NIKON 100TH ANNIVERSARY FAN MEETING CARAVAN -2017 AUTUMN- in Nagoya
ニコン ファンミーティング キャラバン 2017 in 名古屋 開催レポート

みなさんご存知の通り、ニコンは今年、創立100周年を迎えました。それを記念した「ファンミーティング キャラバン 2017」が今まさに全国を行脚しています。すでに札幌、福岡、名古屋を終え、残るは広島(11/19)と仙台(11/23)のみ。今回、11/5の名古屋を取材させていただくことができましたが、あの興奮をどう書いたら伝わるだろうかと、ちょっと不安ではあります。そのぐらい、笑顔と熱気に包まれた、素晴らしいイベントでした。特に中国地方、東北地方にお住まいの方は、これをきっかけに「ちょっと行ってみようかな」という気になっていただけたら、これほど嬉しいことはありません。


「1分前です!」

そのかけ声とともにBGMの音量が上がったような気がしたが、それは気のせいだった。その場にいる全員が一斉に沈黙したので、そう錯覚したのだ。「幕が上がる直前」の、あのピンと張り詰めた空気。緊張感。それぞれが配置について姿勢を正す。深呼吸。「10秒前です!とびっきりの笑顔でお客様をお迎えください!」と最後の事務連絡がされ、ドアが内側からゆっくり開けられた。

このキャラバンに先駆け、「ファンミーティング 2017」が東京と大阪で開催されたのは今年の8月から9月にかけて。聞けば、当初はそれで終える予定だったとのこと。しかし、そこへやってきたお客様の顔を見ているうちに、ニコンは考えを変えたのだそう。「こんなふうにニコンを愛してくださるお客様が、日本中にまだまだ大勢いらっしゃる。よし、これを全国でやろう!」と急遽開催を決めたのが、この「ファンミーティング キャラバン 2017」。

あっという間に会場が来場者でいっぱいになる。我々が会場入りしたのは開場直前の9時40分。当然、そこには開場を待つ長蛇の列があったが、なんと7時の時点ですでに列ができていたらしい。会場内にはステージを囲むようにいくつものブースが設置されていて、いろいろな体験や相談、あるいは展示が見られるようになっている。やはり開場直後に多くの人が足を運ぶのはグッズ販売と、先着50名限定の「愛用ボディー・レンズのクリーニングサービス」。特にグッズ販売ブースは立錐の余地もないほど。

しかしそこに並んでいる100周年を記念した特別なグッズの数々を見れば、それも納得。開場から10分ほどで、早くも売り切れが出始める。日本光学工業時代のマーク(いわゆる「光学マーク」)をあしらったグッズもたくさんあったが、これらは商標の使用に関するいくつものハードルをクリアしてやっと実現したとのこと。かつて自分たちのものだったとは言え、現在とは社名からして違うわけで、そう簡単には使えないのだそうだ。作る側の熱意が、こんなところにも垣間見える。

いよいよステージでのセミナー/イベントが始まる。名古屋だけは2日間の開催で、我々が取材したのはその2日目だったが、「昨日もいらっしゃった人?」というステージからの問いかけに、驚くほど多くの人が手を挙げていた。

まず最初は、(株)ニコン 北岡直樹氏による、D850開発者プレゼンテーション。D850開発の原点となったエピソードや完成までの数々のチャレンジが飄々と、ユーモラスに語られ、思わず引き込まれる。性能にはすべて理由がある、という話にカメラ開発の奥深さを知る。そこから派生した「スペック表を見る時のコツ」は目からウロコ。

次はカメラ雑誌の編集長3名によるライブディスカッション。この日の出席者は『日本カメラ』編集長 佐々木秀人氏、『CAPA』編集長 菅原隆治氏、『カメラマン』総編集長 坂本直樹氏。進行は写真家の今浦友喜氏。「カメラ雑誌の編集長」という立場は同じなれど、やはりそこには各々ユニークな視点があり、非常に興味深い話が展開された。

続いてD850写真家セミナー「D850で撮る風景写真」。プレゼンターは写真家 星野佑佳氏。D850使いこなしこのコツ、それを最大限に生かした写真の撮り方を、プロだからこその分かりやすい言葉で解説。会場内にはセミナーで使われた作品の展示もあり、セミナーの後で改めて見ると、なるほどと思うことがたくさんある。

そしていよいよ(株)ニコン 後藤フェローの登場。お題は「ニコンのスペースカメラと宇宙事業 〜黎明期から最新のニコン機材まで〜」。宇宙で活躍してきた特殊カメラを、ニコンのみならず、他メーカーも含めて振り返る。実際に携わってきた後藤フェローだからこそ語れるエピソードの数々。ちなみに会場内にはニコンのスペースカメラの実物が展示されているコーナーもあった。広島、仙台でも展示されるとのことなので、行かれる方は併せてご覧いただきたい。

