PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

LEICA Q2 Monochrom / SHOOTING REPORT

さすがと言うべきか、なんと言うべきなのか。ライカからQ2をベースとした、4,730万画素のモノクロ専用・フルサイズコンパクトカメラ「LEICA Q2 Monochrom」が登場です。センサーそのものはLEICA Q2のものからカラーフィルターを取り去った訳ですが、本家(?)LEICA M10 Monochrom(約4,000万画素)よりも画素数が多くなります。レンズはQ2同様、単焦点の28mm F1.7が搭載されます。レンズ固定でモノクロ専用機とは・・まぁライカがやらずに何処がやる!?という話ではありますが、それにしてもあまりに趣味の世界にぶっ飛んだカメラです。私はさんざんモノクロフィルムで撮影を楽しんできましたが、それでも「いったいどれくらいのセールスが見込めるのだろう」と若干心配になります。また私はLEICA Q2を所有し日頃から使っていますが、まさかモノクロ版が登場するとは思っていませんでした。そんなわけで青天の霹靂なこの1台、早速テストしてみましょう。

( Photography & Text : K )

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

1画素=1ピクセルの「画力」

実はレンジファインダーの"Monochrom"はCCD版/CMOS版と両方所有しています。久しぶりのその「画力」に触れてクラッときました。しかも今回は4,730万画素です。しつこいのですがリアルに4,730万画素ですよ。もちろんカラーフィルターの載ったセンサーであっても、3,000万画素あたりを超えてくると、比較してビックリするほどの変わりはないかもしれません。しかし確実に違いはあります。超えられない向こう側の一線といった類いのものですが、果たしてそれを超えなければならないのかどうか。それは人それぞれだと思います。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

釜戸の蓋、使い込まれた取っ手の雰囲気が実にリアル。エッジの丸さ、そこに載る拡散された淡い光。色は写らないカメラですが、ちょっと欲しいぞコレは、と。最短近くで撮影していますが、LEICA Q2同様にレンズ鏡胴で切替を行ってさらに寄ることのできるマクロモードが搭載されています。基本的に切り替えるほど寄ることはこのカット同様あまりないほど、そもそも寄ることができます。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

カラー画像を後処理で単にグレースケール変換しても、このような"モノクロ画像"にはなかなかならないものです。黒の締まり、そしていわば黒の中の階調再現力。画をフルカラーで再現すること、グレースケールで再現すること、その違いを思い浮かべるとなんとなく想像できると思います。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

13ストップのラチチュードということで試してみました。何ストップかということはさておき、モノクロフィルムのような再現をEVFで見て感じる露出にまとめてあります。実際にモノクロフィルム的です。なお、シャドー部は持ち上げると、そこを適正露出で撮ったかのように持ち上げることができます。このカットでハイライトを飛ばさずに、シャドーもそこそこに潰れずまとめることはできましたが、記したとおりにフィルムで撮った雰囲気にまとめたためです。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

元の画から少し黒を締めています。フィルムでいつもこんな雰囲気で撮りたかった。そんなことを叶えてくれます。


LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

マテリアルの質感を捉える力

PHOTO YODOBASHIにも何度か登場している、ハーレーダビッドソンのカスタムショップ「BAD LAND」さんにご協力いただいて「鉄」を撮りましょう。上の写真は杉板にクロームメッキそのもののような風合いを施したもの。なんとこれは塗装なのです。カスタムを突き詰めていくと遂には塗料まで開発してしまったという。ちなみにロシアのエルミタージュ美術館で金メッキの補修に同社の塗料が採用されたことがあります。いやはや物作りをする皆さんというのは本当に凄い。そんなわけで、日々鉄を叩き、炙り、削り、そんな工房をLEICA Q2 Monochromで捉えてみました。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

お客さんとのミーティングに使われる部屋に置かれるソファ。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

鉄板のカットなどにかかせないテーブルソー。ノギスの質感、ウエスの風合い、ライトの周り具合、、茶碗で3杯、おかず要りませんねコレは。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

旋盤の使い込まれたハンドル。いまの世の中データからのマシニング全盛ですが、旋盤機を見ると嬉しくなります。ハンドルの重みを感じながら柔らかに握り込んで操作される様が伝わってきます。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

削ったり切ったりするにはオイルが必須で、作業中オイルが切削部にかかります。したがってどうしても工場はオイリーになるのですが、その雰囲気が良く再現されて、工作機械の質感とのコントラストが実にリアル。これを捉えるのにこのカメラの右に出るものはなさそうな気がします。どうでもよいのですが工作機械の鈍色のエッジを見ていると、ブラッククロームのライカM5を思い出してしまいます。ああ、久しぶりにM5が使いたい。


LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

光を捉える力

様々な光の下で撮影してみました。その実力の程を感じて頂ければと思います。強烈なサイド光、開いたドアは当然黒く落ちるのですが、そこにきちんとトーンが見て取れます。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

