PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Naz

7artisans 50mm F1.1 vol.1 vol.2

2017年11月発売と、しばらく前のレンズとなりますが、お買い得な大口径標準レンズの1本として紹介したいと思います。昨今勢いを感じる中国の光学メーカー。技術力向上とラインアップ拡充の勢いは注目すべきものを感じます。本レンズは「七工匠」というブランドから出た「7artisans 50mm F1.1」。昨今の標準レンズといえば、高い解像力と美しいボケを両立させた超高性能な製品が多い中、こちらのレンズはそれらとは異なるキャラクター。本レンズを手にして、1950〜60年代の各メーカーが大口径化にしのぎを削った往年の時代をにわかに思い出しました。

本レンズはフルサイズ対応のライカMマウントとなっており、距離計連動するM型ライカをはじめとしたMマウントレンジファインダーカメラのほか、マウントアダプターを介して多くのミラーレスカメラで使用可能です。全長48mmに最大径62mm、重量は総金属製の鏡胴ながらも400gと、F1.1という開放値からすればとてもコンパクトにまとまっており、大口径レンズながら軽快感すら感じる取り回しのいいサイズとなっています。ゾナー型をベースとしたレンズ構成は6群7枚、高屈折低分散レンズも3枚使用とのこと。絞りは不等間隔でクリックがない仕様。概ねレジファインダー時代のオールドレンズをイメージしていただくとそれに近いといったところです。

( Photography & Text : Naz )

LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Naz

まずは開放で遠景にフォーカスしてみました。原寸サイズでみると、解像力は昨今の高性能レンズほどではありませんが、ご覧の通り観賞サイズで見れば不足は感じない程度。

LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Naz

大口径レンズといえば薄いピントが持ち味。それを活かす撮り方として、ピントの前後にあるものが写り込む配置でフレームを構成すると「らしい」写りを手に入れられます。

LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Nazウェットで繊細な線を描きます。コントラストが出る晴れた日の光よりも、曇天や雨天、微光量下で真価を発揮するレンズといえます。梅雨の6月、このレンズにとってはいい条件が揃う季節かもしれません。

LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Naz

前ボケは像が崩れます。また巻く傾向もあり、使いこなしが少々難しいかもしれません。

LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Naz

雨上がり。開放付近の線の細いしっとりとした描写こそ、本レンズの真骨頂ではないでしょうか。溶けていく後ボケやピント付近の滲む様は昨今の超高性能レンズには再現できない描写です。最短撮影距離はMマウントの大口径レンズとしては0.7mと短いのも扱いやすいポイントです。


LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Naz

F11まで絞ってみました。絞るほどにピントはキリッとしてきますが、線が太らないのがいいですね。また中心部に比べると四隅は甘さが少し残るようです。

LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Naz

暑い雲が空を覆う日、日没近くの薄暗くなった空にレンズを向けてみました。F1.1は明るすぎるので、開放で空に向けて撮ることはなかなかないでしょうが、F1.4オーバーのレンズが持つ極端に浅い被写界深度と大胆な周辺減光が独特の雰囲気を生み出してくれます。

LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Naz

前ボケが煩くならない程度の大きさに留めつつ、被写体の前後を画面内に配置すると、奥行きを感じやすくなります。立体感もよく出ていますね。またベンチの木材や湿度を感じる地面等、質感再現もなかなかです。

LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Naz

こういった硬質な被写体でもカリカリにならないところがいいですね。夜間撮影はお手のものです。かなり暗い条件でも撮影を楽しむことができました。

LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Naz

LEICA M10, 7artisans 50mm F1.1, Photo by Naz

中判カメラで撮ったような浅いピント。この距離感で開放を使いこなしたら、撮り手にとって「遊べるレンズ」になると思います。


PHOTO YODOBASHI

オールラウンダーなレンズにはない魅力、そこを楽しむレンズです。

フィルムの時代、常用感度で夜間撮影を行うために、こういった特殊ともいえる大口径レンズが必要でした。デジタルの時代となり、ISO感度の自由度が高まった現代においては、その当時ほど「明るさ」というものに必要性は感じないかもしれません。ただ一方で、50mmレンズに限っていえば、F1.4までは優等生的な写りをするレンズが多いなか、それを超えた明るさを持つレンズは、どこか危うさをも纏った魅力を持っているように感じます。

一般的な評価軸で本レンズを評価してしまえば、開放は甘く、コントラストも低く、解像力は低いというようなものになってしまうのかもしれません。ただそれだけじゃないのが写真用レンズの面白いところでもあり、前述の「危うさ」とはまさにそれ。よく写ることはレンズの性能に於いて重要であることは間違いないものの、だからといって(極端な言い方にはなりますが)「写らないレンズ=使いものにならない」というわけではないのは、並べた作例からご理解いただけたと思います。本レンズは使うシーンや使う人を選ぶ1本となるわけですが、オールラウンダーな現行の標準レンズを既にお持ちの方に、2本目として本レンズをチョイスしていただきたい。きっと写真表現の幅を広げるいい働きをしてくれるはず。しかもそれが、このプライスで手に入るのです(下のカートにご注目)。

余談とはなりますが、こういった被写界深度が浅いレンズをレンズ側のカムとボディ側のコロで連動するレンジファインダーカメラでピント精度を出すのはとても難しいものがありました。最短付近ではピントの歩留まりが悪く、フィルムの時代にはピントをずらして複数枚撮影するなんてテクニックもあったほどです。デジタルなM型ライカもCMOSセンサーになり、ライブビューによってシビアなピント調整が可能となっています。本レンズではそれに合わせてマウント側にピント調整用の機構が備わり、付属の工具とマニュアルに印刷されたチャートを用いることで、最も使うシーンに合わせて撮影者自ら調整することが可能となっています。気持ちよく使うためにも、この機構をぜひ活用してください。

( 2022.06.21 )

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ひたすらに高性能な標準レンズが多い中、個性のあるレンズの存在は嬉しいですね。しかもこのプライス、楽しんだもの勝ちです。

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よりクラシカルなシルバー鏡胴も。

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本レンズにはフードが付属しません。オプションもありませんから汎用品で。金属製のレンズには金属製のフードを合わせたいですね。

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