PHOTO YODOBASHI

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LEICA M6 / 外観プレビュー

2022年11月に「ライカM6」が発表・発売されました。2014年に露出計を廃した完全機械式の「M-A」が登場した一方で、露出計を内蔵した「MP」が0.72を残して販売終了となる中で迎えた昨今のフィルムカメラブーム。これまでと異なるのは、そのブームを牽引するのがデジタルネイティブな若いユーザーであるということ。東京のフィルムカメラを中心に扱う中古カメラ店もこれまでお馴染みだったおじさんの街から、若い人が集まる代官山や原宿へと広がってきています。そして、様々な要因により、中古市場のM型ライカも高騰を続けています。今回の意外ともいえるM6の再登場には多くの方が驚かれたのではないかと思いますが、そのような現状からすれば、再登板させるM型ライカとして最も実用的な「M6」がプレイヤーとして選ばれたのはライカにとって必然だったのかもしれません。この外観プレビューでは、再登場したそのM6の製品写真とともに詳しくご紹介したいと思います。

( Text : Naz )


  • PHOTO YODOBASHI付属品の多いデジタルカメラにはないコンパクトなサイズのパッケージ。元箱はオリジナルを彷彿とさせるデザイン。そこにプリントされたロゴも「Leica」ではなく「Leitz」となっていました。
  • PHOTO YODOBASHI元箱の中には存在感のあるプラスチック製の黒い化粧箱。他にはマニュアルも入っていました。この化粧箱もオリジナルに近いものとなっています。
  • PHOTO YODOBASHI化粧箱を開けると、中にはボディとストラップ。ストラップは往年のナイロン製にラバーの肩当てがついたタイプのものではなく、現行のM型ライカに付属するのと同じレザー製のものが採用されていました。

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M型ライカの中でM3やM2、M4がトラディショナルなモデルとするならば、M7やM6はカジュアルなモデルのイメージ。その中でもM6は、使い勝手のいい露出計を内蔵しながらも、露出計以外のメカは他のM型ライカと同様に電源が不要な機械式。そして迅速に巻き戻しが可能なリワインドクランクも装備され、写真撮影に没入しやすい実用的なモデルといえます。ドイツ製品らしいシンプルかつモダンでありながら、伝統的なスタイルも踏襲してきました。日進月歩なカメラの中でこれほどゆっくりと歩んできたカメラもそうありません。APO-SUMMICRON-M 2/50をマウントさせてみましたが、M型ライカにはコンパクトなレンズが似合います。デジタル時代に設計・製造されたレンズをフィルムのカメラに組み合わせてみるのも興味深いです。ライカM Typ240以降で省略されたブライトフレームの採光窓もM6ではちゃんと存在しています。

  • PHOTO YODOBASHIシャッターダイヤルの回転方向はデジタルやM6TTL/M7とは逆のタイプ。ただしボディに露出計を内蔵していますから、外付け露出計のライカメーターと連動させるための溝は彫られていません。機械式シャッター機構のため、シャッター速度の数字と数字の間にセットすれば中間速度も使用可能。1/8秒以下は懐かしいスローガバナーのチリチリ音も耳にすることができます。
  • PHOTO YODOBASHIフィルムの巻き上げレバーにはM4以降で採用されたプラスチック製の指当てがあり、その部分が可動するようになっています。フィルムを巻き上げれば、ちょうどいい位置で右手親指が引っかかり、ボディを掴むようにグリップすることができます。背面の感度設定のダイヤルは従来のものからリファインされました。
  • PHOTO YODOBASHI電池室の蓋は、貼り革のある従来のタイプに加え、M-Pにも付属していたコインで開閉できる溝のついたタイプも付属します。このM6に電源スイッチはありませんが、常時通電していることから、長期で使わない場合は外しておくとよいでしょう。電池がないと露出計は動きませんが、シャッターは切れますので撮影は行えます。
  • PHOTO YODOBASHIM10以降のデジタルボディもフィルムボディの厚みに近づきましたが、改めてフィルムボディのM6を手にしてみると、わずかに薄いことがわかります。基本的なレイアウトは同じため、どちらをお使いの方でも違和感なく併用可能。軍艦部にはオリジナルのM6同様に「ERNST LEITZ WETZLAR GERMANY」の刻印。大きく筆記体ロゴが入らないすっきりしたデザイン。
  • PHOTO YODOBASHIシャッターはデジタルの金属幕の縦走り式ではなく、多くの古いフィルムカメラで採用されていた布幕の横走り式。幕速が低いため高速シャッターは1/1000秒までとなりますが、それ故に静かなシャッター音を実現しています。シャッターをチャージするとシャッター幕に測光用の白丸が現れます。露出計は少し大きめのスポット測光といった傾向。貼り革は凹凸の大きいタイプ。

