽しみくださいというメーカーさんからのメッセージでしょうか?しかも開放F値は1.4という望外の明るさを有しており、ボケを活かした表現力にも期待が膨らむというものです。試写したニコンFマウント用の全長は103mm、重量905g。MF標準レンズとしては少々ずっしり感があるものの、EDレンズをはじめ4枚のHRレンズを組み込んだ9群11枚構成のレンズがぎっしり詰まっているのでしょう。大口径レンズらしい手応えといえます。また、使用したカメラボディD850が1000g前後ですから、重量バランスはばっちりです。となれば、あとはどんなアウトプットをもたらしてくれるか気になるところ。まる一日かけてスナップしてきた作例カットでご確認いただきましょう。

( Photography & Text : KIMURAX )

Nikon D850, Irix Dragonfly 45mm F1.4, Photo by KIMURAX

F1.4というスペックがもたらすボリューミーなボケ。そこからすっと立ち上がってくるフォーカスエリアは精細にしてクリア。画全体としての柔らかさを損なうようなことはなく、絞り開放から良好な像を結ぶレンズだと思います。大口径レンズですからそれなりに周辺落ちもしますが、もし気になるようであればF4、F5.6あたりまで絞るとよいでしょう。

Nikon D850, Irix Dragonfly 45mm F1.4, Photo by KIMURAX

鋳物の椅子をフォーカス内に収めようとF2.8まで絞っての撮影。適度にシャープネスを増しつつもカリカリになるようなこともなく、被写体のフォルムを自然にかつ丁寧にトレースしているという印象です。

Nikon D850, Irix Dragonfly 45mm F1.4, Photo by KIMURAX

MFレンズだからといって動きものを避ける必要はありません。置きピンで、そこにターゲットが入って来た時にシャッターをバシバシ切ればいいのです。上手くハマったカットが1枚ぐらいゲットできていれば御の字、というぐらいの大らかな気持ちで臨むのも悪くはないでしょう。


Nikon D850, Irix Dragonfly 45mm F1.4, Photo by KIMURAX

本レンズは絞り開放からしっかりと解像しながら、F4あたりで解像感のピークを迎える感じでしょうか。さらに絞ってパンフォーカスになるのはF8を越えてからになりますが、そこから解像感がどの程度落ちていくのか確かめてみました。さすがにF16を越えるとねむさが感じられてきましたが、F11ないしはギリギリF13までなら十分に使えそうです。

Nikon D850, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by KIMURAX

カチッと撮りたければF4あたりがおすすめですね。申し分のない解像感が得られます。

Nikon D850, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by KIMURAX

柔らかさの中にもちゃんと芯を感じさる描写は、何でもないシーンをドラマチックに表現してくれます。絞ってカチッと収めるもよし、開放して抒情的に切り取るもよし。大口径マジックを堪能するにはうってつけの一本ではないでしょうか。

Nikon D850, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by KIMURAX


Nikon D850, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by KIMURAX

せっかくの明るいレンズですから、夕暮れ以降も連れ出したいものです。絞って撮るのがセオリーといえる被写体ですが、手持ちギリギリのシャッタースピードということもあり開放で。それなりの距離もあったことで、いい塩梅で深度に収まってくれました。それにしても、よくもまぁ開放からスッキリとした像を結ぶものです。

Nikon D850, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by KIMURAX

雰囲気たっぷりですね。一眼レフにマウントするとファインダーを覗いた瞬間にレンズの力みたいなものを感じずにはいられません。

Nikon D850, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by KIMURAX

画面全体を見渡しても像の流れはなく、絞り開放から整った像を結びますね。至近距離からの眩いばかりのスポットライトに晒された被写体ですから、いろんな色が出てきても不思議ではありませんが、程よく抑えられていると思います。

Nikon D850, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by KIMURAX


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表現したい気持ちに突き刺さる。ちょっと広めのMF標準レンズ。

本レンズの鏡胴前方にはフォーカスロックリングが備えられており、絞りをF8あたりまで絞ってフォーカスを固定しておけば、ノーファインダーでの日中ストリートスナップもサクサク決まりそうです。もちろん、フォーカスリングを慎重に操りながら被写体とじっくりと向き合うのも一興。ここまでご覧いただいたように、絞り開放からきとんと描き切りながら表現してくれるレンズは、頼もしいの一言に尽きます。開放寄りでの周辺落ちはあるものの、色収差もよく抑え込まれていることもあり、よく練られた光学系を有していることは予想に難くはありません。もちろん冒頭のカットの逆光のような手強いシーンでは、フレアやゴーストも現れますが、むしろ現れてくれた方が“雰囲気”という点では効果的だと個人的には思うのです。きちんとした描写性能を発揮しながらも、周辺落ち、フレアやゴーストといった現象がスポイルされていない方が、レンズという“絵筆”としては面白かったりするのですよね。このレンズだからこそ得られる偶然の賜物があるから、ますます写欲が増すという好循環。こんな時代にマニュアルフォーカス、しかもちょっと広めの標準レンズをチョイスするなんて、遊び心旺盛な証拠。写りはもちろん外観デザインが気に入った!という方は、きっと感度が高い人です。

( 2020.09.07 )

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いわゆる標準50mmからちょっと広めの45mm。窮屈に感じ無い標準域の瞳でスナップする目眩く楽しさ。MFでじっくりと被写体と向き合う時間を心行くまで堪能してください。

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