PHOTO YODOBASHI

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LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden

Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspcherical VM

約1年前の2019年8月に発売となりました「Voigtlander Nokton 75mm F1.5 Aspherical VM」をご紹介します。こちらは“Vintage Line”と呼ばれる、クラシカルな外観に最新設計の光学系を組み合わせたシリーズの1本。フォクトレンダーの75mmレンズは、スクリューマウント時代のColor-Heliar 75mm F2.5(1999年)に始まり、VMマウントとなったHeliar Classic 75mm F1.8(2010年)に次いで三代目。ひとつ前のF1.8と比べ開放F値が約半段明るいF1.5となりましたが、フォクトレンダーらしい総金属製による高い質感と精度を維持しつつ、全長で約5mm短く(68.3mm)、重量も70gの軽量化(350g)を図るなど、小型軽量なレンジファインダーカメラとのバランスにも配慮されたものとなっています。

ゾナー型をベースとした6群7枚のシンプルで美しいレンズ構成を持ち、3枚に異常部分分散ガラスを、最後面には両面非球面レンズを採用するなど、高画素化が著しいデジタルカメラにも対応する設計となっています。ポートレイトで多用される中望遠レンズということもあり、ボケ味に影響する絞りは12枚羽根を採用。最短撮影距離も距離計連動範囲一杯な0.7mへと短縮されたのも嬉しい点ですね。フォクトレンダーでは大口径レンズに与えられる“ノクトン”名を初めて与えられた75mm、その写りをたっぷりご堪能ください。

( Photography : A.Inden / Text : Naz )

LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden

柔らかく、しっとりとしたトーンを愛でる

M型ライカのボディに NOKTON 75mmをつけると、50mmのフレームと一緒に、50mmをフレーム少しトリミングしたような大きさで75mmのフレームが現れます。75mmの画角でフレーミングするのは、普段見ている光景をもう少し注視するような感覚でしょうか。これまでレンジファインダーカメラで大口径中望遠レンズを使うのは「ピントが薄いから、普段使いにはちょっと…」と思っているとこがありました。しかし実際に撮影してみると、EVFが使えるボディならMFアシストもあるため「日常のスナップもありだな」と思い直すほどに。最短撮影距離は0.7mと“寄れる”という感じではありませんが、いざ使ってみるとクローズアップの撮影もある程度可能だということが分かりました。

LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden

雨上がり、田んぼで一休みするトンボを撮影。少しづつ寄りながら撮ったのですが、この辺りが限界でした。トンボのシャープさも驚きですが、キラキラと輝く水滴も綺麗ですね。

LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden

最短撮影距離で水滴をアップに。レンジファインダーでこんなカットが撮れるなんて驚きですね。開放での描写はピントピークにハロを纏って、軽くソフトフォーカスがかかっているような印象を受けます。水滴を際立たせるために少しアンダーな露出にしましたが、柔らかなトーンで隅々まで描いてくれました。湿気を感じさせる空気感がうまく表現されたと思います。

LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden

カフェの前に置かれたディスプレイも、いつもより狭い範囲を切り取ることで不思議とまとまってくれます。ビニールがかけられた蝋細工の飲み物が、自然な色味と豊かな階調表現により、まるで本物のように感じられます。

LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden

画面右上の山の端に沈む太陽を入れて撮影しました。完全な逆光ですが、被写体は濁ることなくクリアに描写されています。この逆光の中で魅せてくれる空気の透明感は、本レンズの魅力のひとつだと感じます。


LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden

車のドアノブにピントを合わせて撮影。車のツヤッとした塗装も見事ですが、ボディの側面を見ると、手で触ってもわからないような塗装の微妙なアンジュレーションが感じられます。開放でここまで写ってしまうのですね。自動車のメーカーからすると写り過ぎるのも困ったものでしょうか。

LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden

鈍く光る金属の質感にゾクっときます。夕日が当たっているところが白く飛ばないようにアンダーに撮影していますが、暗部は潰れることなく、構造物の様子もしっかりわかります。シャドウで表現のできるレンズという印象を受けました。


LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden

ドライバーズシートに座ってワイパーに最短撮影距離でピントを合わせて撮影。手を伸ばしたぐらいの0.7mという距離はこんなイメージです。開放で撮影すると口径食が画面の周辺に現れます。ただこれも半段絞ると円になってきます。

LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden

  • LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.IndenF1.5
  • LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.IndenF2.5
  • LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.IndenF2.8

絞りの違いによる口径食の変化です。開放では大きく出ている口径食も半段絞ることでほとんど円に。あとは絞るにつれ丸い円が小さくなっていくのが分かると思います。どの絞りでも綺麗な円形のボケにするための12枚の絞り羽根、本レンズのこだわりがうまく伝わりましたでしょうか。


LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden

LEICA M (Typ240), Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden


LEICA M Monochrom, Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Indenモノクロで撮ると本当に美しい写りを見せてくれます。特にCCDセンサーのM MONOCHROMにマウントすると、ゾーンシステム(特集「光を読む」Vol.4)によって計算されたような豊かなトーンの写真が上がってきます。一度この雰囲気を知ってしまうとなかなかカラーには戻れないかもしれません。

LEICA M Monochrom, Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Indenこの透明感のある空気、美しいです。もう説明は何もいらないですね。

LEICA M Monochrom, Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical VM, Photo by A.Inden


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気品とノスタルジーを身に纏う、最新の75mm

レンジファインダーカメラ向けのレンズとしては大きい58mmのフィルター枠を持ちながらも、ファインダーが蹴られないよう配慮されたスリムな鏡胴。本レンズは、これまでのVintage Lineのレンズに比べるとスッキリとしたデザインも相まって、大口径中望遠レンズとしては扱いやすいものに纏められていると感じました。レンジファインダーを使う多くの方は広角〜標準域をメインに据えていると思いますが、このくらいの大きさ・重さなら、スパイスとして旅の荷物の中へでも忍ばせやすそうです。

肝心の描写については、開放値(F1.5)で撮影すると柔らかな描写と滑らかなトーンが演出され、まるでオールドレンズを使っているかのような感覚がありました。しかし、撮影したものを細部まで観察してみると、ピントピークの解像度の高さ、色乗りのよさ、逆光でのフレアの少なさなど、隙のないその写りに「やはり現在のレンズなんだ」と大いに納得させられるものがありました。

フォクトレンダーのVMレンズは出荷時のピント精度が高く、どのレンズも開放から躊躇なく使えます。だからこそ、本レンズでも開放付近を積極的に楽しんでいただき、その気品ある写りを存分に楽しんでいただけたらと思います。Mマウント中望遠レンズとして、有力な選択肢となり得る1本、ぜひとも実際に手にしてみていただければと思います。

( 2020.09.09 )

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精悍なブラック。目立ちにくい黒は、小さくも見えますからスナップ撮影に最適です。専用の金属製スリットフードは色を合わせて付属します。

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シルバーボディに合わせたシルバーももちろんラインアップ。とはいえ、ブラックボディに合わせるのも悪くありません。

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