PHOTO YODOBASHI
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vol.14 恵山
Text & Photo by 中西 敏貴
美瑛・富良野界隈の山はすでに雪景色へと変わり、グリーンシーズンの登山も終わりを迎えましたが、北海道はご存知のように広大です。南へ向かうことでまだまだ雪のない山を歩くことができます。今回の目的地は函館にある恵山（えさん）。こちらも現役の活火山であり、大地の息吹を間近に感じられる場所。先日手に入れたキャンピングカーで車中泊をしつつ、海辺で写真を撮り、翌朝から山を歩くという旅に出かけてきました。
函館は、筆者の住む美瑛からは6時間以上はかかります。同じ北海道内ですが、距離は相当なもので、やっとの思いで函館の海に到着しました。海からの日の出を見るなんて、山の近くに住んでいては経験できないことなのでとても新鮮です。背後の山からはなにやら獣の気配がしますが、車の側で撮影しているのでいざという時も安心。
冬が近づいているからでしょうか。だるま太陽が水平線から出てきました。ゆっくりと焦らずに撮影を進めます。撮影ポイントの近くで車中泊をしていたので、気持ちにもゆとりが生まれていたようです。ひとしきり撮影した後は、車内で朝日を見ながらコーヒータイム。普段から自宅周辺でもやらないことをしたくなるのが、旅の面白いところです。
今回の旅は車中泊ということもあって、登山は翌日の朝からの予定を立てました。午後の光で下見をして、翌朝アタックという計画です。時間にゆとりがあるので、地元の美味しいものをしっかりと堪能。海から離れて暮らしている身にはことさら沁みました。
次の日の朝は美しい朝焼けからスタート。幸先のいい朝です。登山口に移動し、いつもの装備を準備。まだ誰もいない登山道を歩き出します。恵山は標高の低い山なので、コースタイムは往復で3時間ほど。撮影しつつの登山でも4時間見ておけば余裕でしょうか。
スタートしてしばらくは舗装道路が続きますが、途中からはしっかり登山道。岩の多い道になるのでスニーカーだと危険です。低山とはいえ、ちゃんとした登山の準備は心のゆとりにつながります。
現役の活火山であることは既に書きましたが、噴気活動が間近で見られるのもここ恵山の特徴でしょう。登山道の途中からこうして爆裂火口を見下ろせる場所があり、荒々しい斜面と激しく立ち上がる噴気をじっくりと見ることができます。
登山開始から1時間30分ほどで山頂に到着しました。大雪山に比べるとあっという間に感じますが、そこから見える風景のスケール感は負けず劣らずです。なにより海を見下ろすことができるのが素晴らしい。誰もいない山頂で、思わずため息が出てしまうほどです。
恵山は古くから信仰の山であったようで、至る所に祈りの場所が設けられていました。海を挟んだ東北側には、対をなすように恐山がありますが、どちらも同じような意味を持っているのが不思議でもあり面白さでもあります。人が山に祈るとは、どういう意味があるのか。離れた土地で、同じように信仰心が生まれる不思議を感じながら、下山したのでした。
車中泊、登山、撮影という三つを組み合わせるとロケハンの旅がさらに自由に楽しくなることがわかりました。移動して、寝て、登って、撮る。なんて優雅な旅でしょう。普段の撮影スタイルでは効率を優先しているところはありますが、場所を変えて撮影ポイントを探すという、写真の原点をあらためて思い出させてもらいました。来年のサマーシーズンは、車中泊をしながら北海道各地を旅してみようかと夢みています。
( 2023.10.25 )
歩きやすさと快適性が両立したトレッキングシューズ。安全で楽しい登山にはぜひ。
その名のとおり、瞬時にしてお湯が沸かせるので山でもすぐに美味しいコーヒーがいただけます。
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