PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, 1/1600, F6.3, ISO 6400, Photo by TAK

PENTAX K-3 Mark III Monochrome / SHOOTING REPORT vol.5

「ベルーガ」に会って来ました。

with HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE

愛称は「Beluga」。ロシア語で「シロイルカ」を意味します。フランスの航空機メーカーエアバス社が開発した、自社生産の航空機や部品等を空輸するための貨物機です。こちらの「A300-600ST(Super Transporter) 」というタイプは、A300-600R旅客機をベースとして、上部に巨大な荷室を建て増ししたような設計となっており、世界に5機しか存在しません。私、時々Youtubeで各空港のライブ番組を見たりするのですが、この日(2024/2/22)もそんな映像を流しつつフォトヨドバシ(PY)の記事を制作していました。そんな中、再生履歴からサジェストされた中継番組を見てびっくり。何とちょうど今、神戸空港にベルーガが来ているようで、駐機中の様子を民放2局が中継しています。私も存在自体は知っていましたが、実際に見たことはありません。ただこの日はPYの「オンライン編集会議」が。現場に急行してそこから参加してウケを狙えなくもなかったのですが、交通事情によっては時間内に着かない可能性もゼロではないので、安全策で自宅から参加しました。「神戸空港にはエアバスの拠点もあるからまた見れるさ」と自分に言い聞かせ、その夜に神戸空港を飛び立つ姿もライブカメラで確認して眠りました。

そして翌日、「ベルーガちゃん、今頃はベトナムあたりかな」と情報を確認したところ、何と昨夜は神戸から関西空港に飛んで(泳いだほうがはやいのでは)一夜を過ごし、本日また神戸に戻って来ているとのこと!となると昨日のおりこうさんはどこへやら。今来ている3号機の初飛行は1997年、2025年には退役するかもといった情報が脳内を駆け巡り、その全てが見に行くための正当なるエクスキューズにアップグレードされます。もはや曇天だろうが寒かろうが関係なし。0.1秒ほど熟慮して神戸空港に行くことに決めました。機材は?マイナス5秒ほど熟慮して、「K-3 Mark III Monochrome」に望遠ズーム「HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE」をマウント。みんなカラーでキレイに撮るだろうから、自分はモノクロ専用機で撮りたいと強く思いました。ついでにバーンと感度を上げてノイズも載っけてやりたくなりました。

( Photography & Text : TAK )

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, 1/320, F11, ISO 200, Photo by TAK

まず現場の全景です。ギャラリー多数、ポジションにも限りがあり、ネットフェンス越しの斜めアングルにて失礼します。既に上部貨物室のハッチがパカーッと開いています。電源、燃料、ケータリング関連の車両も見えます。前日にヘリコプター2機を運んで来ていたのをライブ中継で確認していましたが、この日は大物の積み下ろしはなかったようです。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, 1/100, F11, ISO 200, Photo by TAK

それにしても大きなお口ですこと。積荷無しだと意外に軽いのでしょうね。手前の櫓のようなものは、ベルーガ専用の昇降式積み下ろし車両です。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, 1/250, F8, ISO 500, Photo by TAK

気が付けばハッチが閉じ始めていました。ファインダーでは細かくは見えなかったのですが、作業員の方でしょうか、正面のギャラリーに向かって笑顔で手を振ってくださっているのが分かります。あるいはギャラリーの皆さんが手を振ってそれに答えてくれたのでしょうか。ベルーガに関われること自体、誇らしいでしょうね。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, 1/500, F6.3, ISO 500, Photo by TAK

ハッチが完全に閉じました!でもここからがまた長かった。。。旅客機と違って厳密な時刻表があるわけではなく、準備等も入念に行なわれます。


PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, 1/1250, F6.3, ISO 6400, Photo by TAK

まさにイルカのようなおでこ。ソナー能力がありそうです。ついでに声も出して欲しいですね。お目目も描いてあげたくなります。ご覧の通りこちらは3号機ですが、その「3」のフォントも本当に洒落ていて、フランスのエスプリを感じます。とその時、エンジンの回転が上がり始めました!ついに離陸するようです。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, 1/1250, F6.3, ISO 6400, Photo by TAK

実際、この時までに5時間ほどが経過していました。この手の撮影は、何らかの動きに備えて粘って粘って我慢できずトイレに行った瞬間、動きがあるものです。まさにこの時も用から帰って来たら、案の定の展開でした。長時間待ったこともあり、テンションは全開。感度もアゲアゲで参りましょう。ちなみにベルーガちゃん、トーイングカーなしで方向転換していました。エライ!

