オリンパス・インタビュー

前回のフォトキナ2012で、まだ就任されて間もない小川社長にお話を伺いました。本当にフランクな方で、私たちが「だ、大丈夫かな?」と感じるほどサービス精神たっぷりにお話いただけるのです。今回は、この2年を振り返って頂きつつ、今後の展望についてお話を伺いました。

( 聞き手:K )

STYLUS 1のヒットを振り返って

オリンパス STYLUS1S 商品情報

前回のフォトキナに引き続いて、今回も快くお引き受け頂きまして、本当にありがとうございます。本日はどうぞ宜しくお願いいたします。はじめに、カメラ事業の概況について教えてください。

こちらこそ宜しくお願いいたします。未だに私の名前で検索すると、フォトヨドバシさんの記事が一番上にあがってくるのです(笑)概況についてですが、業界全体的に厳しいと思いますし弊社も同様な部分がありますが、早くからコンパクトから一眼のほうにより力を注いできた面もあって、その点では目論見通りに進んでいます。今年度から、一眼がコンパクトの売り上げを抜くという、長い歴史の中でなかなかなかったことで、今年度はそういった状況が続くかなと捉えています。また一方で、STYLUS TG-3 Toughと私も使っていますSTYLUS 1が登場してから、おかげさまでずっとご好評いただいています。弊社の中でいろいろな指標がありますが、その中でもコンパクトの平均単価では、日本市場において最下位の方からこの1年で最上位まで上り詰めたという感じはあります。

素晴らしいですね! ある時を境にコンパクトのモデルのビジョンを明確に打ち出されて、それが実際に結果へと結びついたということですね。

ありがとうございます。

STYLUS 1はいわゆる「コンパクト」のカメラで、センサー自体はそんなに大きくなかったですよね。

はい。1/1.7型です。

そうですよね。テストさせて頂いた時に「えっ、こんなによい画が出るの?」と感じたのを覚えています。

やはりOM-D E-M1と同じエンジンを使っているのが大きいですね。それからレンズはF2.8通しになっているという点が大きな特長です。

ルックスも、かなりE-M1ライクな印象です。

正直なところ企画したスタッフには、少々「参った!」という感じです。デザインも絶対にPENタイプでくると想像していたのです。それにファインダーを入れてというイメージがあったのですが、まさかこの形に。最初に見たときは「ちょっと大丈夫か?」と。少しキワモノに見えてしまうのではないかと心配したのです。しかし、現実には自分で使っているくらいですから(苦笑)

シリーズの中でもSTYLUS 1はフラッグシップですから、やはりOM的なデザインなのでしょうか。STYLUSシリーズの中の「STYLUS 1」ということですが、少しブランドイメージ全体の構成について伺えないでしょうか。

STYLUSとは、コンパクト全体のブランドネームですから、Toughシリーズに至るまで全部STYLUSブランドとなります。STYLUS 1は、企画の方から「今回STYLUS 1という名前にしたい」とOM-D的なデザインと共に提案があり、耳にした時点で「これはいいな」と感じたのです。STYLUS 1は、革新的な28-300mm相当・F2.8通しのレンズを搭載し、STYLUSシリーズの頂点に相応しいカメラになったのです。言わば、OM-Dのような存在ですね。STYLUSブランドを象徴するカメラとして、そこに「辿り着いた」と感じたのです。また、コンパクトから一眼の方により力を注いで行くタイミングで、コンパクトの世界観をどのように育んでいくのかという時に出来上がった、エポックメーキングなカメラだったのです。

なるほど。大判センサーを搭載した高性能・高級コンパクトという枠組みがありますが、STYLUS 1はいわゆるコンパクトデジタル的なセンサーサイズのカメラなわけです。画期的なF2.8通しの高倍率ズームを搭載しているというポイントはありますが、わかりやすい目に見えるインパクトという意味では割とチャレンジングな製品だと思うのです。しかし、しっかりSTYLUS 1が持っているポテンシャルを市場から評価されたということですね。レンズの設計はなかなか大変だったのではないでしょうか?

このレンズそのものを開発することについては、あまり躊躇はなかったのですね。実は、薄型ですけど16倍ズームを検討したのですが、最初の設計段階で「これ本当に薄いのか?」となりまして。少し厚かったのですね。設計の方が「我々がレンズにこだわる設計論理からするとそれが限界です」と。実はそこで止めさせてしまったのです。結構可哀想でして(苦笑)その後、彼らと2時間ほど話しをしまして、その後飲みに行ったのです。「開発させておいて、いざとなったら止めて」なんて、恨み辛みのひとつぐらいは言われるかなと思っていたのです。しかし、彼らは自分達で制限条項を付け過ぎ、それが自分達の失敗だったと言ってました。それで一念発起して頑張りますと。やるからには、やはり他にないレンズを作ろうという。そんな過程でしたので、今度は止める訳にいかないのです(笑)そして蓋をあけてみたら、とんでもない生産技術の固まりのようなレンズで、本当に作れるのかという感じだったのです。そして何とか出来上がって、これがかなりよかったのですね。成功の要因は、彼らが理屈だけではなく工場まで知り抜き、製造まで入り込んでポイントを押さえてギリギリの生産誤差に追い込んで作り上げることをトライし、成し遂げたということです。いま思えば最初の段階で止めようと考えたプロセスが、成功に繋がった1つの要因かなと感じます。あのまま当初の通り開発を進めていたら、今回のようなレンズ開発へスタッフのモチベーションも向かっていかなかったと思います。このレンズは、そのモチベーションが本当によい形で結実していると思うのです。


