PHOTO YODOBASHI

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Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/8000, F2.8, ISO 100, Photo by A.Inden

Nikon AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED

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焦点距離105mmで、開放値の明るいFXフォーマットレンズといって思い浮かぶのは「Ai AF DC Nikkor 105mm F2D」の存在でしょう。なんとそこからさらに一段明るい、F1.4というスペックを有するレンズがラインナップに加わりました。今回実写レビューをお届けする「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は中望遠単焦点レンズながら、EDレンズを3枚も組み込む(9群14枚構成)というリッチな光学系。ナノクリスタルコートやフッ素コートも施されているという徹底振りです。絞り開放から大変良好な像を結ぶのはもちろんのこと、大口径ならではの表現力は撮り手を魅了することでしょう。大きな美しいボケを伴った画は実に新鮮。鳥肌ものというのは少々大げさっぽくて個人的には苦手なのですが、見た瞬間に「ハッ」とさせられるパワーみたいなものを感じるのです。実用面において明るい開放値は、朝方や夕暮れ時といった光量が少ないシーンにも効くわけで、あまり時間を気にせずに撮り歩けるところもいいですね。ポートレートやスナップにと重宝する一本。というわけで開放でのカットを多めにいろいろと撮影してきましたので、早速ご覧いただきましょう。

( Photography : A.Inden, Z II / Text : KIMURAX )

Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/8000, F4, ISO 100, Photo by A.Inden

空の表情を見ていただければもうお解かりのように、ど~んよりの曇天。決していい条件での撮影ではありませんでしたが、全体的に程よくコントラストを感じる画に仕上がりました。そしてこの立体感あふれる描写。絞り開放から3段絞り込んでいるものの、画に奥行きがあるというか厚みがありますね。今回使用したカメラボディD810のセンサー(3635万画素)を存分に活かすべく、本レンズが光の情報を余すことなく届けくれた証でしょう。素晴らしい解像力です。

Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/8000, F1.4, ISO 100, Photo by A.Inden

ご承知のように色の出にくい天候での撮影でしたが、ダメもとでとカラフルな被写体を収めてみました。ところがどうでしょう、それぞれの色合いがきちんと再現されているではありませんか。こういった条件でも自然な色再現をやってのけるとは実に頼もしいものです。

Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/8000, F2.5, ISO 100, Photo by A.Inden

背景から完全に分離したガラス瓶の色はよく出ており、その特有のフォルムまで精緻にトレース。ガラスの厚みを感じさせつつ、瓶の内側にビタッとまとわり付いている結露の様子まで見てとれます。

Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/2500, F1.4, ISO 100, Photo by A.Inden

壊れた竹垣の上を軽やかに往来する猫ちゃん。ちらっと振り向いたその幼い瞳を、超音波モーター仕掛けのAF(AF-S)が静かに素早く確実に捉えてくれました。絞り開放から柔らかそうな毛並みを丁寧に描き、奥へとなだらかにつらなるボケ味。完全にとろけてしまうのではなく何が写っているかを感じさせるあたりは、写真的表現でありながらもある意味リアリティを感じさせるのではないでしょうか。よくよく見ると、画面左上から1/3あたりの所に写っている細く延びた雑草?みたいなものが二線ボケのように見えます。こういった細いものが被写界深度から外れるあたりにあると、このように写ることは他のレンズでもしばしば見られる現象。俗に言う“クセ玉”みたいなものではなく、ある条件が揃った時の偶然の産物と考えて差し支えないと思います。他のシチュエーションでの撮影カットではぜんぜんお目にかかれませんでしたので。

Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/2500, F1.8, ISO 100, Photo by A.Inden

「鳥除けで覆われた田んぼ」ですと言っちゃえば、まさに興ざめ。柔らかなベールをまとったかのような幻想的な世界感は、前後の絶妙なボケ味がもたらします。


Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/160, F1.4, ISO 100, Photo by A.Inden

F1.4ですからそれなりに周辺光量は落ちますが、絞るにつれて徐々に改善していきます。とはいえこの雰囲気、なかなかいいですよね。積極的に活用してみてはいかがでしょうか。カメラを手にしていなかったら気づかないようなささやかな被写体でも、そのささやかさを損なうことなくきちんと主役へと仕立て上げてくれる表現力に感心します。

Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/5000, F1.4, ISO 100, Photo by A.Inden

絞り開放からホントによく写りますね。カサカサの赤錆で覆われた門扉と有刺鉄線の質感が伝わってきます。


Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/800, F4, ISO 100, Photo by Z II

F4あたりまで絞れば、すでに描写力のピークへと達してしまう印象です。隅から隅までキリッと解像。歪曲もありませんしね。開いてよし、絞ってよしとはまさにこういうこと。

Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/800, F1.4, ISO 100, Photo by Z II

どこにでもあるような何気ない風景が、ちょっとよそ行きの表情で写り込む。と言うとちょっと大げさでしょうか? いえいえそう感じさせる表現力が確かにあるのですよね、ほら。

Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/60, F1.4, ISO 100, Photo by Z II

明るいレンズは感度アップに頼らなくても、このようなシーンを切り取ることもできます。色とりどりの玉ボケ。さすがにF1.4の大口径レンズですから画面周辺に口径食が見られますね。丸く整えたい場合はF2.8あたりまで絞ってください。


Nikon D810, AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED, 1/8000, F1.6, ISO 100, Photo by A.Inden

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開こうが、絞ろうが、隙を見せない描写力と表現力に、あっぱれ。

ボケの傾向としては、ふわっと一気に溶けてしまうのではなく、徐々にじんわりと溶けていくもので、どことなく上品さを感じさせるものです。カメラマン曰く「開放でキリキリとしたシャープさはないが、立体感を持った描写のためピントピークが浮き上がってくるようなイメージ」。なるほど、なるほど、この絶妙なバランスによって、画に厚みというか奥行きみたいなものを感じるのでしょう。決して開放のピント面がユルイというのではなく、必要にして十分なシャープさを保ちつつも、解像感だけが出しゃばってはこないということです。開放から徐々に絞っていっても丸みのあるボケは良好。さらに絞って画面全体にシャープさが行き渡った時のキレ味はこれまた痛快。天候的にもあまりいい条件ではないにもかかわらず、これだけの成果をもたらしたのですからね。カメラ側の力を差し引いたとしても、本レンズのポテンシャルの高さが伺え知れます。いやむしろレンズの粗までをも写してしまう高画素センサー機にこそ相応しいレンズに仕上げられた「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」。さらなる極みをものにしたいと望むニコンユーザーが、手に入れたくなる一本であることは間違いありません。

( 2016.10.07 )

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AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gに続く"三次元的ハイファイレンズ"の第二弾。こんな写りを見てしまうと、ポートレートを撮りたくなりますね。近距離から遠距離まで破綻のない繊細で贅沢な描写をどうぞご堪能ください。

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たいへん高価なレンズです。保護フィルターとして最適なニュートラルカラーフィルターもお忘れなく。ニコン純正品。

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