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, 1/1250, F6.3, ISO 6400, Photo by TAK

水平尾翼からまた垂直安定板が生えているのもたまらんですが、これが飛ぶということがこの段階になってもまだ信じられません。船との対比がこれまた神戸!ちなみにベルーガちゃんの最終目的地はフランスマルセイユ。あそこも素晴らしい港町ですよね、と多くの方が仰います。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, 1/4000, F6.3, ISO 6400, Photo by TAK

飛んだ飛んだ!そりゃそうです、航空機ですから。「飛んだ」と言えば、オオワシを狙うカメラマンの皆様も飛んだ瞬間同じことを仰います。そりゃそうです、鳥ですから。でもお気持ちよ〜くわかります。ちなみに私の祖父は相撲中継を見ながら、「勝った!」「負けた!」と言っていました。相撲ですからね。そんなことはともかく、ベース機よりもコックピットがかなり下側に移設されているのが、真横からだと特に分かります。開口部を広げつつ荷室底部を低くするための工夫でしょうかね。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, 1/6400, F6.3, ISO 6400, Photo by TAK

全長はベース機とさほど変わらないようですが、胴体が太いせいか短く見えますし、チョロQのようなデフォルメ感がかわいらしい。スラストで飛んでいるというより、風船のように浮いているようにも見え、もはや「ゆるキャラ」的な雰囲気を醸し出しております。ボーイング社にも「Dreamlifter」という同様の貨物機がありますが、割と直線的で理解の追い付く形をしています。対するベルーガちゃん。「何でそうなったの?」と一瞬脳内に波風が立つほどユニークでありながら、心を捉えて離さない、しかも合理的なデザインです。そしてこれこそがフレンチデザインの真骨頂ではないでしょうか。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, 1/5000, F6.3, ISO 6400, Photo by TAK

色が足りない。だから見たくなる。

気が付けば、ほとんど機材の話をしておりませんでした。まず、HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR REについて。離陸時はもちろん離陸後雲の中で小さくなるまで、ピントを外したカットはほとんど見られませんでした。PLMによる高い追従性は、昨今のミラーレス一眼と比較しても遜色はありません。しかも実にシャープで、コスパは相当なものですね。沈胴式でバッグの収まりが良いのはもちろんのこと、鏡胴が細身なのがこれまた助かりました。展望デッキ(滑走路と並行な側)にはおそらく撮影を想定して少し目が大きめのネットフェンスが立っているのですが、このレンズはその網目にすっぽり入ってくれたので、正面方向を通過した時はネット越しにならずに済んだのです。100-400mmや150-600mmクラスだともう入りませんからね。

そして、K-3 Mark III Monochrome。常識的に考えれば航空機はカラーで撮るでしょうし、カラー機もお持ちでしたらどちらで撮るか迷うかもしれません。そんな時は一度騙されたと思って、勢いでこのカメラで撮ってみてください。これからずっとモノクロでいいんじゃない?と思われるほどに、満足されると思います。モノクロは色が足りないメディアです。そしてそれこそが最大の強みでもあり、見る意欲を一層掻き立ててくれます。テロップだらけのテレビ画面は何も考えなくても情報が入ってきますが、テロップがなければまず「何だろう?」と思うでしょう。そんなトリガーのような力が、モノクロ写真にはあります。ベルーガの異形、陰影、存在感。単一の階調が、凝視を誘うのです。

高感度ノイズはどうでしょう。個人的にはこの粒状感に最もノックアウトされました。カラーデータをモノクロ化しても同じテクスチャーは出ないでしょうね。カメラのノイズリダクション設定はオフにしていますが、散らばり方もナチュラルです。フィルムと比べること自体もちろん無意味ですが、この仕上がりならプリントもしてみたくなります。過去の回でもお見せしてきたように、もちろん低感度ではどこまでもシルキーで美しい撮像を得られるのもこのカメラの特長です。ただ高感度ではノイズ自体の美しさという、別ジャンルの楽しみがあります。ノイズとはいえ色が無いのでノイジーではない。だから積極的に上げたい衝動に駆られる。なんとも底知れぬカメラです。こちらのカットも大海を泳ぐイルカのようではありませんか。ベルーガちゃん、本当にかわいかった!Von voyage!

( 2024.02.29 )

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