そもそもの理念を追求しての規格統合、OMとPENの二つのブランドについて

少し話しをさかのぼって、2年前にお目に掛かった際にはまだフォーサーズとマイクロフォーサイズの統合はまだ行っておられなかったと思います。

その話しはですね「来るかな」と今回思っていたのですけど(笑)

いえいえ、特に攻撃的要素を孕んでお話を伺おうという話では全然ないのですが(笑)

正直なところ、フォーサーズをご愛用いただいている皆さまの中で「なんだよ」と思われた方もいらっしゃるでしょうし、離れられた方もいらっしゃるということは承知しております。逆に、OM-D E-M1から弊社のファンになっていただいたという方もたくさんいらっしゃいます。

E-M1は、私の知るカメラマンの方々が結構購入しまして、かなり評判がよいのです。やはりまとまりがよいのでしょうね。システムとしてかなりコンパクトですから、E-M1で撮りきれるのであれば手が伸びるのもわかる気がします。

ありがとうございます。実は先日、私が下手ながらプレゼンテーションをヨーロッパで行ってきたのですが、カメラの世界で新しい世界を切り開く、そんなプレゼンテーションです。ここで私が考える「新しい世界」とは、圧倒的にシステム全体のコンパクト化を実現するレンズが作る世界なのですね。たとえば、F2.8通しの80mmから300mm相当のレンズです。加えて、開発発表しました、7-14mm F2.8は全域でF2.8の大口径超ワイドズーム、600mm相当の300mm F4などですね。システム全体でのコンパクト化は、撮影者のみなさんの負担を確実に減らすことに繋がりますが、クリエイティビティも押し上げる要因の1つに成り得ると思うのです。

確かに、他のシステムで三脚に据えて撮るところを、これなら自由なところで手持ちで撮れちゃいますね。

そう、そうなんですよ。そこがひとつ大きいだろうなと考えています。オリンパスと言えばネイチャーという風に感じる方は多いと思うのですが、たとえば人物撮影に使われているような方も凄く多いのです。カメラがコンパクトで被写体の方に威圧感を与えにくいといった理由をよく伺います。いまブースでデモストレーションを行っていますが、E-M1のファームウェアを2.0にアップいたしまして、スタジオ撮影の際に必要なカメラコントロール機能を実装・実現しました。また先ほどの話の通り、システムトータルで見た時にスポーツ撮影や風景撮影といったところでも、このシステムならではのメリットと活用方法があると考えています。少し難しい表現かもしれませんが、撮り手の方がカメラを変えたことで、新しい世界が開けるということではなく、カメラが変わったことで、写真が代わり、新しい世界を作り出す、誘う、という形でなければならないと思っています。前回フォトヨドバシさんのインタビューの際に、フォーサーズでもし新しいボディを出すなら、E-M1並みに(当時はE-M5)小さくしたいとお話したと思います。

はい。確かに2年前におっしゃっていましたよね。

やはり弊社の考えとしては、できる限り小さくしたい。そうでなければならないと考えています。そして、結果的に先ほどの話しにつながる訳です。さらにカメラによる写真のベネフィットを高め、弊社の根幹をなす考えを実現していく上で、マイクロフォーサーズの可能性を感じたのです。今年入って、あの新たなレンズを3本リリースしますとアナウンスいたしましたら、「いつ出すの?」と多くの反響を頂いています。フォーサーズはどうするんだという話はもちろんありますし、申し訳なく思っています。そして、弊社の根幹の考えにシャープに集中することで、皆さまのご期待に応えたいと考えています。

オリンパスさんはみんながセンサーを大きくしようとしているときから、最初からフォーサーズでやってこられました。本当に「写る」カメラとレンズなら、システムはコンパクトであることに限ると、私は個人的に感じます。間違いなく撮影の負担が減りますから。ミラーレスの出荷数を見る限り、システムのコンパクト化というのは1つの大きな流れと感じます。マイクロフォーサイズを出されてから、元の理念のところにさらに寄っていったという印象を強く受けます。フォーサーズ用のレンズは写りは本当に素晴らしく、しかし少し過剰なクオリティじゃないかと思っていました(笑)

そうですね。より特徴を表現しやすくなりました。フォーサーズのレンズの件は、2年前も同じ事をおっしゃっていましたね(笑)

