PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

LEICA S3, SUMMICRON-S 100mm F2 ASPH., Photo by Z II

LEICA S3 / SHOOTING REPORT

ライカから中判デジタル一眼レフシステムの最新モデル「LEICA S3」が登場しました。本機の発表は2018年9月に開催されたphotokina 2018の場。ライカ関係で振り返ると、Lマウントアライアンスが発表された時ですからしばらく前のこととなりますが、発表から1年半の時を経て最新モデルとしてラインナップされました。前モデルであるライカS(Typ007)の設計を踏襲し、センサーを3750万画素から6400万画素へとアップグレード。高画素化を大幅に進めました。その他については、ボディデザインを含めほぼ同一。ライカSの登場から4年半を経ていますが、S3への進化が少ないというよりも、ライカSの設計が今でも十分に通用する、洗練されたものだったということでしょう。それでは中判デジタルの実力をどうぞご覧ください。

( Photography : Z II & K & TA / Text : Naz )


LOOK & FEEL

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ライカS3のボディワークは前モデルであるライカS(Typ007)とほぼ同一。シャーシにも変更がないのではないかと推測します。ボディ上面はマグネシウム製、下面はアルミニウム製、マウントはステンレス製を採用するなど、金属素材を上手に使い分け、堅牢性はプロフェッショナルな使用に耐えうるものとなっています。また、防塵・防滴性を高めるためにシーリングが随所に施されています。

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ボディ上部および背面のボタン・ダイヤル類には刻印等がないため、手にしてすぐは操作に少々戸惑うことがあるものの、シンプルながらよく練られていて、背面モニターの両脇にある4つのボタンをそれぞれ長押しすると、露出補正やAF/MFの切り替え、ISO感度、ホワイトバランス等の設定に直接アクセスできます。SL系と同様に背面に配置されたジョイスティックは、フォーカスポイントを操作する際にたいへん便利でした。

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ボディサイズは35mmフルサイズ機となるライカSL2よりも更に大きなものとなっていますが、中判デジタル一眼レフボディとしてはコンパクトにまとめられており、手持ちでの撮影もこなせるサイズ・重量にまとめられています。ただし、レンズと組み合わせれば2kgを優に超えてきますから、それなりの腕力・筋力は必要。ロケ向きの機材というよりは、じっくり三脚に据えて撮影するような、スタジオや風景写真等の撮影に向いたカメラと言っていいでしょう。AFの合焦速度も決して速いというわけでもなく、速度より精度を重視している印象です


SPEC OVERVIEW

ライカ S3 ライカ S Typ007
発売日 2020年3月28日 2015年10月31日
マウント ライカSマウント(35mm換算0.8倍相当)
センサー CMOS 30×45mm
画素数・画素ピッチ 6400万・4.6µm 3750万・6µm
ローパスフィルター なし
ダイナミックレンジ 15EV
ISO感度 100〜50000
映像エンジン Maestro II
色空間 sRGB/Adobe RGB/ECI RGB 2.0
シャッター フォーカルプレーン
※ライカCSレンズ使用時はセントラルシャッター選択可能
シャッター速度 1/4000秒〜8分 1/4000秒〜60秒
ドライブモード 1コマ撮影、連続撮影(3コマ/秒)、インターバル、セルフタイマー(2秒、12秒=ミラーアップ撮影)
フラッシュ同調 X接点 1/125秒、CSシャッター 最大1/1000秒、HSSファンクション 最大1/4000秒
オートブラケット撮影 3枚または5枚、1/2EV・1EV・2EV・3EVステップ
イメージデータフォーマット DNG、DNG+JPEG
バッファー DNG 15枚
動画フォーマット Cine 4K、フルHD(ミドルフォーマット) 4K(スーパー35)、フルHD(ミドルフォーマット)
動画解像度・フレームレート Cine 4K 4096×2160p / 24fps、Full HD 1920×1080p / 24・25・30fps 4K 4096×2160p / 24fps、Full HD 1920×1080p / 24・25・30fps
動画フォーマット MOV(Motion JPEG)
光学ファインダー視野率・倍率 98%、0.87倍
背面液晶パネル・解像度 3型 TFT、921,600px
視野率、視野角 100%、170度
ライブビュー 最大60fps
ストレージメディア CF(UDMA7.0)およびSDXC、外部(PC等)
GPS、Wi-Fi、水準器 あり
外部インターフェイス USB 3.0、HDMI(HDM Type C)、オーディオ、Lemo フラッシュシンク、Lemo ケーブルレリーズ、マルチファンクショングリップ端子
サイズ・重量 160×80×120mm・1260g(バッテリー除く)

