PHOTO YODOBASHI

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Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/160, F1.8, ISO 125, Photo by Rica

SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

シグマから、Artラインの「単焦点レンズ」としては6本目のラインナップとなる135mm F1.8 DG HSMが登場しました。2012年、35mm F1.4 DG HSMの発売以降、50mm F1.4 DG HSM、24mm F1.4 DG HSM、20mm F1.4 DG HSM、85mm F1.4 DG HSMに続く本レンズは、フィルムの時代には「望遠レンズの入門」ともいわれた135mm。画角は18.2度とグっと被写体を引き寄せた画を撮ることができ、望遠レンズならではの圧縮感も味わうことができます。しかも開放値はF1.8。大きいだけでなく、豊麗なボケは見る者の心を奪うことでしょう。135mm F1.8というスペックであればドラスティックに背景を整理することができる上、見せたいものに自然と視線をひきつける画を作ることが可能です。この大きく美しいボケを最大限に生かすため、本レンズにはSLDガラス2枚、FLDガラス2枚を採用。各レンズパワー配置を最適化し、色収差を徹底して抑えています。手に取るとずっしりと重さを感じる1130g。最大径91.4×114.9mmと前玉を見ると吸い込まれてしまいそうなほどの大きなレンズですが、大型HSM(Hyper Sonic Motor)を採用しており、AFの駆動は非常に速くスムーズです。また、AFはフローティング方式ですから、撮影距離に関わらず画面の隅々まで高い画質を維持。ディストーションはかなり抑えられており、撮影後の補正の必要性を感じないほどです。開放からシャープでキレのある写りをしますが、絞り込めばさらに尖鋭さを増し、ランドスケープ撮影にもその威力を発揮してくれます。さて、前置きはこの辺にして、本レンズ(キヤノンEFマウント用)の作例をご覧になって頂きましょう。

( Photography & Text : Rica )

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/8000, F1.8, ISO 100, Photo by Rica

開放での撮影です。いかがでしょうか、この解像感。開放とは思えぬキレ味で、絞る必要性を感じないほどです。手前にあるコンテナの数々、そして奥に見える“鉄のキリン”ことガントリークレーンの線一本一本までしっかりと解像しています。もちろん、絞ればさらにキレ味が増しますが、よく言われる“開放から使える”という文言以上の写り。四隅にも甘さはありません。

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/1000, F5.6, ISO 100, Photo by Rica

こちらは開放から3段半絞り、F5.6でのカット。猛烈なキレ味です。メインの被写体である船は乗船者や操舵室、積載しているドラム缶までもはっきりとわかり、遠くを飛ぶ飛行機も機体の形状がしっかりと写っています。また、望遠レンズの入口ともいえる135mmという焦点距離では、圧縮効果もあり船から数キロ離れた工業地帯がグっと迫っているように見えます。

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/1600, F1.8, ISO 100, Photo by Rica

椿を開放で撮影しました。背景からフワっと浮かび上がる、ふくよかな椿の花。その立体感、花びらのしっとりとした質感描写も素晴らしいです。絞り羽根は9枚の円形絞り。背景の玉ボケの美しさに何度もシャッターを切ってしまいました。背景側から光が射しているため、花びらの縁に若干のフリンジが出ていますが、これだけの描写力であれば許容範囲ではないでしょうか。

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/200, F1.8, ISO 100, Photo by Rica

画面左側に光源を入れた状態でフレーミングし、開放で撮影しました。スーパーマルチレイヤーコートが功を奏し、ゴーストの発生はほぼ見受けられません。光源そのものが画面に入っていますからフレアは出ていますが解像感はまったく失われておらず、このフレアを効果的に生かして女性のポートレートを撮影するのもよいのではないでしょうか(※画像のクリックで原寸画像がご覧いただけます)。


Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/1000, F1.8, ISO 100, Photo by Rica

気持ちよさそうにひなたで目を細めるネコ。目尻の付近にピントを合わせ、開放で撮影しました。柔らかなネコの毛が背景からふわっと浮かび上がり、その立体感には思わず画面に手を伸ばしてしまうほど。自然に溶けていくようなボケに心奪われます。

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/3200, F1.8, ISO 100, Photo by Rica

ショーウィンドウでキラキラと光るバッグ。ガラス越しに撮影しました。AFはとても速く、よっぽどの反射がない限りガラスの向こう側の被写体にもきちんとピントを合わせてくれます。中央付近のオレンジ色の薄いオビは、道路のセンターラインがガラスに写り込んでいたもので、多重露光のような、不思議な雰囲気を演出してくれました。

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/160, F1.8, ISO 1250, Photo by Rica

135mmとはいえ、最短撮影距離は87.5cmと比較的短めです。指先から弦まで、ほんの1cm程度の距離しかありませんが、開放で撮影するとすでにふんわりとデフォーカスしています。雑然とした室内でもグっと被写体に寄り開放で撮影すれば、背景に気を使う必要はありません。逆に背景に雑多に存在するものたちが、色だけを残し、写真に彩りを添えてくれます。

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/2000, F1.8, ISO 100, Photo by Rica

