KIPON ELEGANT 75mm F2.4

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

EOS R/RPをネイティブマウントとするマニュアルフォーカスの単焦点レンズが今年1月末にKIPONから発売されました。その名は「ELEGANT」。ELEGANTシリーズは、ドイツIB/Eオプティクスにより設計された開放F値2.4の単焦点マニュアルフォーカスレンズ「IBERIT」の光学システムを継承しており、クラシカルな光学設計を踏襲する一方で、デジタルイメージセンサーで最高のパフォーマンスが得られるように最適化されたレンズです。RFマウント用として、現在24mm、35mm、50mm、75mm、90mmの5本がラインアップされており、今回インプレッションをお届けするレンズは75mm F2.4の単焦点中望遠レンズになります。KIPON ELEGANT 75mm F2.4は、RFマウントを、マウントアダプターを介さず使用できる数少ない単焦点レンズでありながら、EOS Rシステムのコンパクトネスを活かせるサイズや重量が嬉しいレンズ。5群5枚、絞り羽は6枚、開放F値2.4と、シンプルで無理のない設計という点にも注目していますが、果たしてどんな写りをみせてくれるのか。楽しみですね。早速撮影してまいりましたので、ご覧ください。

( Photography : Naz / Text : Naz & TA )

75mmの画角は日々目にする日常的なものをうまく切り取ってくれるレンズのような気がします。湿度を感じる描写ですね、手前の古びたスツールの座面の質感がよい感じです。

F2.4という開放値ゆえ、中望遠でも溶けるようなボケ味は期待できませんが、視野にも近い誇張のない自然な世界を描き出せます。数メートル離れた被写体にピントを置くと、前後のボケが主張しすぎずちょうどいい塩梅です。

中望遠でのスナップこそ、マニュアルフォーカスでじっくりとピントを追い込むのが楽しい焦点距離域ではないでしょうか。

最短は約0.6m。カメラを構えて手を伸ばしたすぐ先まで寄ることができます。絞り羽根は6枚とややシンプル。ボケ玉を演出したい時はカクカクしない開放を使いましょう。

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突き抜けたものはない、でも楽しめる1本です。

価格帯からしても、最新の高性能レンズのように多くを望むレンズではないでしょう。ライカMマウント向け「IBERIT」シリーズのマウント基部をEOS RFマウントへつけかえ、スリムなままの鏡胴はコンパクトなEOS RPとも合っています。金属の鏡胴はしっかりとしたもので、滑らかで少し重めのヘリコイドもじっくりとピントを追い込む楽しさを演出してくれた印象です。周辺の像は少々崩れますし、写りに明確なキレを感じなかったせいか、撮影時の手応えは少々薄い感じでしたが、モニターに出てくる画は全然悪くありません。条件により色収差が派手に出るのはご愛嬌。必要ならば現像時に修正しましょう。コントラストを整えてあげるだけでもずいぶんと見栄えの良いものに。写りに強い個性こそありませんが、むしろその肩の力を抜いたところがこのレンズの良いところのような気がします。レンズに撮らされない、撮影そのものをゆったりと楽しめる。そんな休日散歩にぴったりなレンズとして、1本いかがでしょうか。

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タフで何よりコンパクトなのが良い。常用したい単焦点中望遠レンズ。

5群5枚というシンプルなレンズ構成ゆえにニュートラルな発色で忠実な色再現性、そして誇張を感じない素直な描写に好感を抱きました。75mmという焦点距離は、被写体まで距離をとることによって「時」をも写し込める、そんな画角だと思います。また標準レンズのようにも使えますし、シーンを「切り取る」にも絶妙な画角です。レンズの重量は340gとコンパクトにまとめられており、EOS RPとの組み合わせでコンパクトネスなフルサイズミラーレスシステムが手に入ります。このコンパクトネスと金属鏡胴の上品なルックス、そしてマニュアルフォーカスというのは撮影のモチベーションが上がる大きな要素。撮影を楽しむには最良の一本となるのではないでしょうか。見る限り歪曲収差も感じらませんし、誇張のない素直な描写は、近しい間柄のポートレート撮影にもうってつけです。日々の記録を残していくレンズとしても重宝しそうですね。

( 2019.06.20 )