冒頭でもご説明しましたとおり、前モデルのライカS(Typ007)との違いはセンサーの画素数。シャッター速度の低速側、そして4K動画撮影。4K動画についてはスーパー35から(フルHD動画と同様に)中判のセンサーサイズを活かしたCine 4Kとなり、スチルカメラの付加機能という域を大きく超えたレベルへと強化されました。また前モデルから踏襲されたスタイリングや操作性は、プロフェッショナル向け中判デジタル一眼レフというキャラクターを踏まえれば、目新しさよりも同一の操作感を重視している証といえるでしょう。


PHOTO GALLERY

LEICA S3, SUMMICRON-S 100mm F2 ASPH., Photo by Z II

まずはロケへ持ち出してみました。人里離れた渓流、流れる水面を狙いましたが、ご覧の通り説明が要らないくらい圧倒的な写りに驚かされました。使用したレンズの素晴らしさもさることながら、それを余すことなく受け止めるセンサーが持つ能力の高さこそ、中判デジタルらしい余裕を感じさせる力の源であります。

LEICA S3, VARIO-ELMARIT-S 30-90mm F3.5-5.6 ASPH., Photo by Z II

しっとりした描写を狙ってみましたが、この日は湿度が低くご覧の様子。しかし、子細に観察していくと、手に触れずとも触り心地がわかりそうなほどの抜群の描写力を発揮しています。64MPへと1.7倍も緻密となった豊富な情報量が効いています。また高画素化により画素ピッチは3/4程へと小さくなりましたが、ダイナミックレンジも高感度性能もこれまでと同一ですから扱いやすさは変わりません。(※画像のクリックで等倍画像を表示します:51.5MB)

LEICA S3, SUMMICRON-S 100mm F2 ASPH., Photo by Z II

渓流を求めて迷い込んだ山間の集落。味わいのある家並みを隅々まで捉えてくれるのはいうまでもなく、その場にゆったりと流れる時間も描写してくれているようでした。「よいレンズはその場の空気を写す」と言いますが、よいカメラはその場の時間をも写し撮ってくれるのかもしれませんね。

LEICA S3, SUMMICRON-S 100mm F2 ASPH., Photo by Z II

LEICA S3, VARIO-ELMARIT-S 30-90mm F3.5-5.6 ASPH., Photo by Z II


LEICA S3, SUMMICRON-S 100mm F2 ASPH., Photo by K

ロケ撮影の次は自動車を題材にしてみました。ガラスや金属の質感再現はご覧の通り。画にしっかりとした厚みがあり、落ち着いた描写には中判らしい安定感を感じます。完全デジタル世代である、Sシステムのレンズのキレやボケ味も素晴らしいですね。

LEICA S3, SUMMICRON-S 100mm F2 ASPH., Photo by K

画作りの傾向は、ライカSL系とも繫がるライカらしさを感じさせるものですが、中判ボディあるライカS3は、35mmフルサイズボディであるSL/SL2からさらにひとつ上の画を見せてくれるような印象でした。使い込まれた座面のファブリックやレザーのキルティング、ナイロン製のシートベルトやサイドブレーキの樹脂など、それぞれの描き分けは見事というしかありません。(※画像のクリックで大きな画像を表示します)

