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Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM

昨年の春、3代目としてNOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VMが新たに登場しました。世界初の開放f1.2で登場した初代の写りに魅了された者の一人として、リプレイスを重ねながらこうやって販売し続けてくれることは嬉しい限りです。

本レンズは定評のある旧モデルとなった2代目の光学系を引き継いだまま旧モデル比で約2/3の質量(332g)、約4/5の長さ(50.5mm)と、大幅な軽量化とダウンサイジングを実現しています。確実かつ滑らかな操作性と所有欲を満たしてくれる作りの良さを考えると抜群にリーズナブルであることも魅力のひとつ。明るいレンズを試したくなったら、まず選択肢にあがってくる1本ではないかと思います。とにもかくにも抜群の機動性を提げて登場した3代目の写りをどうぞご覧ください。

( Photography : TAK / Text : TA )

Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

まずはボケ具合やピントを見ていきましょう。こちらのカットは合焦部から背景までは3mほど。やはり35mmにしてはボケが大きくなりますね。少しざわつく感じも見受けられるものの全体としてはスッキリしていますし、シャープに解像された縄が立体的に浮き出ている感じもよく表現されています。

Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

更に距離のある背景ですが、ピントはしっかりと分離されつつ、背景の詳細はボケていますね。広角の中距離でもボケが得られる。これが本レンズのパワーなのだと思います。画作りの幅が増えますよ。夕暮れ時でしたが色再現性もナチュラルです。

Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

最短撮影距離50cmでのカットです。ボディがレンジファインダーですから、距離計が連動するのは70cmまで。そこから50cmまで寄るには、ライブビューのお世話になりますが、CCDセンサー搭載機のようにライブビューがないカメラでは目測となります。とはいえ、このあたりはレンジファインダーをお使いの方は気になさらないかと思います。玉ボケは美しいですね。ゴーストやフレアも強力に抑えられていると感じます。


Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

今回使用したボディのベース感度はISO200。シャッター速度の最高速は1/4000秒です。F1.2で広角35mm。日中、開放でシャッターを切れる状況は限られてきますが、少し絞って使えば問題ないでしょうし、より低感度側に拡張する手もあります。前ボケもいい感じですね。若干グルグルの傾向があるようですが、まあそういうものでしょう。

Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

開放から十分にシャープですが、若干マゼンダ方向に転んだような色味が見受けられます。無論、ライカ純正レンズのような6bitコードはないので、レンズ情報がボディに伝えられることはありません。従ってカメラ側による補正なしの光学のみ、素の画像での評価となります。といっても、マゼンダ被りはショートフランジバックの広角レンズでは自然な現象であり、使用するカメラのモデルによっても発出具合は異なってくるでしょう。

Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

特に開放ではフリンジも出ますが、ソフトで簡単に除去できます。

Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

拡散光など、光が柔らかくなるとフリンジも目立たなくなります。むしろ、より好ましい雰囲気に調理してくれます。


Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

開放では柔らかな雰囲気を楽しめる本レンズですが、F2あたりから性格が豹変します。ピント部は一層キリッと浮き立ち、色再現もニュートラルになり、ヌケも一気に向上。逆光でもコントラストはしっかりと保たれ、フリンジともおさらばです。まさに最新レンズそのものといったパフォーマンスですね。若干樽型の歪曲が出ますが、実用上気にならないレベルです。

Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

更に絞り込めば、当然のごとく鮮鋭度を増します。まさに絵に描いたような、絞り値で性格を変えるタイプですね。開放からパキパキ写るレンズが増えてきましたが、オールド的にも現代的にも撮れるレンズは貴重ですよ。

Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

日中、曇天下でのカットです。開放から十分に解像していますがクッキリ!というほどではありません。どこか線が滲んだ絵画のようでもあり、肉眼で見た光景とは違った味わいのある世界に思わずニンマリとしてしまいました。心がざわつくような空気感、気配めいたものさえ感じるのですが、こういう朧げな描写こそ、見る欲求を掻き立ててくれるのかもしれません。


Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

「ノクトン」の名の通り、暗くなってからがゴールデンタイム。日没あたりからワクワク、日の出前からソワソワ。そんなレンズです。

Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

照明以外はほぼ暗黒の世界。本レンズならシャッターが切れます。どんなレンズでも絞り込むことはできますが、明るいレンズにしか開け幅は稼げないのです。

Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK


Leica M, Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM, Photo by TAK

旧モデルから引き継がれた確かな世界観を感じる写り。それが嬉しい。

ノクトンといえば、昔から目で見ているものを忠実にキャプチャーするというよりは、撮影者の眼差しそのものが写るレンズという印象です。定評のある旧モデルの光学系を引継ぎつつコンパクト化を実現した本レンズの写りも「じみじみとした趣きがある。」そんな言葉がよく似合うレンズだと思いました。日中は光のさじ加減次第で、また被写体を面で捉えるか点で捉えるかで描写の印象ががらりと変わる。低照度下での撮影は、この上なく美味しい描写の虜になる。絞れば現代のレンズらしく一段とシャープに。柔らかさと高解像の二面性を楽しめるだけでもありがたいのに、それよりも一枚も二枚も上の懐の深い描写を見せてくれるので使っていて実に楽しいレンズです。時に開放時、まるで白昼夢を見ているかような危うさを見せることがありますが、むしろそこが本レンズの真骨頂ではないかと。取り回しの良さ、そして機動性の高さからスナップ撮影はもちろんのこと、個人的にはこのようなレンズで日常の愛しい時間や愛しい人の今を残していきたいと思いますね。

もうひとつ感心したのは、標準レンズで撮っているかのような扱いやすさがあること。これはコンパクトな光学系かつ広角レンズであるのにも関わらず、実写において歪曲を気にせず使えるという点が大きいでしょうか。カメラ側による補正が入らない光学設計で、これだけの描写性能を実現しているのですからたいしたものです。F1.2とは思えない機動性と取り回しの良さ、そして確かなピント精度。そのうえ物としての作りの良さを考えるともはやバーゲン価格と言っても良いかもしれません。35mmという焦点距離は50mmレンズよりも余白部分にいろんな遊びを持たせることができる画角。この美味しい画角と確かな世界観を感じる写りを是非お楽しみください。

( 2021.01.26 )

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無駄をそぎ落とした操作性と、作りと写りを考えれば抜群にリーズナブルな価格設定。取り回しの良さや明るさを求める方に。先ずは本レンズをお試しください。

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フードが必要な方には専用の総金属製レンズフードをご用意。バヨネット式で脱着も容易です。

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フードやキャップを付けないで持ち歩く時は、こちらの保護フィルターをご検討ください。うっかりレンズに触ってしまうこともなくなります。

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