親子でお買い物の帰りでしょうか。メインの被写体とのワーキングディスタンスを大きくとっても、前後のボケがしっかりと作れるのは魅力的です。

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/1600, F1.8, ISO 100, Photo by Rica

奥の踏切に人がいるのが分かりますでしょうか? ピントはその人物のあたりに合わせ撮影しました。開放の撮影ではこんな風に前ボケが大きくなります。ピント位置をいろいろに変えることでさまざまな画作りができるということは、つまりピント位置をどこに置けばいいかという写真の基本に立ち返ることになりますね。


Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/1250, F1.8, ISO 100, Photo by Rica

“いいレンズ”だからといって、美しい風景や被写体を探す必要はありません。いいレンズだからこそ、こんな風に無機質な被写体も光と影の美しい一枚の画に仕上げることができるのです。

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/200, F1.8, ISO 100, Photo by Rica

まるで錆びの目立つ手すりから広がるように、窓から光が射していました。周囲の余計なものを画面に入れることなく、日常的なただそこにある光だけを抽象化できるのも135mm、18.2度という画角だからこそ。

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/800, F1.8, ISO 100, Photo by Rica

白い自転車のスプロケットにピントを合わせました。スプロケットの歯型もしっかりと解像しており、前後に重なる自転車のスポーク一本一本も伸びやかに描き出しています。ピントピークのキレが素晴らしいのはもちろんですが、アスファルトの質感を残しながらナチュラルにデフォーカスしていく美しいボケのおかげで、全体の画は固すぎずしっとりとした雰囲気になります。

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/250, F1.8, ISO 100, Photo by Rica

Canon EOS 5D Mark III, 135mm F1.8 DG HSM | Art, 1/3200, F1.8, ISO 100, Photo by Rica


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写真の基本に立ち返らせてくれる、撮り甲斐ある一本。

シグマは単焦点を中心にArtラインのラインナップを広げてきましたが、最新モデルは135mm。望遠ズームに埋もれがちな焦点距離をしっかり拾ってきました。かつては望遠レンズの入門と言われた135mmですが、ズームレンズではあえてこの画角を意識することは少ないでしょう。でも、こうして単焦点レンズとして使ってみるとギュっと詰まった画角で、何かを注視したときのように被写体そのものをじっくりと見て撮影することができます。ピント位置をどこに置き、絞りをどうコントロールするかという写真の基本の重要性を再認識させてくれる焦点距離だと感じました。一眼レフに装着すると総重量は2kgを超え、カメラの小型化が進む昨今、正直言って決して軽くはありませんでした。OS(手ブレ補正)機構もないレンズですから、まずは被写体をしっかりと見て、どこに主題を置きたいのか考え、カメラを構えるということをこれまで以上にしっかりと行う必要があり、ここでもまた、写真の基本に対する修練の必要性を感じさせられたわけです。こうした一連の所作を通じてシャッターを切り、写し出された画を見たときの感動は非常に大きく、シグマのArtラインですから、その描写力は言わずもがな。力強さと繊細さを併せ持った階調豊かな画が写欲を確実に増幅させてくれます。普段目にしているシーンも135mmではまさに「切り取る」形になり、日常的な光景のなかから光や影を捉えたり、大きなボケを生かして抽象化するということも、望遠レンズならではの使いこなしのポイントとなってくるのではないでしょうか。これだけ大きなレンズでもAFは静かでスムーズ、そして速く確実ですから、まったくストレスを感じることなく撮影を進めることができました。ガラス越しの被写体にレンズを向け、一瞬でガラスの向こう側に合焦してくれたときには、これが既に当たり前にできることなのだと思わず「へぇー!」という声を出してしまったほどです。本レンズはフルタイムマニュアル機構を搭載していますが、被写体が一輪の花や小さな手であってもAFでしっかりと思った位置にピント合わせができ、微調整をすることはほぼありませんでした。そしてやはり大きく美しいボケはメインの被写体をグっと際立たせ、ピントピークのキレはシグマ節が全開といった様相。その立体感は“そこにあって触れられそう”なほどで、積極的に開放で撮影したくなります。何を撮っても絵になるというと、とてもイージーなレンズのように思えるかもしれませんが、だからこそ基本が大切で、何を見せたいのかという撮り手の意思を明確にする必要があり、非常に撮り甲斐のあるレンズだと言えるでしょう。

( 2017.04.07 )

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135mmという焦点距離がもたらす圧縮効果、F1.8という大口径が生み出す美しく大きなボケ。この一本が新たな視点を撮り手に与えてくれるでしょう。

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せっかくのArtラインですから、USB DOCKを使用してレンズのファームウェアは常に最新に。また、しっかりとピント調整を行っておきたいですね。

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大きく美しい前玉を、純正フィルターでしっかり保護しましょう。クリアセラミックガラスを採用した信頼性の高い保護フィルターなら安心です。

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開放番長のあなたなら、NDフィルターは必携です。大口径F1.8の本レンズ。開放からキレのある描写力がありますから、積極的に絞りを開けていきましょう。

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