SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

ニコンFマウント用の大口径標準ズームレンズ。DXフォーマット（APS-Cサイズ）の一眼レフに対応し、フルサイズ換算で27-52.5mmに相当する画角をカバーします。そしてなんといっても本レンズで注目すべきは、F1.8通しというスペック。大抵の場合はF2.8通しのズームレンズのことを大口径と呼ぶものですが、さらに上を行く明るさなだけに自ずと期待が膨らむというものです。開放すればボケをたっぷりと添えられるわ、薄いピント面での描写を楽しめるわ、それが標準域の画角で堪能できちゃうのですからね。実際に撮ってみると、クオリティはさすがシグマのArtライン！と感心させられる仕上がり。約1.9倍と控えめな倍率ということもあり、単焦点レンズでの撮影かと思わせるようなカットを叩き出すことも。では早速、ご期待の絞り全開の作例カットをたっぷりお見せしたいと思いますので、とくとご覧くださいませ。

( Photography : M.Ito / Text : KIMURAX )

たとえパンフォーカスでの撮影だったとしても構図から主要被写体がわかりやすいカットですが、絞りを開放し、親子の後姿がこれだけくっきりと立ち上がってくるのですからゾクッとします。よく見かけるような観戦シーンでも主役が明確に際立つことで、二人が共有している時間や会話のやり取りなどへと自然に思いを巡らせてしまう…さすがの表現力です。

ちょっと絞っただけですが、構造物のラインがキリッと出ています。コントラスト表現もいいですね。天井への微妙な光の廻り具合まで、丁寧に再現されているのがわかります。

どうやら各自ゲーム機に興じているようなのですが、こういった前ボケ越しに捉えると何だか密談風に見えてくるから面白いですよね。解像感しっかり、明暗バランスも実に自然で、絞り開放からよく写っています。

開放での被写界深度の浅さが、よくわかるのではないでしょうか？これがF1.8マジックです。

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さあ、もっと近づいて最短撮影距離での撮影。近接での画質も申し分無しです。猫じゃらしの毛ってまっすぐだと思っていたのですが、微妙に歪んでいたりするんですね。拡大して見ても、毛先から細かい種子まで容赦のない描き込みです。AFの精度もバッチリ。極薄のピント面での撮影は、やはりヤミツキになりそうです（笑）。

ワイド側で少し煽ると、このぐらいパースがつきます。縦横の直線がはっきりとしたシーンでは、さすがに樽型の歪曲を若干感じましたが、後処理で十分対応できるレベルといった印象。それよりどうでしょう、からっからに乾ききった柊の“硬さ”が伝わってくるようなキリッとした像。そしてデフォーカスエリアの程よい柔らかさを伴った描写。ますます開放で撮りたくなってしまいます。

炎に照らし出される鉄鍋の肌、きっちり編み込まれたゴザの質感まで丁寧に再現しています。奥に見える外の描写に違和感を覚えるかもしれませんが、年季の入ったガラス越しによる影響が大きいと思われますので、どうぞご心配なく。明るい外とは輝度差の大きいシャドーエリアまで、自然な諧調で表現されているところもいいですね。

撮影場所をあまり選ばないという点においても、明るいレンズはいいですね。高感度に頼らなくても手持ちでささっと撮影できるので助かります。

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標準画角でこんなにメリハリの効いた表現が楽しめるなんて、F1.8バンザイ！ですよね。室内外を問わず、一日中撮り歩ける。シャッタースピードも稼ぎやすいので、比較的動きのある被写体にだって威力を発揮してくれることでしょう。開いてよし、もちろん絞ってよし。かゆいところに手が届く大口径標準ズームなのであります。近頃のキットズームレンズもかなりよく写るのですが、開放F値はF3.5～5.6あたりが主流。そろそろ新しいレンズでも…とお考えの方はぜひ、表現の幅がぐっと広がるF1.8の世界にぜひ足を踏み入れてみてください。どこにでもあるようなシーンが、たちまち作品になってしまう。これ一本だけでかなり楽しめること請け合いです。

( 2016.01.14 )