バルナック型 1913年〜
映画用フィルムを転用した35mmカメラの始祖といえるウルライカ(試作品)が誕生。その後、A型ではレンズ固定式だったものから、C型では39mmのスクリューマウントが採用され、交換レンズも誕生しました。ライツ社のオスカー・バルナックが生み出したことから「バルナック型」と言われています。D型からはレンジファインダー(距離計)も実装されました。写真は完成形といわれているIIIf(1950年)。

M3 1954年
M型ライカの最初のモデルであるM3が発表されます。バルナック型ではピント合わせとフレーミング用のファインダーが別々でしたが、M3では一体化されました。ドイツのマイスターによる他に類を見ない品質で組み立てられたボディの完成度は、数多くのメーカーが模倣してきたバルナック型のカメラを一気に引き離しました。レンズマウントも「Mマウント」と呼ばれるバヨネット式が採用され、以後現在に至るまでこのマウントが採用されています。0.91倍と等倍に近いファインダーは、50/90/135mmの切り替え式フレームを備え、初期のモデルは2回巻き上げ式。上質な操作感や造りのよさ等、現在も多くのファンを持つM型ライカの完成形のひとつとなりました。

M2 1958年
M3の登場から4年、M3を簡素・簡略化したM2が誕生します。よりシンプルな外観となり、M6やデジタルMに通ずるデザインが完成しました。ファインダー倍率は0.72倍とされ、135mmの代わりに35mmフレームが採用されました。M2から距離計を省略したM1も誕生しました(1956年)。

M4 1967年
M4の誕生によりM6にも通ずるモダンなデザインが完成しました。斜めに配置された巻き戻しクランクは、これまでのノブ式に比べ迅速な巻き戻しが可能となり、着脱式のスプールを必要としないM6と同じラピッドローディング式のフィルム装填と開閉式の裏蓋が採用されました。

M5 1971年
市場を席巻する一眼レフカメラが技術開発でリードする中、M型ライカで初めて露出計を内蔵したM5が登場します。大型のシャッターダイヤルを採用し、使い勝手のよい少し大きめのボディとなりました。しかし、これまでのM型ライカとは異なる外観から、限られた人気しか得られませんでした。現在ではその使いやすさが改めて評価されています。またミノルタと提携し、Mマウントを採用しよりコンパクトなライカCL(1973年)やライカに先駆けて絞り優先AEを実現したミノルタCL2(1981年)も誕生しました。

M4-2 1978年
一眼レフの台頭により厳しい経営状態となったライツから、M4の仕様をベースにセルフタイマーも省略されるなど簡素化が図られたM4-2が登場しました。カナダライツによる生産で、歴代のモデルと比べ造りの悪さを指摘されることもありましたが、現在ではM型ライカの入門機として人気となっています。

M4-P 1981年
M4-2をベースに28mmと75mmのフレームが追加されます。後に登場するM6から露出計を省いた仕様となります。ライカの赤バッチがボディに採り入れられました。

M6 1984年
ヘッドカバー(軍艦部)の材質が、真鍮のプレス成形から亜鉛ダイキャストになりました(限定モデルでは真鍮も採用)。M4-PをベースにTTL測光の露出計を内蔵。13年に渡るロングセラーとなり、多数の限定モデルも誕生しました。ファインダー倍率が0.72倍に加え、広角向けの0.58倍と望遠向け0.85倍と選べるようになりました。

M6TTL 1999年
フラッシュのダイレクト測光が可能となり、それまでのM型と比べ軍艦部が2.5mm高くなりました。シャッターダイヤルが大型化され、ファインダー内の露出表示「▶●◀」と回転方向が揃えられました(※ライカメーターには非対応)。

