PHOTO YODOBASHI

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LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM

35mmフルサイズ対応、距離計連動式マニュアルフォーカスレンズ「Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM」を紹介します。フォクトレンダーには、同じ焦点距離のVMマウントで開放値が違うレンズがF1.2、F1.5、F2、F3.5と4本用意されており、本レンズはその中で一番明るい開放値を誇ります。

最大径63.3mm、全長49.0mm とコンパクトなレンズですが、総金属製鏡胴を採用しているため、手に持った時、ほどよい重さを感じます。と言っても347gと50mm F1.2の大口径レンズと思えないぐらいの質量ですが。ヘリコイドの操作も滑らかで適度なトルクがあり微妙なピント合わせもピタリと決まります。絞りは判段刻みにクリックがついており、ファインダーを覗いたまま絞り値を見ないで、クリック数を数えることで狙った絞り値を設定することができます。肝心の写りですが、8枚構成のレンズのうち2枚のレンズ両面を非球面にすることで、開放からシャープな像を結びます。また、12枚の絞り羽根により丸く柔らかなボケを実現しています。F1.2の描写を楽しむため、ほとんどの作例を開放で撮影しています。その写り、ご堪能ください。

( Photography & Text : A.Inden )

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

全体のコントラストは低めでオールドレンズのようなテイストですが、ピントが合ったところは立体感があり、キリッと立った描写を見せてくれます。線が細い写りと一言で片付けられない繊細だが力強い独特の描写が魅力的です。

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

開放では周辺減光がかなりありますが、この落ち具合が見せたいポイントに目を誘導してくれるそんなイメージでしょうか。船の櫓の海風にさらされたサラッとした木の質感、触れば冷やっとしそうな温度まで感じさせるリアリティのある写りにゾクッときませんか。

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

このレンズのもう一つの特長が色の表現力ではないでしょうか。決して誇張された色ではなく「そうそうこんな色だった」と記憶に残った色をそのまま再現しています。写真はその場で感じたものを封じ込めるタイムカプセルのようなものだと思うと、記録ではなく記憶に忠実にシーンを残したいものです。

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

キリッと冷えた空気感が伝わってきませんか。霜の結晶までしっかりと写し止める鮮鋭さがこの空気感を生むのですね。

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden


LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

開放で最短撮影距離付近(70cm)で撮影すると、ピントピークが少しハロをまとい柔らかくフワッとした描写になります。ただ少し離れて撮影すると柔らかさは消え、シャキッとした線の細い描写に変わっていきます。

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

上の作例と同じ開放ですが1mぐらい離れるともう柔らかさは消えています。被写体との距離感で描写が変わってくるので、その個性を理解して使えば面白い画が撮れそうです。

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

絞り開放で撮影すると大きく柔らかなボケが得られます。ただ周辺では口径食が見られます。

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

一段絞ると口径食はほとんど気にならなくなります。ボケの大きさは絞るにつれ小さくなってきますが、12枚の絞り羽根が点光源を丸く演出してくれます。

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

このレビューで唯一、絞って撮影しました。と言ってもF5.6ですが。拡大してみると、遠くの街並みまで精密に描写されているのはもちろんですが、家の屋根に立っているテレビの細いアンテナまでしっかりと判別できることに驚かされます。周辺減光はほとんど気にならなくなっています。

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

開放での周辺減光を逆手に取って、周辺に露出を合わせることで真ん中付近がオーバーな露出になり、いつもと違う雰囲気の写真を撮ることができます。

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden

ヌルっとした車の塗装感を出すために露出をアンダーに撮影しています。作例の四隅はかなりアンダーになっていますが、ギリギリ潰れずにトーンが残っています。

LEICA M (Type240), Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM, Photo by A.Inden


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レンジファインダーでぜひ使って欲しい開放F1.2

50mm F1.2のレンズを開放でしかも距離計連動式のカメラでピント合わせするなんてちょっと、、、ふとピンボケが頭にちらついてしまうわけです。もちろんCMOSイメージセンサーのLEICAですから、EVFを付け最新のカメラのように使ってもいいわけですし、実際大口径レンズはそのように使われる方が多いのではないでしょうか。本来はレンジファインダーで撮影した方がシャッタータイムラグがなく、気持ちよく写真を撮ることができることは重々承知していることもあり、気分優先&多少の気合いでロケに臨ませていただきました。

レンジファインダーがケラレないように鏡胴はスリムで短いスタイル、総金属製で高い工作精度を感じさせるヘリコイドの滑らかな動きと適度なトルク、Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VMは気持ちよくレンジファインダー撮影をすることが考え抜かれているレンズです。そして、なんと言っても凄いことが、全く調整が不要でレンジファインダーでピントがバシッと合うことです(こんなことで驚くのは不思議と思われるでしょうが、それが現実です)。コシナのレンズは出荷時のピント精度が高いとは思っていましたが、ここまで気持ちよく合うとは…さすが距離計連動式レンズを作り続けているメーカーだなと改めて惚れ直しました。

レンジファインダーで使う大口径レンズが、設計技術の進歩で価格が手の届く範囲になり、ボディの進化でEVFが使えることで身近になってきたように思えます。でもライカ本来の決定的瞬間を逃さないというスタイルで使いこなせてなかったように感じていました。ライカをライカとして使う。この一本を手にすることで、そんな当たり前のことに改めて気付かされることでしょう。

( 2021.01.22 )

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ライカ使いにとっては憧れの50mm F1.2。スタイルもなんだか似ているような気がしてきました。

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斜めから太陽光が入るとフレアーが出ます。クリアな描写にはフードは必需品です。

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