キヤノン・インタビュー

意外にもキヤノンさんにお話を伺うのは今回が初めてです。日本のどのカメラメーカーも国境を跨いでビジネスを行っているわけですが、筆者の個人的な印象に過ぎませんが、キヤノンさんはカメラ以外にも様々なビジネスを手がけられているが故に最もボーダレスな印象があります。ちょうどお話を伺ったのがヨーロッパ方面でご活躍中のお二方でしたので、新機種の話と共に、世界のマーケットそして世界から見た日本のマーケットについてもお話を伺ってみました。

( 聞き手:K )


EOS 7D Mark IIについて

CANON EOS 7D Mark II 商品情報

実はキヤノンさんにこういった形でお話をお伺いするのは始めてなのですが、本日は大変お忙しい中ありがとうございます。あまり時間がないため簡単にお話を伺いたいと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。今回のフォトキナで目玉となるのはEOS 7D Mark IIとPowerShot G7 Xだと思いますが、まずEOS 7D Mark IIについて簡単にお聞かせください。APS-Cのフラッグシップのモデルチェンジと捉えています。

はい、その通りですね。

EOS 5D Mark IIIと比べてもシャッターの音が個人的によいなあと感じたりとか、昨日少し触らせていただいたのです。かなり力を注いで作られているのではないかなという印象ですが。

はい。前のモデルのEOS 7Dを出してから5年、ようやくこのような形で出させていただきました。

デジタルカメラの世界の移り変わりは激しいのですが、5年というのは長いですね。

どうなのでしょうか。弊社のラインアップはプロ、ミッドレンジ、エントリーと大まかに3つの系列で構成されていますが、ライフサイクルはそれぞれ異なります。全てのモデルについて同じ事が言えるのですが、特にミッドレンジ以上はしっかりしたものを出していきたいなと思っています。そうなると期間もそれなりに必要となってくると思います。

今回、ざっと触らせていただいた感じですと、これまでの一般的なAPS-Cを搭載した一眼レフと比べて、ファインダーなどの見えが望外な出来映えだなあと感じたのです。ピントのピークも掴みやすいですし。なんだか一桁台のボディ(EOS 1DX等)を彷彿させる仕上がりです。シャッターを切って「写った!」と感じられるようなボディからのレスポンスは、フラッグシップに必要不可欠な要素だと感じますが、EOS 7D Mark Ⅱはそんな意味でも触っていて心地よいボディでした。EOS 7D Mark IIを店頭に並べるにあたっての「売り」についてお願いします。

ありがとうございます。EOS 7D Mark Ⅱは位置づけとしてはAPS-Cサイズのフラッグシップという位置づけです。弊社の場合、ハイアマチュア向けでも2つの路線があります。1つがEOS 5D Mark IIIに代表されるフルサイズのライン、もう1つがAPS-Cのラインであり、これは被写体が主に動体のお客様向けのラインになります。そのフラッグシップモデルがEOS 7D Mark IIとなります。従って実際に触って頂いてそのような感触を持って頂いてうれしく思います。

なるほど。やはりシャッターのキレあたりを見ていても、そのような雰囲気ですね。

写真の世界に入ってこられた皆さんの中で、一眼レフの良さ・楽しさを感じてこられると、いろいろな傾向がでてくると思うのです。つまり何を主被写体にするのかでカメラに求めるものも異なってきます。EOS 7D Mark Ⅱは基本性能も妥協をしていませんのであらゆる被写体に適していますが、特に飛行機や鳥、スポーツなどの動体の被写体を主にする方々がEOS 70DやEOS 7Dに進んで頂ければと思っています

EOS 70Dがリリースされたときにテストで少し使わせていただいたのですが、ともかくよく写るという印象です。当然EOS 7D Mark IIにも期待できると思うのですが、システム全体のサイズがコンパクトになるAPS-C機がこれだけ写ると、本当に魅力的に映ります。EF-Sシリーズのラインナップの存在はもとより、EFレンズもチョイスできて選択肢が豊富なわけです。フルサイズ機を使いつつ、EOS 7D Mark ⅡのようなAPS-C機に魅力を感じるユーザも多いのではないかと感じます。EOS 7D Mark Ⅱのテストが楽しみです。


PowerShot G7 Xについて

PowerShot Canon G7 X 商品情報

さて、PowerShot G7 Xについて少し聞かせてください。ブースでの反響はいかがですか?

おかげさまでご好評いただいております。

実は私、PowerShot G1 X Mark IIのユーザなのです。バイク(オートバイ)が趣味なもので、何処へでもカメラは持って行きたい。ただ、雨が降ったり、振動があったり色々ありますよね。しかもあまり画質に妥協したくないわけです。したがって、コンパクトカメラのサイズ感で大きなセンサーを搭載したカメラは私の求めているものにピッタリなわけです。PowerShot G1 X Mark IIはさらに大きなセンサーを搭載していますが、PowerShot G7 Xは1インチ。個人的な話で恐縮ですが、さらにコンパクトなPowerShot G7 Xに興味津々です。(ラインアップ的な)流れからするとPowerShot G1 X Mark IIを受けて・・・といった感じなのでしょうか?

