PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

Nikon AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

ニコンの大口径F2.8通し標準ズームがフルモデルチェンジです。なにもかもが刷新されたわけですが、なかでもうれしいトピックは遂にVR(手ブレ補正機構)が搭載されたということでしょう。メーカー公称値では4段ほどのお助けがあるそうです。4段と一口に言えば「そうなんだ」と流し気味に聞きそうですが、シャッター速度1秒であれば、4段上といえば1/15。このあたりだとさすがに素直に感度を上げそうですが(笑)たとえば室内で光源は蛍光灯、ISO100、F2.8開放で1/15であれば、手持ちでなんとかならないかと考えます。しかししっかり止められる人でも、なかなか難しい幕速ですよね。これが手持ちで止まるのですから、標準ズームゆえの日常さまざまな撮影シーンを思い浮かべれば、その恩恵は計りしれません。VR搭載ということで光学系も大きく変更を受けました。単にVRを載せるための変更というよりも、さらなる光学性能の追求といった印象です。前面が凹みレンズからスタートするというのも面白いのですが、EDレンズを非球面として使っているあたり、もうテンコ盛りの全部載せといった様相です。実際の写りはどうだろうと楽しみにフィールドへ持ち出しましたが、「しみじみよい」そんな写りでした。作例とともにご紹介したいと思います。

( Photography & Text : K )

高架下で拡散した光の中に佇む車。先代モデルとなったレンズを所有していますが、中庸で手堅い描写をする1本です。さてさて、どんな写りをするのかと楽しみに持ち出したのですが、ヌケの良さは相変わらずです。丁寧に描写から雑味が取り払われた印象で、さらにクリア感が増しました。日本酒でたとえると、最後は水のようになってしまうのかなと思いきや、画に色気を感じます。日頃ズームレンズばかりを使い、たまたま手にした単焦点レンズをマウントすると同じような印象を受けることがありますが、要は単独の焦点距離だけで構成する単焦点レンズ並みの性能・描写力なのでしょう。先代モデルと比べて、このことが一番印象に残りました。

前後のボケ味を見たくて撮影したカット。猛烈にシャープというわけではありませんが、バランスがよいですね。いくら解像力があっても様々な要素が邪魔すれば、そのシャープさはスポイルされます。カーテンの編み目をしっかり捉え、手触りまで感じられます。ボケ味は前後共に柔らかで特にクセもなく、よくまとまった描写だと感じます。

もう1カット、開放のカットを。女性まで距離は3mといったところでしょうか。帽子や服の質感がよく事細かに捉えられていると思います。バックのボケは少し意地悪かなと試してみましたが、輪郭もよく丸められているように感じます。D4Sの画素数でこれだけ被写体が浮き立つなら、画素数の多いD810あたりで試してみればよかったなあと。このタイミングでリリースしてきたレンズですから、問題が出るはずもなく、画素数を活かした一枚上の描写を見せてくれそうです。

F5.6まで絞り込んでみます。もう十分でしょう。少し線が太るかなあという印象はありますが、被写体が被写体なのでそう感じるのかもしれません。

こちらはF4まで絞ったカット。やはり線が太るわけではありませんね。開放から十分シャープですが、キレが増す印象です。しかし実にクリアな描写で淀みを一切感じさせません。


光はフラットで、どれぐらい早朝の霧の中の雰囲気が写るかなと試したカットです。現像時にシャドーをかなり切り詰めていますが、階調再現に実に優れたレンズだと感じます。よい雰囲気です。ぱっと見の写りがよい(わかりやすい)レンズというのは、それはそれでよいのですが、実は作画表現上の幅がなかったりします。派手さはありませんが、確実に応えてくれるといった印象です。

歪曲はワイド端・テレ端で若干感じられます。しかし現像ソフトで修正が効く範囲のものであり、実用上問題にならないでしょう。人物を若干ブラすのに1/40となると感度をあげたくなるあたりですが、やはりVR搭載の恩恵は大きいですよね。D4Sというと高感度特性のよいカメラですが、フィルム時代からデジタル黎明期と、古くからカメラに親しんでいれば、やはりできるかぎり最低感度で撮りたいのです。高感度特性がよくなれば、これまで撮ることが難しかったシーンを捉えられるようになります。もちろん万々歳!ですよね。しかし、最低感度(基準感度)がもっとも画質的に有利ならそれで撮っておきたいものです。久しぶりにD4Sで、ISO AUTOをまったく使わない撮影でした。

うーん。。外連味のないと申しましょうか、なんと申しましょうか。タイル一枚一枚を描き切る解像力といい、スカッとヌケのよい描写といい、、

どんよりした鈍色の空、フラットな光であってもそれを忠実に捉えことのできるレンズです。


あとは、撮り手次第。羨望を背負うに相応しいレンズ。

今回のテストを通じて、手ブレ補正機構の搭載によってどれだけのシーンで支えられるのか、そのことに対して痛感させられました。ギミックの搭載、画質を追求して、テンコ盛り。当然レンズは大きくなります。標準ズームという、もっとも利用頻度の高い焦点域をカバーするレンズですが、これを普段使いするとなると少々気後れしそうです。しかし、最近どのメーカーも単焦点レンズのリニューアルをあいついで行っていますが、写りを求めてそのあたりのレンズを何本も持ち歩くことを考えれば、本レンズを1本マウントする、そんな選択は大いにアリだと思います。もちろん、レンズのサイズ云々ということを関係なしに、必要に迫られるプロフェッショナルのみなさんも必携の1本となるでしょう。レンズの根源的性能を底上げすることで、実際の光景をあますことなく写し込むことに近づく。味わいのようなものが薄れるかといえば、逆に性能向上によってもたらされる画に魅せられるものがある。そんなことを感じさせられたテストでした。大三元の標準ズームとは、カメラを使い始めて、とにかく憧れる1本です。その羨望の眼差しを向けられるに相応しい、そんな1本だと思います。

( 2015.10.27 )

Loading..
Loading..

ニコンの大三元を担う標準ズームもいよいよVRの搭載です。超高画素時代にも不足のない解像力は当然のこと、このクラスのレンズが持つ最上級の描写力に加え、高い頑丈性などまさにプロフェッショナルな1本です。

価格:Loading..(税込) Loading..Loading..)
定価:Loading.. | 販売開始日:Loading..
Loading..
Loading..
Loading..

ハイエンドなレンズに相応しい、ハイエンドな保護フィルター。ZRコートが施された強化ガラスとジュラルミン枠で前玉を衝撃や汚れからしっかりと守ります。

価格:Loading..(税込) Loading..Loading..)
定価:Loading.. | 販売開始日:Loading..
Loading..