ほぼ逆光。ブリリアント! 画素数もこれだけ積み増しになると流石に凄いなと感じました。CCDの頃のLEICA M Monochromだともう少しピーキーな画になりました。中判モノクロフィルムで撮影したかのような質感です。ちなみにこの車はSIMCA 1200S という車で、フランス車になります。色はヌケの良い淡いブルー。ベルトーネがデザインした車です。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

日の出すぐの時間帯ですが、まだビル群にきちんと光が回っていません。空にあわせて露出を決定していますが、真っ黒に潰れると単なるシルエット、しかしビルが黒で締まりが無いと、なんだかというシーン。思い通りにまとまってくれました。このあたりの余力に、進化を感じます。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

夜中。街灯と壁面に照らされ浮かび上がる隣のビルの非常階段。これを見た通りに再現するのが如何に難しいか。個人的には一番感心したカットかもしれません。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

カラーフィルターを取り去ったことでベース感度がISO200となったのだと想像します。レンズもF1.7と明るいため低照度にそもそも強いのですが、高感度特性も良好です。感覚的にはかなり感度を上げて撮影しても問題ない雰囲気です。むしろフィルムの粒状感に似た雰囲気が出てきて、これまた美味しい。レンズは開放から本当によく写ります。歪曲や色収差の補正はソフトウェア的に入ってると想像されますが、元々のベースのデキがよいのです。元の画があまりに階調が豊富で少し眠かったため、全体的にトーンを絞っています。ハイライトは当然飛ぶわけですが、嫌な飛び方をしないのに感心。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

光が回り始めた朝の通勤時間帯。この季節の朝の空気感を伝えてくれます。それにしてもキレが凄い。

LEICA Q2 Monochrom, Photo by K

最後に、写真を撮るのに一番難しいフラットな光を。いやもう、言うことなしです。


Photo by K

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そうか、ファンタジーが見たいのか

M型のMonochromと違い、ファインダーを覗いた時点で既に見える世界はモノクロ。28mmなんて見たまんまが写る画角で、ただでさえ画にするのが難しい画角。正直なところカメラを手にした際にはカラー版のLEICA Q2オーナーであることも含めて少し抵抗がありました。画素数が5,000万画素に届こうかという話もあって、キッチリとカッチリと撮る画を思わず想像してしまったのですね。実際に撮り始めてみると、背面液晶に現れる豊穣なトーンばかりに目が奪われます。あれ、キッチリカッチリは??と自分でも突っ込みたくなるぐらいに。撮ってるうちに誤解を恐れず記すなら、久しく失われていた感覚に気づかされました。楽しいのです。本当に。

モノクロフィルムをいま買うと1,000円近い値段です。普通のカラーで撮影するデジタルカメラに搭載されるセンサーも高画素化が進み、現実の世界よりもシリアスに写るんじゃないかというほどです、なんだか表現が変なのですが。そうこうしているうちに、あれだけ撮ってきたモノクロからちょっと離れていました。LEICA Q2 Monochromを使ってみて、最早モノクロフィルムでなければなんて感覚にはなりません。もちろんフィルムにはフィルムにしか表現できないものがあります。つまり、こういうことです。モノクロフィルムに劣るなんて感覚はないということです。フィルム以上に写りますし、感覚的には新たなフィルムが1つ増える、それも猛烈に写るヤツがといった感じでした。このことがまず嬉しいなと。そして今回あらためてモノクロ撮影を行って感じたことがあります。あくまで個人的な話なのですが、自分は写真にファンタジーを求めているんだなあと。グレースケールで表現される写真を見てあらためてそう感じたのです。このカメラを手にすると、ちょっと写真生活が楽しくなりそうです。あ、忘れてた。レンズが固定式なぐらいが楽しい気がします。久しぶりに寄ったり引いたり、そうやって被写体と対峙する原点的な楽しみを感じました。それもこれもグレースケールと線、それだけで再現される写りの良い画のおかげです。なるほど。モノクロームに惹かれ、愛するすべての人へ。

( 2020.11.25 )

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フィルム時代の金銭感覚で言えばボディとレンズで、まあ40万としましょう(ライカ通貨換算)。それにここは現在の価格でフィルム400本分。ざっくりですけどね。現像代やスキャニングの手間賃は入ってません。え? そうやって言い訳して買う物です。趣味の品ですもん。

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カラーフィルターもじきに発売されるそうです。まずは保護フィルターを。

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電池はかなり持ちがいい気がしますが、念のために。

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あら、不思議。レンズ無いのに高いなあと思うようになってしまった。レンズ資産をお持ちの方はぜひこちらも。

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なかなかな画素数なので、これぐらいのカードにしておいてください。

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皮算用にどうぞ!キーを叩く時間の積み重ねが、レジへの道のりへと繋がるのです。

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