TAMRON SP45mm F1.8 Di VC USD Model F012E

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

銘玉を擁してきたタムロンのSPシリーズが新しくなります。その急先鋒のひとつとしてリリースされたのが、キヤノンEF マウント（フルサイズ）対応の標準単焦点レンズ「SP 45mm F/1.8」です。先だってキヤノンからは、5000万画素オーバーのフルサイズ機が投入されたこともあり、このようなカメラボディの高画素化へとがっちりと対応すべく、徹底した高い光学性能の追求がなされているとのこと。ひと目見てわかるシンプルなデザインを取り入れ、操作性や機能性にも手が加えられており、新しいSPシリーズへの期待もますます高まるというものです。本レンズのトピックスはやはり開放F1.8というスペックでしょう。広角寄りの標準レンズながら被写体に近づくほどに、背景をたっぷりとぼかすことが可能。最短撮影距離は29cmとなっており、焦点距離からするとかなり寄れます。また、APS-Cサイズのボディにつければ、中望遠レンズとしても活用できる明るいレンズですから何かと重宝すること請け合いです。

( Photography : A.Inden / Text : KIMURAX )

早速、開放のカットから行きたいとこですが、1段絞って虫のカラダを被写界深度内に収めようと試みました。デフォーカスの花びらや、その色とのコントラストに頼らずとも浮かび上がってきそうな、キリッと捉えたその姿。特に羽の描き込みからは、切れ味のよさが伺えます。ボケ量もまだまだたっぷり。絞り込む余裕があるというのは作画上も有利です。

開放での撮影ですが、ピント面は実にキレのある撮像です。等倍鑑賞にも耐えられる質感描写がなされています。靴のベリベリの部分のボケが写真的表現とはいえ、リアルそのものといった臨場感みたいなものがひしひしと伝わってきます。少々周辺光量は落ちますが、これぐらい落ちてくれた方がそれなりに雰囲気も出ますからね。1段絞るだけで随分となくなりますので、そこら辺はお好みでコントロールしてあげるといいでしょう。

丸みを帯びた座面の、光によって微妙に移ろう色合いまで見事に再現。色乗りもいいですね。表面のシボまでくっきり・はっきりトレースしており、緻密な描写が冴え渡っています。

光が差し込んだ床面の色合いが目を惹くのですが、ほとんど白味がかった窓からの映り込みや、対するシャドーエリアのトーンも実に美しく表現されているところに好感がもてます。

ピント面で写し止めた躍動感あふれる水滴の姿が、前後のデフォーカスエリアから艶感を伴いながらすっと立ち上がってくるような描写。手前の水滴が反射して玉ボケと化し、なんだか粉雪が散らばっているようにも見えて、一瞬何だろう？と思わせる不思議な画に仕上がりました。

これがF1.8で描くことのできる世界。絞り開放からこのキレ味。癖のないフワッと柔らかなボケ味が、よりいっそう被写体を素直に引き立ててくれます。しっかり寄れるレンズですから、手ブレ補正機能がついているところもマルですね。

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手入れが行き届いていると見られる艶やかなボード。それとは対照的な、日焼けした年季の入った肌の質感までも見てとれます。

何でもないようなシーンでも、これだけ浅い被写界深度でフレームすると俄然雰囲気が出ます。こういった表現のできるレンズを普段使いできるといいですね。

バランスよく様々な距離感での撮影を試みていますが、ついつい中距離～近距離撮影が多くなってしまうのが困りもの。しっかり遠距離も撮ってきました。開放すると前ボケを入れたくなっちゃうんですよね（笑）。自己主張しすぎない、品のよさを感じるボケ味だからなのでしょう。ところで、じっくりと見ていけばわずかに歪曲を感じますが、さほど気にするレベルではないかと思います。絞り開放からこの描写ですから申し分ないです。

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さて、もう少し絞ってみましょう。F5.6ですが十二分にシャープです。高コントラストなシーンながら、明暗バランスよく描けています。カメラボディへと光の情報をふんだんに届けられている証左でしょう。

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明るいレンズですから、やはり開放時にどれだけの描写力を見せてくれるのか大変気になるところでした。そして今回のレビューでは開放、とりわけ近接では驚くほどのシャープさをまざまざと見せ付けてくれたわけです。十二分なキレを感じさせながらも、絞っていってもエッジがやたらと立ってくる感じではないので、見ていて気持ちのいい仕上がりでした。そこら辺のバランスって高精細になればなるほどかなり印象を左右してきますから、嫌味になる一歩手前で踏みとどまるという匙加減が重要なのだと思うのです。開放時のシャープさといった根源的な性能の高さに加え、こういった綿密なチューニングがなされているあたり、作り手の気迫みたいなものを感じずにはいられません。完成度の高さを実感するほどに、これから続々と登場してくる「新SPシリーズ」への期待も高まるというものです。まずはこの大口径標準レンズから。実際に手にする価値ありです。

( 2015.09.29 )