PHOTO YODOBASHI

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Nikon D850, AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR

作例撮影と工場見学記 かくしてこの「画」は作られる
第3回

Starring:

Nikon D850
&
AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR
AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR

初めて手にしたフルサイズカメラはニコンでした。たくさんの選択肢の中から悩んだ末に行き着いた答えがニコンだったのです。ニコンには販売終了となってからも今だに名機と呼ばれる機種やレンズが多く存在します。これは何を意味するのか。現在においてなお名機と呼ばれるものの一つで、当時は現行品でしたが私はそれを購入しました。目論見通りそれはとても良い相棒となり、それからというものメイン機材はニコンでここまできたのです。たくさんのユーザーがD850の登場を待ち望んでおられたことだろうと思います。私もその1人です。ですが正直なことを言ってしまうと、D850が発表されても飛びつくようなことはありませんでした。それは何故か。D810という機種がとても良い相棒であり、十二分に満足していたからです。今回は恐縮ながらニコンの最新で最高画素数をほこるD850と現行のレンズの組み合わせで現在のニコンの「画」を語らせていただくことになりました。いやはや光栄と申しますか、欲しくなってしまうのが目に見えておりますので悩ましいところでもあります。まあ「何かを欲する。」この状況は悩ましくもあり一番楽しい時間かもしれませんね。

まずはヨンニッパから。「ヨンニッパ…!!!」
ふらりと撮影にでかければ何かしらが撮れるというような部類のレンズではなく、明確なシーンありきでの撮影に使うレンズなのだろうと思います。特に各種スポーツなどプロフェッショナルの世界では定番と言える400mF2.8。いつものフィールドに持ち出したら、どんな画が撮れるのだろうと日頃と変わらない撮影を行ってきました。ボディー側のピント微調整機能を利用してピント精度を追い込み準備は万端です。

傾いていく太陽と、海面からの照り返しが神々しく美しい時間。うまく切り取ろうと思っても、なかなかこのようには写ってくれません。飛びすぎてしまったり、嫌な感じで収差が出てたりするものです。D850に新しく追加されたハイライト重点測光の恩恵もあるのでしょうか。飛ばし気味ですが締まってほしい部分はしっかりしまります。レンズもさすがに贅沢三昧な構成とあって、厄介なシーンでも物ともせずにといった余裕を感じます。波のうねり、巻き上げられた水飛沫、微妙なトーンやニュアンスを保った描き込みが素晴らしい。

( Photography & Text : TA )

Nikon D850, AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR

Nikon D850 & AF-S NIKKOR 400mm f/2.8G ED

時期も時期、平日というのも手伝ってなのか、波はいい感じにうねっているにも関わらずサーファーの姿がありません。そもそも人気がない。そんなときあらわれたのが鳥です。越冬のミユビシギでしょうか。横一列にならんだり、綺麗な縦列を作っては波打ち際を駆けていきます。足を止めたかと思うと採餌にと忙しない。ミユビシギはシベリアで繁殖し、日本には春と秋に中継地としてたちより一部はそのまま残って越冬するらしいです。九十九里浜は最大の渡来地だとか。こんなにもファインダー越しにじっくり鳥を観察するのも初めてですが、時折ペンギンにも思えてくるから不思議なものです。なるほどペンギンは鳥類なわけだと、話が脱線しましたが、こんなにも可愛い鳥だとは知りませんでした。足の速いミユビシギにD850×400/2.8もがっちり食らいついていきます。よくよく見るとミユビシギの小さな足で蹴り上げられた水滴が写っているのがわかります。浮き上がった被写体のディテールをあますことなく切り取る描写力は流石の一言です。手持ちで振り回せるほど手ぶれ補正は機能し、AFは俊敏に迷うことなく、捉えたら離さないといったポテンシャルはやはりプロフェッショナル。

Nikon D850, AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR

九十九里浜にできた風紋を捉えてみました。ぐっと寄って被写体を大きく捉えて切り取るのもなかなかの面白さです。九十九里浜の砂は直径0.2ミリと言われていますが、その砂の一粒一粒を繊細に描き分けています。

Nikon D850, AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR

400mm F2.8がもたらす圧倒的なボケから浮き上がる工事車両。作業の音が実際に聞こえてくるような迫力を感じる描写です。ピントのキレ、解像感、申し分なし!!やはり次元が違います。被写体を完全に分離するので、なんとも不思議な感覚にとらわれます。その世界に浸っていると自分が立っている場所を忘れてしまうほどです。

Nikon D850, AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR

400mmという焦点距離を稼ぐことは他のレンズでもできますが、サーファーにおいたピントピークの描写からF2.8という大口径がもたらすフラットで大きなボケ。これが400mm F2.8の圧縮効果です。高画素機といえば解像度ばかりに目を奪われがちですが、色数が増えればそれだけ階調再現の良さにつながります。それに加え贅沢三昧なこのレンズの組み合わせです。これでしか撮れない世界は確かにありました。

Nikon D850, AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR

Nikon D850 & AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR

お次は標準域をカバーしている5倍ズームの24-120です。マルチプレイヤー的な活躍をする標準ズームですが、本レンズはテレ端120mmまでカバーしているところが嬉しいのです。もう一昔前といってよい頃に登場したものですのでD850のような高画素機とマッチングさせるのには少し不安はありました。ところがどっこい実際に撮影を行ってみた感想は「これでいい!」でした。これがいいに近い「これでいい!」です。むしろ感触の良さに驚きました。

F4といえどテレ端ともなればボケ量はなかなかのもので、ピント面のシャープさをいっそう際立たせています。前ボケはじんわり滲むように美しく、後ろボケは使い方や撮り方によって、クラシカルな印象に振れたりモダンな印象に振れたりと変幻自在。これが面白いのです。

AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR

柔らかな光が差し込む車内。このようなシーンの微妙なニュアンスの演出は、中口径のズームレンズではなかなか難しいものと思っていましたがなんのその。へえと感心した一枚です。そのぬくもりまで伝わってくるかのような描写です。

AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR

川の照り返しとテレ端のボケ量を利用して少しクラシカルな印象に振れないかと思いシャッターを落としました。もう少しいっぱいいっぱいな描写になるかと思っていましたが、変な色にじみもなくピントの立ち上がりも自然でボケも美しい。いろんなものがごちゃごちゃと雑然としたシーンでしたが、テレ端のボケ量を利用してなんとか画を成立させることができました。WBに自然光オートが新しく追加されたのですが、この機能がまた嬉しいですね。ホワイトバランスも従来機種に比べるとかなり安定したなあと感じます。

AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR

ゆるやかに描かれたグラデーション、そしてこの厚みを感じる描写は色数が増えたことによりD850の階調特性がよりよくなったことを物語っています。レンズは一昔前といってよい頃に登場したものですが、D850により潜在的な能力の高さが引き出されているのがよくわかります。

現代のニコンはここまできている

先日仙台で行われたニコンファンミーティングキャラバンに参加してきました。D850開発者プレゼンテーションで特に印象に残っていのは、ユーザーの要望に耳を傾け、それらが事細かに開発要件として盛り込まれ実装されているという話です。現代のニコンがよく写るのは、この記事を取り組む前からわかりきっていたことでした。今回の取り組みを通じて感じたことは、私たちの「欲しい」を熱心に、そして常に盛り込もうという姿勢です。その結果、D850は、もはや完璧ともいえるカメラに仕上がっています。冒頭でも書きましたが、私は従来のニコン機種で十二分に満足していたのです。ですが、こうやって実際にさまざまなシーンで「使える!」を経験してしまうと、もう後戻りはできないと思います。

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( 2018.01.19 )