PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Canon RF85mm F2 MACRO IS STM
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
キヤノンRFマウント中望遠単焦点レンズ「RF85mm F2 MACRO IS STM」のレビューをお届けします。中望遠単焦点レンズとしては軽量かつ寄れるというのが本レンズの特長。全長90.5mm、最大径78.0mm、重量500gという軽快さで、しかもマクロ機能を備えているのですから驚きです。最短撮影距離は0.35mと一般的な85mmレンズからすればかなり寄ることができ、またマクロ撮影の際にシビアになる手ブレについても、レンズ内光学手ブレ補正効果で約5段分(EOS R5/R6との組み合わせの場合は協調制御により約8段分)の効果があるとのこと。ポートレートレンズと考えられがちな85mmですが、本レンズならば狙える範囲が広がる上に機動力も増し、様々なシーンで活躍してくれそうです。早速作例をご覧いただきましょう。
( Photography & Text : Z II )
中望遠単焦点の醍醐味は、背景や前景から被写体が浮き上がったように分離して撮れることです。クルマからの距離はおよそ30mという場面、引きに余裕がある場所ならシンプルに置いて撮るだけで絵になります。
離れた被写体でも海面と人物をくっきりと描き分けています。波の様子もリアルに再現し、穏やかに打ち寄せる音まで聞こえてくるようです。
なかなか近寄らせてくれないワンコでしたが、中望遠なら少々離れても表情を感じる画角で切り取れます。絞り開放の柔らかなボケもさることながら、眼から鼻先にかけてのキレも見事。首のあたりはフォーカスが外れることで、毛並みがよりふんわりした印象ですね。
85mmは人物を撮る際に程よい距離感で撮れます。カメラを向けてもさほど気にせず自然な様子を切り取れました。ピントを置いた指先の描写は言うまでもなく、フォーカスから外れたニットの質感も伝わってくるようです。
倍率0.5倍のいわゆるハーフマクロは10cmほどの花なら画面いっぱいに撮ることが可能です。左からF2とF4のボケの様子を比較したものですが、ふんわりした様子を見せるならF2、花のディテールを見せたい時は少し絞ったF4あたりでしょうか。もちろん、どちらが正解はということは無く好みで撮るのがよいと思います。迷った際には開放絞りから少しずつ絞って撮って後で決めるという撮り方もありです。
料理に寄って撮ると迫力が出ます。その際に絞り開放ではボケ過ぎてしまい、せっかくの美味しそうな料理がうまく伝わりません。背景の様子がほんの少しわかる程度に絞ってボケを調節するとよいでしょう。
池に張った氷を見つけグッと寄ってみました。寄るほどに被写界深度は浅くなるのでF4まで絞っての撮影。凍る際にできたと思われる不思議な模様や、触れるとすぐに壊れそうな薄いエッジを高精細に再現しています。
蝋梅(ロウバイ)は丸く厚みのある花です。花の側面から花びらの先端までピントを合わせるためにF8まで絞りました。寄れる中望遠だからこそ絞って撮っても背景に十分なボケを得られます。
あえて太陽を画面に入れてみたのですが、ハレーションやゴーストなどは気になるほどではなく逆光耐性もなかなかのものです。
EOS R5との組み合わせることで得られる約8段分の手ブレ補正効果は頼もしく、日没後でも撮影を楽しめます。今まで手持ち撮影ではISO感度を上げざるを得なかったシーンでも、積極的にISO100〜400の低感度で撮れるのは強みです。
手ブレに強いので、夜景やイルミネーションの撮影を手持ちで自由に楽しめます。絞り開放の玉ボケは口径食が見られますが、F4まで絞ることでかなり軽減します。
引いてよし、寄ってよし。気軽に連れ出せる85mm
中望遠単焦点レンズに期待するのは、おそらくキットズームにはない大きなボケや、そこから浮き立つようなキレのある描写ではないでしょうか。RF85mm F2 MACRO IS STMの「中望遠らしい写り」はご覧のとおり。ポートレートレンズとして十分満足できる描写に加えて、被写体に寄れるという強みがあります。寄って撮ることでボケ量も大きくなりますから、それだけ表現に幅が出てくるわけです。なによりも開放F2に抑えたことによって、軽量コンパクトで、お求めやすい価格を実現できたことが重要でしょう。本レンズなら、ちょっとしたお出かけなどに連れ出しても苦にならないサイズ感ですので、風景、人物、スナップ、料理など様々な撮影シーンで中望遠らしい描写を楽しめます。キットズームから単焦点レンズにステップアップしたい方や初めて中望遠やマクロレンズにチャレンジしたい方に是非ともお勧めの一本。もちろん本レンズを使用したうえで、F1.2の世界を覗いてみたくなったならRF 85mm F1.2 L IS USM、もっと深くマクロの世界にハマりたくなったらRF 100mm F2.8 L MACRO IS USMという選択肢がありますが、ひょいと買えるお値段ではありません。RF85mm F2 MACRO IS STMならこれ一本で中望遠とマクロの両方を楽しめて、手が届きやすい価格です。これだけよく写るのですから、まずは本レンズを強くお勧めします。
( 2023.02.07 )
ポートレートを撮りつつ、そのままグッと寄って部分アップを撮ることも可能。一本で多くのバリエーションが狙えます。
マクロ撮影で寄り過ぎることはないと思いますが、保護しておくと安心です。
別売りのレンズフードは、ハレーションを防ぐだけではなく物理的な衝撃から守ってくれるので付けておくと安心です。
ボディ内手ブレ補正と協調制御できるのでお勧め。