PHOTO YODOBASHI

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LEICA M10, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM, Photo by K

Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM

アポランターと聞けば、その昔にニコンFマウント用でマクロアポランター125mm F2.5というレンズを所有していたことを思い出します。厚みを感じさせる色乗りに、ヌケの良さが大変気に入ってました。そんな体験からテストであっても、レンズを手にすると頬が緩みます。レンズのスペックを読むと、なになに?8群10枚構成のレンズには異常部分分散ガラス2枚、両面非球面レンズ2枚を投入し、フローティング機構を搭載。Mマウント本家のあのレンズに当て込んだようなスペックです(お値段はこちらが相当にリーズナブル)。フォクトレンダーといえば、これまで本家とすこーしだけスペックそのものを変えてレンズをリリースしていました。そんな奥ゆかしさを感じさせていたのですが、我々のようなファンからすると「もっとガンガン行きましょう」という思いもあったわけです。いいですねえ。どんなものか早速テストしてみましょう。

( Photography & Text : K )

LEICA M10, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM, Photo by K

腕がバレる、アプローチを変えざるを得ない写りの良さ

パチパチっと撮ってみると、この感覚は本家と似た迷いを生むのです。手応えのなさというか。ダブルガウスのような、とか、ゾナータイプのような、といった、これまで培ってきたアプローチがガラガラと瓦解するのです。温帯低気圧がずっと停滞しているようなアタマを叩かれて、パジャマのままいきなり寝起きにダッシュさせられる感じです。つまりこれまでの標準レンズとは一線を画す写りで、まったく癖らしきものに頼れない。ひとつあるとすれば思いの外落ちる周辺光量が醸し出すトンネル効果ぐらいなものです。シャンと被写体に向き合わなければ、自分のダメさ加減しか写らない。根源的性能の高さを感じさせる写りです。

LEICA M10, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM, Photo by K

開放F2とはいえど、35mmフルサイズセンサーのカメラですから背景はそれなりに大きくボケるのです。しかしピークからなだらかに物の形を伝える厚みのあるボケ味は、ちょっと頭を切り替えなければいけないかもしれません。これは言い換えると、近くのものが近くに、遠くのものが遠くに見えやすいとも言えます。ボケ味に嫌味はなく実に丸い。殊更なシャープさを感じさせないのは画面全体の描写のレベルが高い証拠。原寸で見ればかなりのキレを感じさせます。日の入り直後で気温は10度前後。ひんやりとした空気で、少し湿度を感じさせるわけですが、記憶通りの景色といった印象です。

LEICA M10, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM, Photo by K

キレはこのカットでも伝わると思います。量感はもとより、ほんの少し粘度を感じさせる印象です。

LEICA M10, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM, Photo by K

前後のボケ味を確認。変態的な私には荒れてほしいですが、これだけ端正にまとめられるものなのですね。感心してしまいます。


LEICA M10, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM, Photo by K

肉眼を超えてくる写り

私が普段メガネを掛けている程度の視力のせいかもしれませんが、現像ソフトに読み込んだ瞬間、実際に自分の目での見え方を超え、「こんなだったっけ?」といった驚きがありました。そんなカットを少しまとめてみました。

LEICA M10, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM, Photo by K

雪国の雪解け時期の始めは、道路がやっかいです。これだけアスファルトが見えていれば問題ありませんが、朝晩の気温はまだ満足に上がらないので確実に凍ります。そんなことを考えながら撮ったカットですが、凍りっぷりの再現が肉眼を超えています。確かにキラキラ光って見えてはいたのですが。

LEICA M10, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM, Photo by K

積もった雪の表面が照る。雪解け時期によく見る景色ですが、肉眼で見てここまでの明瞭さは感じさせないのです。

LEICA M10, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM, Photo by K

肉眼並の立体感にプラスして、細部までスパッとキレよく写し込み、感じさせるテクスチャ感。

ハイキーのような極端な露出選択や、被写体をいろいろと変えてみて感じるのは、懐の深さ。


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ポテンシャルを発揮するには高画素機が欲しい

ざっと使った印象としてはLEICA M10でもまったく問題は感じさせませんが、できればM10-R程度の画素数、またはそれ以上でポテンシャルを解放できるのかなと感じます。それほどに根源的な性能の高さを感じさせます。冒頭にも記しましたが、これまで如何にレンズの持つ、いわゆる癖に乗っかっていたのか、こんなレンズを使うとそれを如実に感じさせられます。当たり前を当たり前に、まっすぐ。被写体にそう向き合うにはこれ以上ない写りのような気がします。あとは撮り手が何をしたいか、その熱量はどうなのか、それだけです。そのあたりが明確なら、確実に、そして想像以上の仕事をしてくれるレンズだろうと感じます。

( 2021.04.28 )

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高画素機にも対応する新時代の標準レンズ、フォクトレンダーから。

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専用のスタイリッシュなフードもお忘れなく。金属製です。

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