LEICA S3, SUMMICRON-S 100mm F2 ASPH., Photo by K


LEICA S3, SUMMICRON-S 100mm F2 ASPH., Photo by TA

LEICA S3, SUMMICRON-S 100mm F2 ASPH., Photo by TA

最後に室内で撮影を。今回はスタジオのようなセットを組まない、無い無いづくしのとてもミニマルな環境下。窓から射し込む柔らかい光の中で手持ち撮影を行いました。この機材でこの環境は「申し訳ない」という後ろめたさを感じましたが、より難しい環境こそ、このカメラの真価を発揮できるのではと期待を込めて。いざフレーミングをしてシャッターを落とし背面モニターに浮かぶ撮影カットを確認すると、「これが中判の凄みか」と毎度唸らされました。

露出を開け気味にしたときに感じる包容力と透明感が同居したような描写。この描写を見た時、やはり底力が違うと感じました。ハイエストライトからミッドレンジまで綺麗に破綻なく階調が再現されています。そして午前の光(の温度)を忠実に受け止め、再現できるカメラだとも感じました。これが出来るセンサーは実はとても限られているように思います。後処理でやるのではなく、カメラがきちんとそれを受け止め、また再現できるカメラだということです。

LEICA S3, SUMMICRON-S 100mm F2 ASPH., Photo by TA

LEICA S3, SUMMICRON-S 100mm F2 ASPH., Photo by TA

最高ISO 50000までの高感度に対応していますが、中判フォーマットらしい強みを損なわないレベルとなるとISO 1600〜3200程度でしょうか。しかしこれだけあれば弱い光の室内でも手持ち撮影が可能となるのです。このカットではISO 1600で撮影を行いましたが、ご覧の通り。高感度での撮影でもものともしない印象です。


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全ての機材を投げ打ってでもこのカメラを買う価値がある、それがライカS3。

撮影の前に深呼吸が必要なカメラは初めてかもしれません。現行品でいえば最高ランクの高価なカメラですから、持つ手も震えました。ファインダーを覗いて感じるのは、やはり一眼レフカメラらしい素通しのファインダー。本当に気持ちが良いものです。ミラーレスカメラのEVFにも様々なメリットはありますが、光学ファインダーは我々のDNAへ刻まれたなんともいえぬ安心感、そして「撮っている」という実感があるように思います。近接付近での撮影は、ピントをシビアに追い込んでいけるダイレクトマニュアルフォーカスが便利でした。中判フォーマットらしい浅い被写界深度により、ピントの置き場所次第でその表情をコロコロと変えていきますが、いずれも画として、そして表現のひとつとして成立させてしまいます。これはカメラとレンズの高い性能があってのこと。流石です。全てのモノやコトを丸呑みした上で、確かな結果をもたらしてくれるのです。

結論としては、やはりスタジオワークに適した機材と感じましたが、三脚に据えずともそれっぽく撮れてしまう力がありました。35mm判と比べ、頭ふたつ分くらい飛び抜けて階調が豊か。「これが中判の凄みなのか」と撮影しながら1カットごとに感じさせられ、階調にしてもピントにしてもギリギリのラインを攻めていける気持ちよさがありました。全ての機材を投げ打ってでもこのカメラを買う価値がある、それがライカS3です。幸運にも支払い能力をお持ちの方は、ぜひその頂へ手を伸ばしてみてください。

( 2020.04.10 )

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目が飛び出るようなプライスですが、確かにこのカメラにしか撮れない世界がありました。それを知りたい方は、ぜひ。

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動画撮影などフルに活用するなら専用バッテリーもお忘れなく。

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35mm判換算24-72mm相当の使い勝手のいい標準ズームレンズ。写りはご覧の通り、高性能な単焦点レンズと比べても遜色はありません。

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35mm判換算80mm相当の大口径中望遠レンズ。キレのよさとボケ味のバランスが絶妙です。スナップ、風景から物撮りと使いでのある1本です。

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