M7 2004年
それまでマニュアル露出オンリーだったM型ライカに絞り優先AEを搭載したM7が誕生。完全機械式だったシャッターは電子制御化され、以降のM型のフィルムボディやM型のデジタルボディと同様に無垢の真鍮から削り出されたヘッドカバーを採用。M6等で指摘されていた距離計の白飛び(ハレーション)も改善されるなど、質感も向上しています。フィルム感度自動設定のDXコードにも対応しました。

MP 2003年
基本的なスペックはM6TTLを踏襲しながら、よりクラシカルな外観となりました。ブラッククロームではなくブラックペイント塗装となり、巻き戻しはクランク式からノブ式へと変わります。M6をベースとしながらもM7と同様に質感・操作感が向上しています。カラーバリエーションはブラックペイントのほか、シルバークロームも。ファインダー倍率は0.58/0.72/0.85倍の3種類(0.58と0.85倍は販売終了)。

M-A 2014年
現行モデル。M-Pをベースに露出計を取り払い、電子部品を廃した完全機械式モデル。発売はついこの前といった印象でしたが、既に9年を経過していました。「新品で買えるM型ライカ」はこちらかM6の2タイプとなります。ボディカラーにはシルバークロームも。M6TTLで2.5mm高くなった軍艦部は再びM6TTL以前の元の高さへ戻りました。

M6 2022年
再登板となった新しい「M6」は、オリジナルのM6の仕様を踏襲しながらも、真鍮削り出しのヘッドカバーやM11と同じマットブラック塗装、M-Pをベースとするファインダーブロックを採用するなど、より高品質なモデルへとアップグレードされました。

M3から始まったM型ライカの69年の歴史

1913年、映画用フィルムを転用した小型カメラがオスカーバルナックにより生まれました。以後、バルナック型と呼ばれるカメラはM39のねじ込み式マウントを採用し、様々なレンズがマウント可能なシステムカメラとして発展。日本を始めとする世界のカメラメーカーから模倣され、35mm判が最もスタンダードなフォーマットとしての地位を手に入れました。本家ライカのボディを超える性能のものも生まれてくる中、ライツ社はこれまでにない機構を持った「M3」というカメラを生み出します。距離計と一体化されたビューファインダーは50/90/135mmのフレームを切り替え可能とし、ドイツのマイスターが組み立てる複雑で精度の高いボディは「レンジファインダーの完成形」と言われるほどでした。それまで「ライカに追いつけ、追い越せ」と開発を繰り返してきた日本のカメラメーカーもレンジファインダーカメラの開発を諦め、一眼レフの開発へと軸足を移します。次第に撮影レンズでそのままピント合わせやフレーミングが行える一眼レフカメラが主流となり、制約が多いレンジファインダーカメラからユーザーが離れていきます。これによりライツ社の経営が厳しくなり、一時は生産や品質が不安定になるなど厳しい時期もありました。その後登場したM6はロングセラーとなり、約20年ほど前にはライカブームが起こるなど、M型ライカが再び注目を集めるようになります。以後はご存知の通り、M型ライカはデジタル化も行われ、現在ではコンパクトカメラから中判カメラまでフルラインアップで展開するプレミアムな光学機器ブランドとしての地位を確固たるものにしました。


  • PHOTO YODOBASHI① ボディ底面にあるツマミを起こして回し、底蓋を外します。
  • PHOTO YODOBASHI② 裏蓋を起こします。外した底蓋は、ボディを持つ手の薬指と小指の間に挟むと置き場所に困りません。
  • PHOTO YODOBASHI③ フィルムのベロ(先端)を少し引き出し、ボディに装填します。
  • PHOTO YODOBASHI④ イラストに描かれているように、3本爪の間にフィルムの先端を挿入します。
  • PHOTO YODOBASHI⑤ フィルムのパーフォレーション(穴)にスプロケット(歯車)の先端が噛み合ったことを確認します。
  • PHOTO YODOBASHI⑥ 裏蓋を閉じてから底蓋を装着し、ツマミを回してロックします。
  • PHOTO YODOBASHI⑦ 2コマ分巻き上げてからシャッターを切り、フィルムカウンターを「0」にセットします。
  • PHOTO YODOBASHI⑧ 巻き戻しクランクのノブを起こしてから回し、フィルムの緩みを取ります。
  • PHOTO YODOBASHI⑨ 裏蓋についたフィルム感度ダイヤルでISO感度を設定します。

