PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Canon EF85mm F1.4L IS USM
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
キヤノンのフルサイズ用85mmレンズは、この他にF1.2とF1.8があります。F1.8とはかなりの値差があるのでフトコロ具合と相談して・・・という判断もあると思いますが、それに比べるとF1.2とはそれほどの開きはありません。となると、F1.2とF1.4、果たしてどちらがお得なのか?なんてことをつい考えてしまうのですが、もちろん選択のポイントはそんなことではなく、開放F値の違いによる写りの違い、それぞれのレンズがそもそも持っている描写の特徴、もちろん大きさ/重さによる機動性、それらが自分の撮影によりフィットするのはどちらか?という基準で判断すべきでしょう。
2017年の11月に発売されたレンズなので、かなり遅ればせながらのレビューとなってしまいましたが、まだお悩みの方は多くおられる筈。明るいレンズのデファクトスタンダードとも言えるレンズスピードは、いろんな状況に柔軟に対応し、あなたの撮影における「新しい使える絵筆」となってくれると思います。
湿度。
死角が見当たらない、バランスのよさ
開放でのショットが多めになっています。絞るんだったら「85、1.4のL」じゃなくても良いわけですもの。やはり現代のレンズらしく、開放でのピントピークは実にシャープです。ボケは実に柔らかくどこまでも甘美で、潤いすら感じられますね。このシャープネスとボケのギャップが多彩な表現を可能にしてくれます。特に印象的だったのが、逆光での味加減。レンズが嫌がりそうな角度の光ではふわっとして見えますが、「これはレンズではなく光そのものだ」と思いたくなるほど破綻がありませんし、それでいて情感も漂う描写です。死角がないといいますか、ずば抜けてバランスが良いレンズだと思います。(TAK)
手は顔ほどにものを言い。
4歳女性保育園児:とにかく元気です。マイブームはイノシシの「ブヒブヒ」という声マネ。常に動き回っているので、彼女の動きを追いつつ隙を見て撮影。保育園では冬でも半袖・半ズボン着用がルールとのことですが、コケても軽いウソ泣きで終わるあたりに確かな成長を感じました。
20代女性事務職員:恥ずかしいと言いながらも、いざ撮る時はちゃんと肝が座っていました。若いってそれだけで素晴らしい。しかも素直なのでいくらでも伸び代があります。撮った写真を見せると「私の手じゃないみたいです」。それは紛れもなくあなたの手です。自信を持ってください。
30代女性教師:先に出てきた4歳児のお母さん。東京から上洛して数年。学習中の京言葉を、京都で育つ娘に「訂正される」そうです。写真を見せると「すごい。こんなに違うんですね。いくらぐらいするんですか?」「20万円。レンズだけでね。」「えー!!」
40代男性翻訳家:こちらは4歳児のお父さん。アメリカ人。締め切り直前にもかかわらず快く協力してくれました。翻訳で何が大変かと聞くと、「主語はどこや!」「そもそも原文が文法的におかしい」「こういうことを英語でそもそも言わない」「英語に存在しないジャパングリッシュ」。そうですよね。「サラリーマン」とか言わないように気をつけます。
70代男性:退職後、悠々自適の生活。電話口で「手を撮る」を「毛を剃る?」と聞き間違える。何の写真や。撮った写真を見せると「冥土の土産になった」。当初は、手を撮影するということの意味が分からなかったそうで、すみませんでした。普通そんなことしませんものね。
ふとした言葉に、深く考えさせられたのだった。
85mmのF1.4とくれば、まずポートレートかもしれません。最初はそれも考えたのですが、「85mm=ポートレート」というステレオタイプな図式にはもう飽き飽きしてますよね?ということで、顔ほどにものを言う「手」を題材にしてみたわけです。「触れた感じ」のことを「質感」と呼ぶなら、手ほどその言葉に相応しい被写体はないでしょう。4歳から70代まで。年代、性別による質感の違いを感じ取っていただけたと思います。
このレンズとは直接関係ない話ですが、写真について考えさせられたエピソードがあったのでひとつ。本当は60代以上の女性の手も撮影させてもらうつもりでした。ところが主旨をお話ししたところ、見事に断られました。理由は皆さん同じで、「手だけ言うたってアンタ、それでシワとかシミとか写るんでしょう?そんなん嫌やわー」と。それを聞いて、はっ!と思ったのです。これは、いくつになっても決して失われることの無い「おんなごころ」なのだと。「年齢を重ねて皺が刻まれた手は美しい」なんて、撮り手のエゴ以外の何物でも無く、そんな安っぽい口説き文句でおんなごころは動かせないのだと。と同時にこれは、「そこに写っているものは一体何か」という、写真というものの本質の話でもあります。写真を撮ることは叶いませんでしたが、それ以上に、お姉様方に大事なことを教えられた気がします。精進します。(TAK)
躾の行き届いたサラブレッド。
出しゃばらない。粗相をしない。ピシッと躾られている。そういうレンズです。でもって、偉大なる「普通」。決して凡庸ということではありません。特定の要素が突出して高いのではなく、どれも非常に高い。このレンズにとってはそれが普通なのです。レンズ自体が主張するのでは無く、バランスの取れた高い描写力で被写体をストレートに捉えることで、被写体そのものを主役にしてくれる、筋金入りのプロフェッショナルレンズ。他の同カテゴリーの最新レンズと比べても随分とコンパクトで、フードも短めのものが付属しています。これ、ちょっとウレシイですよね。とにかく、何かに偏るということを知らないバランスのとれたレンズですから、実に使いやすいのです。やっぱりキヤノンはキヤノンなんですね。(TAK)
( 2018.09.19 )
所有レンズの拡充を図る上で「押さえておかなければならない焦点距離」というものがあります。85mmはまさにその中の一つ。加えてそれが開放F1.4なら「完璧!」というわけです。
付けっ放しが普通のアクセサリーですから、こういうものはセットで買っておきましょう。