プレゼンテーションの最後に流れたこのタイムラプス動画が本当に素晴らしい。ぜひ音量も上げてご覧いただきたい。センサーのゴミが生々しい。

続いてD850写真家セミナー「D850で撮る野鳥写真・飛行機写真」。プレゼンターは写真家 中野耕志氏。冒頭に出てくる鳥の写真の「足輪」で、D850購入を決心した人が何人もいたに違いない。それにしてもプロの写真家のみなさんは本当に説明が上手い。難しいことをアマチュアにも分かるように易しく説明できる。ゆえにプロなのだろう。

次はレンズの開発を担当されている(株)ニコン 藤原誠氏、原田壮基氏、上原健氏の3者による「ニッコールレンズ対談」。進行役の写真家 阿部秀之氏の軽妙なトークのもと、各開発者が質問に答える形で対談が進む。「レンズの開発をしている人」というと、どんなイメージがあるだろうか?堅物。無口。冗談が通じない。そんなところかもしれない。しかし、少なくともこの日登壇された3人に関しては、それとは正反対。開発の苦労話や開発者としての信念を、ユーモアたっぷりにお話しされていた。それにしても言葉の端々に感じられるのは「とにかくレンズが大好き」ということ。そして「美しいレンズの構成図は、それだけでお酒が飲める」とか、やっぱり少しヘンではある。

そして最後は楽しく、誰でも参加できる「ニコンクイズグランプリ」で〆。不正解だったら脱落していく形式。「まぁこれは簡単だよね」から「そんなこと知ってる人いるの?」(もちろんちゃんといる)まで、幅広いジャンルと難易度の問題が用意され、生き残りがどんどん減っていく。最後は2人に絞られたが、そこからがすごかった。予備の問題まで出し始めてもまだ決着がつかないデッドヒート。ステージ上の進行も、すでに想定外の事態になっていることがありあり。やっと決着がついた時には、回答者よりも運営側の方がホッとしたのではないだろうか。

ステージで行われるすべてのセミナー/イベントが終わり、最後は来場者とスタッフで記念撮影。ヘルメットをかぶった写真家 河野英喜氏が高い三脚の上に乗り、来場者を絶妙なトークで笑わせながらシャッターを切る。最後まで和気あいあいとした雰囲気の中で大団円。

と、ここまでステージ上の進行を中心に紹介してきたが、会場で行われていたその他のサービスや展示を列挙すると、

プロフィールフォトコーナー

製品説明・相談カウンター

モデル撮影体験コーナー
モデル撮影ワークショップ

超望遠レンズ体験コーナー

特別展示 ーニコンのスペースカメラー

特別展示 ー稀少カメラー

歴代製品&カタログコーナー

愛用ボディ・レンズクリーニング(先着50名)

があった(※は名古屋会場のみ)。詳しくはファンミーティング キャラバン 2017のサイトを参照していただきたい。また、ステージ上のセミナー/イベントは、一つ終わるごとにプレゼントの抽選会があり、最後まで楽しめる。さらに「ニッコールレンズ対談」と「カメラ雑誌編集長ライブディスカッション」は会場ごとに登壇する人が少しずつ変わるので、もし広島と仙台の両方に行くという人がいても大丈夫!(と、冗談で書いたつもりだが、あながち無いとも言い切れないあたりがコワイ)


「ニコン愛」という言い方をよくします。もちろん、それぞれに好きなカメラメーカーがあって、それらはすべて「◯◯愛」と表現できるのですが、なんというか、もっとも定着していて、普通に聞こえてしまうのが「ニコン愛」だと個人的には思いますし、他メーカーのファンでもこのあたりのニュアンスは何となく分かっていただけるのでは?と思います。

会場は「ニコン愛」で溢れ返っていました。もう、そうとしか表現のしようがありません。朝7時から並ぶとか、2日連続で来るとか、もはや「愛」以外の何物でも無いじゃないですか。みなさん本当に楽しそう。そして、その「愛」に応えようと、コストだとか、通常業務への影響だとか、そんなものをすべて吹っ飛ばして(イベントの規模を見れば、相当吹っ飛ばしているハズ)、ニコンがこのキャラバンを敢行したことは、本当に素晴らしいと思います。取材に伺う前、ニコンイメージングジャパンの広報の方とお話しする機会がありました。その方がこのキャラバンについて「AKBじゃないですけど、”会いに行けるカメラメーカー”でありたいんですよね」と、ぼそっとおっしゃったのを思い出します。

さて。まだ広島と仙台があります。遠くの人も近くの人も、もう行った人もまだ行ってない人も、みんなで会いに行きましょうよ、彼らに。

( 2017.11.09 )