PHOTO YODOBASHI

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OLYMPUS OM-D E-M1, KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT, 1/125, F8, ISO 500, Photo by NB

KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
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マイクロフォーサーズ用超広角レンズとして登場したKOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFTのレビューをお届けします。発売が2014年9月なのでちょっと時間が経ってしまいましたが、そのぶんしっかりと使わせていただきました。「コーワ」というのは、そう、あの「コルゲンコーワ」でおなじみのおクスリの会社です。実は光学メーカーとしても60年以上の歴史を誇る老舗で、かつてはコンシューマ向けカメラも作っていました。コーワが発売した最初のカメラについていたレンズが「プロミナー」。1954年のことです。実はとても古いルーツを持つレンズなんですね。1978年にコンシューマ向けカメラ事業から撤退した後も、コーワはスポッティングスコープや双眼鏡などの開発・生産を続け、「プロミナー」の名前は受け継がれていました。そして今回、単焦点のMFマイクロフォーサーズ交換レンズとして復活したのが、「8.5mm F2.8」「12mm F1.8」「25mm F1.8」の3本のプロミナー。今回レビューするのは最も広角の「8.5mm F2.8」です。

( Photography & Text : NB )

OLYMPUS OM-D E-M1, KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT, 1/1500, F2.8, ISO 200, Photo by NB

まず、レンズの構成図を見て驚いたのがエレメントの数。じつに17枚。うち2枚がXD(特殊低分散)ガラス、後端の1枚が非球面レンズです。手にしてみるとしっかりとした重みを感じますが、これはエレメントの数もさることながら、金属製で丁寧に作り込まれた鏡胴だからでもあります。フォーカスリングの動きも重過ぎず軽過ぎず、実にスムーズ。作りの良さが指先から感じ取れます。

OLYMPUS OM-D E-M1, KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT, 1/350, F2.8, ISO 200, Photo by NB

このレンズの最大の特徴は、35ミリ版換算17mm相当(106度)という画角にも関わらず、ディストーション値が僅か0.12%に抑えられている点。ああ、早く外に持ち出して使ってみたい。はやる気持ちを抑えて、まずは室内から。歪みの少なさとともに、F2.8の開放値と20cmの最短距離もこのレンズの強み。上のカットは絞り開放+最短でミニチュアカーのお尻の部分にピントを合わせたものですが、全長5cmに満たないクルマの後輪あたりですでにボケ始めているのが分かります。ボケ味もとても素直。手前から遠景まで、ピントの位置とボケがきれいに繋がっていきます。さて、いよいよ外に持ち出してみましょう。

OLYMPUS OM-D E-M1, KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT, 1/125, F5.6, ISO 250, Photo by NB

ディストーション値0.12%は伊達ではありませんでした。まずは分かりやすいところで撮ってみましたが、これはすごいです。画面中央の消失点に向かって視線が自然に吸い込まれていきます。このレンズはボディとの電子接点を一切持たない完全なマニュアルレンズ。つまりレンズだけで光学的にこの補正を実現しているのです。

OLYMPUS OM-D E-M1, KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT, 1/125, F11, ISO 200, Photo by NB

かなり仰角をつけたカットでも、実に気持ちよく、まっすぐ伸びていきます。


OLYMPUS OM-D E-M1, KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT, 1/90, F5.6, ISO 250, Photo by NB

明暗差があるカットです。外の明るさに引っ張られて建物内部はシャドウという露出ですが、見ていただきたいのは画面の左上。天井から白と青のリボンがぶら下がっていますが、暗いところでも青がしっかり発色しています。暗い場面の、しかも周辺部。まさにレンズの腕の見せ所。もちろんこれにはボディ側の性能も大いに関係していますが、センサーの持つダイナミックレンジを最大限に生かすレンズの性能がなければ、この結果にならないことはご想像いただけると思います。歪みの少なさはもちろんですが、今回このレンズを使ってみて感銘を受けたことの一つが、この光量が少ないところでの発色の確かさでした。

OLYMPUS OM-D E-M1, KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT, 1/125, F5.6, ISO 250, Photo by NB

これも露出は外の風景に合わせていますが、ここでも床の水玉の発色が効いています。つまりセンサーとレンズの協力関係がしっかり構築されているということ。控え目過ぎてもいけないし、強調すればいいというものでもない。それがリアリティ。この水玉の色がどう見えるかで、印象はだいぶ変わります。


OLYMPUS OM-D E-M1, KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT, 1/750, F5.6, ISO 200, Photo by NB

OLYMPUS OM-D E-M1, KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT, 1/500, F11, ISO 200, Photo by NB

OLYMPUS OM-D E-M1, KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT, 1/750, F11, ISO 200, Photo by NB

OLYMPUS OM-D E-M1, KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 MFT, 15, F11, ISO 200, Photo by NB


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包み込む画角

35ミリ換算17mm相当。私は普段24~50mmあたりのレンズを使うことが多いので、この画角に慣れるまで少し時間を要しました。被写体を見つけた時に頭の中でイメージする絵と、実際にファインダーを覗いた時に見える絵のギャップ。イメージより遥かに広い。ああそうか、これは光景を「切り取る」のではなく、逆に「包み込む」感じなんだな、というのが私なりに理解したことです。そうと分かれば、あとは片っ端から包み込むだけ。「写真=切り取る」という概念と正反対の撮影は新鮮な感覚でした。

これを書いている時点で、フィッシュアイを除くマイクロフォーサーズ用単焦点レンズとして最広角となるのが、このPROMINAR 8.5mm F2.8 MFT。それだけでも孤高の存在ですが、ボディとの電子的連携を排し、勝負のしどころを極めて明確にしたこのレンズを選ぶ理由は、十分過ぎるほどあると思います。
※本レンズはPanasonic LUMIX DMC-G1ではご使用いただけません。

( 2015.04.17 )