Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率 | ニコン1用 [単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ | シフト | ニコン1用

画質に関して一切の妥協を排除したら、一体どんなレンズができるのでしょうか。Otus 1.4/55 はそんな問いに対するカールツァイスからの回答です。55mmというほぼ標準画角の単焦点レンズながらディスタゴンタイプの光学設計を採用し、10群12枚と贅沢にエレメントを使用。メーカー自ら「考え得る弱点をほぼすべて克服」と謳うその実力を知らずして、現代のレンズを語ることはできません。標準レンズとは思えない大きさと重さも、マニュアルフォーカスでしか使えないという潔さも、シネレンズを思わせる明瞭なフォントやその意匠も、手にする者の決意を新たにさせるだけの風格を備えています。言い訳を許さぬその写り、しかとご確認ください。

( 写真:K / 文:48 )

何気なく撮ったワンカット、ピントピークの素晴らしい解像力となだらかで素直なボケが、被写体の質感をくっきりと際立たせてくれます。一眼レフである以上、ファインダーを覗いた瞬間にレンズの力を感じるものですが、被写体を見つめるたび・フレーミングを考えるたび・ピントを追い込むたびに、レンズの持つ素性の良さを実感させられます。覗いているだけでワクワクする。久しぶりにそんな感覚を覚えました。

三毛猫の毛並みや髭の一本一本、素晴らしい解像力です。被写体を画面の中心に置いていませんが、隅々まで高い描写力という言葉に偽りはありません。石畳の描写からも、ボケのスムースさをご確認いただけるでしょう。

開放・最短付近の描写です。前後のボケのなだらかさは特筆すべきものですが、やわらかに輪郭を失っていく中にも芯をしっかりと持ち、量感の伴う描写が印象的。このボケがあればこそ、文句のつけられない描写で描かれるフォーカスピークの被写体が、立体感を持って迫ってくるわけです。

開放の描写が素晴らしく絞る必要を感じないほどですが、被写界深度のコントロールや周辺減光の解消などを意図して少し絞るのは効果的な使いかた。風景など、F2.8〜F4で文句のない結果が得られると思います。

半段程度の絞り込みで被写体を際立たせ、立体感を生む。このレベルのレンズであればこそ追求できる面白さです。決してシンプルではない背景を前にしても被写体を分離させることができ、ボケている中にも背景の姿をきちんと認識させることができる。それほど簡単なことではありません。

あらゆるシチュエーションでヌケの良さ・コントラストの良さを感じますが、階調特性も見逃すことはできません。暗部のトーンを豊かに描ければこそ生まれるのが、この水の立体感。水面に落ちゆく水滴がシャープに描かれていることも相まって、水の質量すら感じさせる写りになりました。

敢えてピントを少し外してシャッターを切る。ボケがなだらかで、量感を失わないからこそチャレンジできる絵画的なアプローチです。ピントを合わせてしまうと少し生々しすぎるシーン、"描き切らない"なんていう描きかたもあります。

データによれば若干のディストーションがあるはずですが、ほとんど気になるレベルではないでしょう。
50mmより少しだけ長い55mm。CONTAX Planar 55mm F1.2なんていう名玉を思い出させてくれます。

これだけのレンズですから、昼と夜の描写を比較してみました。いずれも開放・無限遠の描写です。点光源の溢れる夜のシーンでは収差が良く抑えられていることがわかりますよね。昼のシーンも、開放無限遠だなんて信じられますか? ちょっと次元の違うレンズと言えそうです。

ホテルのバスルーム、水滴にピントを置いています。こんな被写体でも画として成立するのは、量感を伴うボケの素直さあってのもの。「ボケ味とは何か」なんて議論を始めればきりのない話題ですが、本レンズを使えば誰しもきっと「ボケがいい」という感想を持つはず。言葉にしがたい凄みが、伝わりますでしょうか。

なんてことのない、水です。しかし最短付近でこれだけ澱みなく写せるのは、色収差を徹底的に抑えているからこそ。何気ない被写体にシャッターを切るたび、新鮮な驚きが待っています。いやはや、とんでもないレンズです。

何千枚も何万枚も写真を見ている私たちが驚くのは、実はこんな描写だったりします。少し距離のあるボラードの、浮き立つような描写。言葉は要りませんね。

この上ない描写を約束する、至高の1本。

特殊硝材を使ったアポクロマート仕様、非球面レンズの採用、像面歪曲を抑えるディスタゴンタイプの構造。ツァイスの光学技術の結晶といえる本レンズは、あらゆるシーン・絞り・距離において見事に被写体を描き出す、描写性能において文句のつけようのない逸品です。おそらく現行のセンサーではオーバースペックと言える解像力の高さを持ち、ボディが進化を重ねた未来でこそ本レンズの真価は顕著になっていくでしょう。収差を徹底的に抑えた描写はクリアでヌケが良く、これらの描写性能に見事なボケが相まって、本レンズだけが描ける世界が生まれます。「現代のレンズはつまらない」「性能を追求したらどれも似たり寄ったり」なんていう言葉が誤りであることを、本レンズは証明してくれます。

もちろん使い手を選ぶ道具であることは否めません。高価な硝材を潤沢に使ったレンズは重く、気楽に振り回せる大きさではありません。AFが欲しいというのも撮影者からすれば正直な欲求。このレンズを使って "瞬間" を狙うのは、瞬発力と修練、そして筋力が必要になるはずです。おいそれとは手を出せない価格も含めて、撮り手に "覚悟" を求めるレンズであることは間違いありません。

しかしファインダーを覗いた瞬間から広がる格別の世界には、万難を排して本レンズを手にするべき強烈な魅力があります。"ピントをどこに置くか"なんていう最も基本的なことの意味を、改めて考えさせられることになるでしょう。写真と真摯に向き合い、その表現を追求する方へ。本物の価値を知る方へ。
どうぞ、じっくりと取り組んでください。10年や20年をかけるのに、相応しい1本だと思います。

( 2014.02.14 )

 

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世界最高の車は買えなくとも、世界最高のレンズなら買うことができる。保険や車検の必要もありません。カメラって実は、リーズナブルな趣味ではないでしょうか。

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プロテクター代わりにフィルターを。フィルターもツァイスじゃなきゃいけない気がします。

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