ありがとうございます。PowerShot G1 X Mark IIの流れを受けて・・・というのは少し難しいところですね。

どちらかというと、センサーサイズは1インチで大きいのですが、ボディサイズ感からすればPowerShot Sシリーズの流れでしょうか。印象的には、PowerShot Sシリーズの流れがありPowerShot G1 X Mark IIのような流れもあり、それが合流したようなカメラというイメージですよね。

そうですね。PowerShot Sシリーズはレンズが小さいけれど明るいことが特長としてあって、今回のPowerShot G7 Xも似ているところがあるのです。レンズの一番先端が凹面になっていまして、明るくて小さいものが作りやすいのです。

面白いと思うのは、PowerShot G1 X Mark IIにも無かったのですが、PowerShot G7 Xは軍艦部に露出補正ダイヤルが置かれたことです。レンズ鏡筒にいろいろな機能を割り当てられるリングは確かキヤノンさんのPowerShot Sシリーズが最初だったように記憶しています。露出補正やステップズームなどの機能が割り当てられ、大変便利なわけで、当時弊社のページで絶賛した覚えがあります(笑)

ありがとうございます。PowerShot S90からですね。

コンパクトデジタルカメラは、露出補正を行うにしても2ステップ以上の操作が必要で、液晶画面に表示されるメニューからその操作を強いられることが多いため、本当にありがたいリングの登場でした。私は露出補正を割り当てていましたが、ステップズームというものが割り当てられるというのもよいなあと個人的に思いました。ズームレンズしか使ったことが無いという方がいま多いと思うのです。それは別に悪いことでは全く無いのですが、画角を意識するということで見えてくる世界もあると思うのです。

ありがとうございます。企画意図としておっしゃったことも勿論あると思うのですが、国内・海外を問わず販売する中で、海外からは何ミリかわかるようにして欲しいというご要望がものすごく高いのです。しかし、リアルタイムで現在が何ミリの焦点距離なのかを表示するのは色々な意味でなかなか難しいため、クリックして合わせられるようにしたのです。

なるほど。露出補正を基本的には割り当てるのですが、露出をある程度決めて撮影する際にはステップズームを割り当てている気がします。PowerShot G7 Xは軍艦部に露出補正ダイヤル置いたためなのかモードダイヤルと2段重ねになっていますが、このあたりのクリック感などもかなり追い込んでいるなと感じました。すごく吟味されたことが伺える操作感なのです。

ありがとうございます。そうですね、二段重ねはこの機種が初めてでは無いのですが、意外と難しいのです。この「クリック感」とは、中の芯に対してバネで作られているものです。2つのダイヤルを可動させるということは上下同時に動いてしまう(可能性)が非常に高いので、辛いですよね。それを抑えようとすると固くなってしまい、そうなると今度はまた動かせないなんて話になったり。これは機械設計のスタッフが設計図を引いただけでは、そのクリック感は出てこないのですね。

なるほど。その場で、言葉が適当かどうかわかりませんが、場当たり的に詰めていくということですね。

そうですね、本当にエンジニアリングというか。なんというか、実際の材料を当ててみて詰めていくというのはかなりあります。


ミラーレスについて、日本・海外の違い

ありがとうございました。では少し話題を変えまして、ミラーレスについて少しお話を伺いたいのですが。国内ではなく、こちらではミラーレスの捉え方はどのような感じなのでしょうか。

日本市場とこちらの市場では、ミラーレスの状況は違いますね。したがって、日本と同じような感覚で見ると少し違ってくるかもしれないですね。日本のミラーレスというのは、一眼レフでは大きい、しかしコンパクトデジタルでは少し小さくて本格的に撮るには・・・という中間的な位置にあるカメラのジャンルではないかと個人的に感じます。ヨーロッパでは「ブリッジタイプ」と呼ばれるカメラがそれに相当すると思うのです。PowerShot SX60 HSのようなカメラですね。このタイプのカメラがもの凄く販売を伸ばしているのです。日本で言う「ミラーレス」の売場に、この「ブリッジタイプ」が並んでいるとお考えください。こちらでは日本で言うミラーレスと同じぐらいの市場サイズといった印象です。もちろんEOS-Mのようなカメラも並んでいます。ただ、日本とは状況が違うわけですね。そして、同じヨーロッパでも国によって違います。

なるほど。ではEOS-Mのようなカメラは、こちらではそんなにニーズがないカメラになるのですか?

