PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
シグマがCP+2023でアナウンスしていたニコンZマウント用のレンズがいよいよリリースされました。同時に3本です。16mm、30mm、56mmのいずれもDXフォーマット(APS-C)向けとなる大口径レンズ。そのうち今回レビューをお届けするのは「30mm F1.4 DC DN | Contemporary」となります。フルサイズ換算で45mm相当の画角になる、いわゆる標準単焦点。高性能なズームレンズが増えてきた昨今ですが、フレーミングの工夫により広角的にも望遠的にも切り取ることができる使い勝手に富んだ画角と言えるでしょう。F1.4という明るいレンズですが、重さはたったの285gに全長は75.3mmのコンパクト仕立て。思い立った時にサッと気軽に持ち出せるこのサイズ感は有り難く、これ一本つけっぱなしで一日中撮り歩くのもよいでしょう。そういった日常使いから、ちょっとした旅行のお供にとなにかと活躍してくれることが容易に想像できます。そしてやはり単焦点レンズですから、その写りにも大いに期待が膨らむというもの。たっぷり試写してきましたので、どうぞご覧ください。
( Photography & Text : KIMURAX )
ボケからすっと浮かび上がるハイライトエリア。露出をアンダー気味にしての撮影ですがシャドーエリアのトーンもそれとなく感じられ、ガラスの汚れや経年具合とのコントラストが、なかなかよい雰囲気を醸し出しています。
絞り開放ですがピント部分では十分な解像感が得られています。2段ほど絞ればビシッと隅々まで整う感じでしたが、靄がかかった雰囲気には被写界深度の浅い写りがそれなりにしっくりくるようです。
旅先で自分と近県にお住まいの方に出会うと、あらこんな所でと話がはずむこともしばしば。海外になるとそうなることは稀な気がするのですが。
この日は朝からしとしと小雨続きでしたが、水滴に艶めく被写体もこれまた一興。松の左隣の奥のボケた緑のあたりをご覧いただくと、被写界深度に収まった雨粒をしっかり捉えているのがわかりやすいかと思います。
こちらも同じ敷地の高台に佇む洋館。左右後と木立に囲まれた所から撮影したので、薄い雨雲の乏しい光の雰囲気がより伝わっているでしょうか。
淡い光のトーンがよく再現されているのと同時に、座面のきめ細やかな織を丁寧に描き切っていますね。こういった暗所においても明るいレンズの恩恵に浴することができます。
対角線を意識すれば広角感のある伸びやかな画にすることもできます。
和の雰囲気たっぷりの落ち着くカフェの入り口。いい色合いをとどめながら乾ききった装飾は、素朴で叙情的でありながらセンスのよさが光ります。
本レンズの最短撮影距離は30cm。45mm相当の画角からすればテーブルフォトだってお安い御用です。近接時は被写界深度がとても浅いので、どこまで深度内に入れるのか絞りで調整しましょう。
絞り開放からシャープな像が得られますが、高コントラストなシーンではそのメリハリ感がいっそう際立つためか解像感ありありです。
よくキレる、よくボケる。軽くて、コンパクト。しかもお手頃な価格とは、文句のつけようがないですね。
ズームしないことで得られるもの
F値が明るいというだけで、それはそれで大きな魅力です。しかも単焦点ですからヌケがよい上に、絞り開放からしっかりとした解像感が得られるではありませんか。今回は小旅行に持ち出してみたわけですが、ズームできないが故にサッと構えたら即パチリ。いいなと感じたその感覚を瞬時に刻むことができました。サードパーティ製とはいえAFもストレスなくサクッと決まり、撮影テンポってやはり大切だなとつくづく。思い通りにフレームする必要が出てくれば、多少は自分の足で稼げばよいだけのこと。時に被写体が近い場面ではピント位置や距離を変えると写り、とりわけボケがどのように変化するのかを吟味する余裕すら出てくるから面白いものです。いくら撮影に慣れてきても操作工程が増えれば、多少なりともそこに気を取られているのですね。あえてその便利さを封じることで再確認でききることもあります。よく写るズームレンズ全盛の折、単焦点レンズを選ぶ、しかも標準域をなんでわざわざ?という発想はちょっと横に置いて。このヌケのよいシグマ単焦点レンズの写りです。ニコンZマウントユーザーの方々、お待たせしました。
( 2023.05.17 )
DXフォーマット(APS-C用)レンズですが、フルサイズボディでもクロップ撮影できます。今回の試写はZ 7で行いましたが、ボディバランスも良好で、DX、FX問わずおススメです。
前玉の保護はもちろん、帯電防止・撥水・防汚コーティングを備える頼もしさ。しかも反射率が0.2%の超低反射コーティングという、描写を邪魔しないのは嬉しいですね。