マイクロフォーサーズのようなサイズ感のカメラにもっとがんばって欲しいと思っています。小川社長が目論んでおられる通り、まず1つはレンズがいかに増えるかということなんですよね。あと防塵防滴だとか、この辺も大きな話ですよね。撮るための選択肢(レンズ)がたくさんあって、きちんと持ち出して撮れる(堅牢性)ことが大事だと思います。

同じ防塵防滴でも、かなりシールしていると思います。本当にその部分はひとつの特長だろうと思っています。かなり過激なテスト方法で漏れないようにしているのです。

ちょっとテストを見てみたいですね。(笑)レンズに関しては・・・ミラーレスにマウントアダプタを付けて、いろいろ遊ぶのもありますが、当たり前の話ですが、セットで開発されている純正レンズのような使い勝手は望めないわけです。純正で写りが良くて選択に困らない本数あるのが一番です。

その通りだと思います。やはりシステムとして見た時のパフォーマンスが大事だと思っています。ズームと単焦点は揃ってきていると思いますので、あとこの4本を出し終わったら、もう少しユニークなものを探していきたいなと思っています。

しかし、おもしろいな、と思うのは、まったく同じプラットフォームで、PENとOMと、これだけブランドがきちっとそれぞれ確立しているというは、見ていておもしろいなぁと。このあたり少し伺いたいのですが。

確立したいんですけどね。

ブースをみると、明らかにどこのブースよりもオリンパスさんのブースって女子力高いですよね(笑)

今回、特にそうかもしれませんね(笑)

男女比で言うと、どのような感じなのでしょうか?

うちはPENに限って言うと、50%近いです。

それは凄いですね!

PENに限らず、意外と女性がOM-Dを手にされることも多いのです。本格的な方などは、PENからOM-Dに乗り換える人も。別にOM-Dを男性にと明確に言っているわけではないですけど(笑) 実はヨーロッパでは、ミラーレスというカメラの立ち上がりがご存じの通り遅くて、OM-Dをリリースしたあたりからヨーロッパの雰囲気も随分変わってきました。そうなるとOMが結構しっかりとしてきたから、PENは思い切って振っていいよねって、やっとそういう割り切りができてきたのです。PENのあの雰囲気と、Wi-Fi、タッチ、アートフィルターの、あの組み合わせが、ことのほか女性の皆さんに喜んでいただいてまして。それであのブースの感じですね。もちろん男性の皆さんにもたくさんご利用頂いているのですが。


今後目指していくもの

今回、お話を伺って、2年前にお話されていたことと何ら変わらないですよね。一貫しているな、という気がします。随分システム的にも充実してきて、次のステップというところでしょうか。

おっしゃる通りです。基本線がしっかりしてくると、いかに手になじんで次の操作に持っていけるかなど、いろいろとありますが、総合的に高めていきたいと思っています。

たとえば、デジタルだから、AFのカメラだから、マニュアルフォーカスで追えないファインダーでいい、なんてことは私の中では無くて、例えオートフォーカスに最適化されたファインダーであったとしてもピントの山が見えるということは代え難いと申しますか、すごく大事なことだと思うのです。

そうですね。EVFのたとえばピーキングなどでカバーはしていますが、それが本当に心地よい見え方なのかと常に自問自答していたりします。たとえばオリンパスの昔の一眼レフのような、あのピントの合い方の面白さみたいなものを、ミラーレスのEVFで表現できればと思いますよね。

AFのカメラで、AFでピントが合う/合わないというところから始まり、最終的には自分の意思でどこにピントを置くのか、フォーカスの山をどこに置くのかということを考えるようになります。前後どちらにピークを置くかによって、ボケ量と質をどちら側でコントロールするのかというように、どんどん進んでいくわけですよね。そうなったときにキチンとその行為に応えてくれるファインダーであって欲しいと思いますし、ソフト的な制御も含めて統合的にそうあって欲しいですよね。

そのあたりは・・・やはりテクノロジーもそれを目指していきたいと思っています。いまお話しになっていたようなことを実現していくためにも、多方面かつ多層からの皆さんの声を高密度にスタッフと共有しています。そしてその活動もかなり地に着いてきた感はあります。具体的な例としては、ToughシリーズのSTYLUS TG-2 Toughでマクロ機能をアップしたわけですが、STYLUS TG-3 Toughでさらにそれを磨いて顕微鏡モードを搭載したり、いろいろと盛り込んだわけですね。そのあたりはプロフェッショナルの方のご意見を取り入れたわけですが、一般のお客さまのご意見も同様に取り入れさせていただいています。デジタルならではのファンクションの部分の変化や進化のさせ方、操作性なども含めて、同じ考え方で取り組んでいます。

わかりました。今回もいろいろとありがとうございました。なんかシナリオのないインタビューでいつも申し訳ございません。

いえ、どんな風に書かれてしまうのか・・・と考えてしまいますね。冗談ですけど(笑)ありがとうございました。




ホーム インタビュー オリンパス カメラ レンズ

( 2014.11.26 )




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