馴れてしまえば簡単かつ確実なM型ライカのフィルム装填

独特なフィルムの装填方法により、馴れないと難しく感じてしまいがちなM型ライカ。バルナックライカと比べるとだいぶ洗練されたものとなっています。コツとしては、底蓋の持ち方が重要。テーブルのような底蓋を置ける場所があれば困りませんが、撮影中に立ち止まって…のような場面では置くことができません。上の手順②にもある通り、カメラボディを持つ側の薬指と小指の間に挟んであげると、邪魔にもならず置く場所にも困らず装填が行えます。また、装填を失敗しないポイントとしては、手順④と⑤をしっかり確認してから裏蓋を閉じることです。これさえ守れば装填で失敗することはありません。ベロを過剰に出し過ぎなければ、カウンターが「0」になる前から撮影も行え、自家現像をしていた時は36枚撮りフィルムで39カット撮影することもできました。なお、撮影したフィルムの巻き戻し操作は、ボディ前面にある“LEICA M6”のロゴの下にある「R」レバーを倒し、巻き戻しクランクのノブを起こして回すことで迅速に行えます。


M6の再登場が、我々に新たな選択肢を与えてくれた

再登場となった「M6」は、1984年に登場したオリジナルのM6とスペックとしては同じですが、M7/M-Pと同様に品質向上が採り入れられ、実機を手にしてみるとより上質なカメラとして仕上がっていました。オリジナルのM6が登場したのは39年前、ライフサイクルの短いデジタルカメラと比べれば、新しいM6も「一生モノ」と言っても過言ではない長いライフサイクルを持っているはずです。この時代に需要の限られたフィルムカメラを新たに生産できるのは、高級機を少量生産することに長けているライカだから実現できたのかもしれません。

昨今ではM型ライカを初めて手にする方の中に、デジタルから始めたという方が増えてきました。M型ライカを使う上で、より長い歴史を持っているフィルムのライカに手を伸ばしてみたくなるというのも、自然の流れだと思います。少々値が張るのは事実ではあるものの、最新のデジタルボディであるM11と比べ、M6は約50万円リーズナブル。その差額をフィルムや現像、プリントに充ててみるというのも、フィルムカメラという新しい世界を知るという、他では得がたい経験になるでしょう。また、既にフィルムのM型ライカを手にしてきた方々には、M-Aと並び新品として買えるボディとして、記念の1台にいかがでしょうか。ロングセラーのM6といえば中古ボディが市場に数多く存在しますが、メーカー修理が可能で、保証もついているとなると、やはりこの新しいM6しかありません。そして、何より新品で購入できるフィルムカメラも風前の灯火のようになってきた現在、ユーザーに新たな選択肢を与えてくれる「M6」の登場は、我々ユーザーにとって嬉しいニュースであることに間違いはありません。

( 2023.02.16 )

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新しいM6は0.72倍のファインダーにブラッククロームのみという潔いよい単一仕様。0.58や0.85のファインダー倍率やシルバークロームのラインアップはありませんから、どれにしようか悩む余地はありません。

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取り扱いの容易な液体で販売されている現像液「T-MAXデベロッパー」に最適化された高感度微粒子フィルムT-MAX。

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復刻された初代ノクチルックス。フィルム時代に設計されたレンズですから、フィルムカメラとの相性も抜群です。

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新たに復刻された球面ズミルックスを今フィルムで使うというのがいいかもしれません。

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T-MAXフィルム専用の現像液。液体で販売されているため、水で希釈するだけで使えます。

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ヨドバシカメラでしたら、モノクロ現像の道具も豊富に取り揃えております。こちらは取り扱いしやすいパターソンのタンク。35ミリフィルムでしたら2本まとめての現像が行えます。

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薬品を保存しておくタンクは複数のサイズをご用意しています。こちらは1L。

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ダークバック。フィルム現像だけでしたら、暗室も不要でキッチンや風呂場でも手軽に行えます。

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液剤タイプですので、水で希釈するだけですぐお使える定着液。

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現像・定着後の水洗い時間を大幅に圧縮できる水洗促進剤。

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