国によりますよね。ミラーレスが一眼レフのように比率が高い国もあれば、低い国もあります。一口にヨーロッパといっても意外と難しいのです。イギリスの場合、ドイツの場合、やっぱりフランスはこうで、イタリアはこう。といった感じで、ななかなか一言では語り尽くせないわけです。名刺にもしかすると書いてあるかもしれませんが、EMEA(エミア)って書いてませんか? ヨーロッパ・ミドルイースト・アフリカの略なのです。自分たちの担当範囲が、中東と、シベリアの先の日本に近いところまで、あとアフリカ全部、それとパキスタンのとなりまで、とまあ、世界の半分くらい担当しています。ともかく、国によって事情が変わってきますね。

なるほど。うかつに「こちらでは・・・」なんて質問されても「何処だ?」という話になってしまいますね(笑)今回お二方にお話を伺えていいな、と思うのは、日本人のユーザーからすると、当然日本にあるキヤノンさんのイメージしかないわけです。我々は、このような仕事をしていますので、もちろんワールドワイドにご商売されていることも当然存じています。しかし、それでも一般の日本のユーザの一人に近いわけですよね。例えば EOS-Mみたいなカメラが出てきて、すごくよい画を結ぶカメラだと思っているのですが、ミラーレスでメインのシーンを席巻している他のカメラからすると、EOS-Mというとちょっと違う雰囲気がありますよね。キヤノンさんがどこを向いてカメラを作られているか、ユーザーはわかりづらい面があると思うのです。したがって、この話なんかは結構面白いと思うのです。たとえば、足繁くヨーロッパに通うようなことが無ければ、日本から見るとヨーロッパはヨーロッパと一括りに見えちゃいますよね。実際は全然違うと思うのですが(笑)

ものすごい違いますよね(笑)「ドイツ」という国の名前の呼び方一つとっても大きく違います。日本の場合はどの言語でも「ジャパン」に近い呼び方です。つまり発音は殆ど変わらない。ドイツなんて、ロシア語のドイツとイタリア語のドイツはもう全然違うのですね。ジャーマン、ネーメツ、テデスコと、全然違うわけです。カメラの好みも全然違いますね。

なるほど。新製品を出すときというのは、グループでどのような意思統一でカメラを形作っていくのでしょうか?

それはもう・・・(笑)

侃侃諤諤(かんかんがくがく)なのですか?(笑)

ご想像にお任せいたします(笑)やはりそこは苦労するところですよね。

国々ごとのシェアによっても意見の重さというのも変わってくるのかなあと想像しますが、意思統一がなかなか難しいだろうなと想像してしまいます。

少なくとも西洋地域の18カ国の中ではひとつの統一したマーケティングメッセージとかキャンペーンメッセージとか出さなければいけないけれど、難しいですね。本当にこの1本で普遍的なものができるのかというのが、やっぱり一番悩ましいところです。一番の売れ線カメラというのが(各国)違うので、それこそ先ほど申し上げたブリッジタイプが強い国はたくさんあるのですね。もちろんミラーレスが強いところもありますし、一眼が強いところもあるわけです。さらにコンパクトが強い国もある。そうするとPRするにしても、たとえばコンパクトをやってくれなきゃ困るというところもあるし、ブリッジじゃなきゃおかしいでしょう根本的にと・・・ミラーレスはどうなってるの、っていう国もありますし(笑)

商品の企画自体は日本本体がベースになってやっているわけですよね?

責任元は製造者がCanon Inc.という日本にある本社が開発責任ということになりますが、商品企画会議を全世界でやりながら進めています。

「日本で考えて日本から世界にも売ってます」というノリならともかく、想像しただけで脂汗が浮かぶのですが(笑)キヤノンさんのカメラというのは個人的な印象ですが、割と手堅くて、一言で言えば「間違いがない」という印象です。今日のお話しを伺って、それだけ各方面からのプレッシャーがかかって商品が出来上がるのであれば、よい意味で"丸い製品"ができるんじゃないかな、とそんな風に感じました。つまり「間違いがない」ということで、そのままですが。たとえばの話ですが、コンパクトデジタルで、レンズのエレメントから「これ以上寄せると画が荒れる」というポイントまで寄らせるカメラを作ったりしない、そんなイメージです。

いまお話になった言葉を借りると、画質が"丸くなる"ことは許されないのですね。おっしゃるとおり、作ることはできても画質が落ちるならく作ることはありません。

<ここで時間ですという声が>

なるほど・・・今日はお忙しいところどうもありがとうございました。







ホーム インタビュー キヤノン カメラ

( 2014.11.26 )




Loading..

Loading..

特価:Loading..(税込)

Loading..Loading..)

定価:Loading.. | 販売開始日:Loading..

Loading..

Loading..

Loading..

特価:Loading..(税込)

Loading..Loading..)

定価:Loading.. | 販売開始日:Loading..

Loading..

Loading..

Loading..

特価:Loading..(税込)

Loading..Loading..)

定価:Loading.. | 販売開始日:Loading..

Loading..

Loading..

Loading..

特価:Loading..(税込)

Loading..Loading..)

定価:Loading.. | 販売開始日:Loading..

Loading..