TAMRON SP45mm F1.8 Di VC USD Model F013N

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

タムロン初の標準域の単焦点レンズ「SP45mm F/1.8 Di VC USD Model F013N」（ニコンFマウント用）の実写レビューをお届けします。大切なことなのでもう一度お伝えしますが、標準域の"単焦点レンズ"です。しかも、開放値はF1.8。このレンズにはタムロンが考える新しいSPシリーズへの心意気がすべて詰まっています。手ブレ補正機構を搭載、最短撮影距離は0.29m。像面収差を補正するガラスモールド非球面レンズ2枚、色収差を補正するLDレンズ1枚を採用。eBAND、BBARコーティングでさまざまな角度からの光の反射を極限まで抑制し、超音波モーターで高いレスポンス性も実現。さらに簡易防滴構造を持ち、最前面のレンズには防汚コーティングが施されています。…なんでしょう、この"全部盛り"感。誉れ高きSPシリーズ第一弾のSP 90mm F/2.5（Model 52B）から36年。着実に進化し続けてきたタムロンが生み出した新しいSPシリーズは、性能、機能性と操作性、外観デザインなどすべてにおいて革新的と言えるレンズとなっています。さて、実際の描写はどうなのでしょう。ようやく作例をご覧になって頂くわけですが、既に素性のよさはお分かりのはず。いますぐカートに入れて頂いてもまったく問題はありません。

( Photography : Z II / Text : Rica )

まずは開放F1.8での1枚をご覧になって頂きましょう。柔らかな光のなか、焼き菓子を販売する女性の後ろ姿が立体的に表現されています。シャツの質感や髪の毛の再現など、繊細で女性的な描写が印象的で、このレンズの特徴がよく現れているのではないでしょうか。

こちらは少し絞ってF2.8での撮影。ピントピークのキレは文句のつけようがありませんね。金属の質感もよく再現しており、ドリンクホルダーにあるペットボトルからはひんやりとした触感までもが伝わってきます。柔らかなボケも自然で、円形絞りによる玉ボケが演出にひと役買ってくれました。

輝度差のある場面でもこの通り。シャドウとハイライトの描き分けがなんとも穏やかでナチュラルなのは、このレンズの魅力的なところではないでしょうか。ハイライト側にある風景も白飛びすることなく再現しており、狭い空間ながらも奥行きがしっかりと感じられる1枚になっています。モノクロでも撮影してみたくなりますね。

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秋の空はとても美しく、こういった場面に出会うこともしばしば。色の再現もさることながら、雲の描写にはその動きや、少しだけひんやりとしてきた初秋の風まで感じられます。手前の木の葉ひとつひとつも細やかに優しく描写され、心地よいコントラストに目を奪われます。

SP45mm F/1.8 Di VC USD Model F013Nには、手ブレ補正（VC）が内蔵されていますから、スローシャッターでの手持ち撮影が可能です。遠くにあるビルの灯りまでしっかりと描写しているにもかかわらず、エッジが立ちすぎることなく自然な描き方をしてくれます。

美しく輝く夜のメリーゴーランド。手ブレ補正の恩恵を受け、ISO100で撮影。水面に反射した光も、水の動きと共に鮮やかに再現しています。

温かみのある電球の色がそっと照らし出す空間。こんなローライトな場面も躊躇なく撮影できるのは嬉しいですね。実はシャドウ部にもたっぷりと情報があり、まるでその場にいるような雰囲気が伝わってきます。

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慎ましくも光る無二のアイデンティティ

優秀なズームレンズを生み出す一方で、ユーザーの声を丁寧に掬い上げ、新たな光学設計でデジタルカメラの高画素化に対応する単焦点レンズを完成させたタムロン。柔らかな曲線を取り入れた温かみの感じられる外観は手に取ってみたいと思わせます。マウント部付近に配置されたルミナスゴールドと呼ばれるリングも、控えめながら美しい輝きを放っていますよね。手ブレ補正内蔵、簡易防滴構造で暗所や急な雨などさまざまな場面で安心して撮影でき、常用レンズとしてもおすすめです。そして、45mmという絶妙な焦点距離は撮り手の目となり、撮りたいという思いにそっと寄り添いながら確実にその思いに応えてくれます。何気ない日常のなかにある光景を切り取るのに最適な画角ですが、自分の足で撮りたいものが入るところまで歩き、寄り、引くという、至極基本的なセオリーに則れば、この1本であらゆるものを撮影することが可能です。決して派手さはありませんが、まさにいぶし銀の1本となっています。

( 2015.09.29 )