PHOTO YODOBASHI

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PENTAX K-3 Mark III Monochrome / SHOOTING REPORT vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5 vol.6 vol.7

自由研究:モノクロ画像からカラー画像を生成する

モノクロ専用カメラなのに何故にカラー画像なの?と思われましたよね。まずは画像をクリックしていただいて、等倍でご覧になってみてください。いつものカラー写真とはちょっと画質が違いませんか?解像感、立体感、偽色の少なさなどが別格で、全体的に生々しさが際立っています。この写真、K-3 Mark III Monochromeで撮影しています。具体的に言えば、R(赤)、G(緑)、B(青)のレンズフィルターを装着して撮った3カットを合成しています。

1画素がそのまま1ピクセル出力に直結するモノクロセンサーと聞いた時、思い付く方がおられるかもしれません。レンズの前にR(赤)、G(緑)、B(青)のフィルターを装着して、それぞれ1枚ずつ撮影し、画像編集ソフトウェアでRGB合成すれば、、、あとはお分かりですね。全画素を使った正真正銘のカラー写真が出来るはず!ということです。一般的なベイヤー方式のカラーセンサーでは1画素あたり1色分の明暗情報しか得られません。そこでさまざまな工夫をしてそれらを合成して、自然な見え方を予測して明暗情報を補完してカラー画像を作り出しています。その技術の進化には目覚ましいものがあり、特に画質面での問題が指摘されることもなく、だからこそベイヤー方式が最も普及しているのです。ただそれでも、純度100%のカラーではありません。それならK-3 Mark III MonochromeでRGBのフィルター3枚を使って撮ってソフトで合成すれば、予測や補完を介することなく、2573万画素そのままの解像感を持ったカラー画像が得られるでしょというわけです。

( Photography & Text : TAK )

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1ショットごとにR、G、Bとフィルターを交換して合計3ショットを撮りパソコンで合成するというのは、原始的でなかなか手間のかかる方法です。撮影作業自体は、特に物撮りなどの室内での撮影は単純なものです。フィルターの色によって明暗が異なり(Bが最も暗い)、絞り優先の場合はシャッター速度が異なってきます。また、三脚に固定するのは当然として、フィルター着脱時にピントリングやカメラが動かないようにご注意ください。フィルターのネジがうまくレンズ側に合わないと焦りますが、回を重ねることに上達します(笑)。その意味では角形フィルターの方がはるかにスムーズに着脱できるでしょう。

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ただ、非常に申し訳ないのですが、現在このRGBのフィルターを揃えることが少し難しいかもしれません。私が使用しているのは、「ケンコー SPカラーセット」という製品で、現在は生産終了品となっています。角形フィルターをはじめ代用品を探し回っているのですが、RとGは使えそうなものが見つかるものの、Bのフィルターはブルーハンサーなど薄めのものしか見つからず苦戦しております。この手法、星空撮影でも使われているようでドイツAstronomik社の「Deep-Sky RGB Color Filter」という製品もあるようですが、結構なお値段ですね。ともかく、試そうにもちょっと試しにくい状況でのご紹介となってしまい心苦しいのですが、今回はとりあえず「へぇ〜そんな世界があるんだ」と思っていただければ幸いです。

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撮影後、ソフトでそれぞれの画像を合成します。今回はフォトショップを使用しました。以下、フローチャートです。

① それぞれのフィルターで撮影した3枚の画像を開きます。
② 合成画像用に新規ドキュメントを作成します。カラーモードは「RGB カラー」、カンバスカラーは「白」にします。

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③ Rの画像を選択しコピーします。
④ 合成画像となる新規ドキュメントのチャンネルの「レッド」をクリックします。
⑤ ③でコピーした画像を、新規ドキュメントにペーストします。するとRの情報が合成画像に反映されます。
⑥ G、Bについても同様に作業を進めます。するとG、Bの情報も合成画像に反映されます。

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⑦ 合成画像のチャンネルの「RGB」をクリックすると、カラー画像が合成されます!三原色の意味を実感する瞬間です。

色合いが不自然な場合はソフトで調整しましょう。それが冒頭の画像です。いかがでしょうか。覚えてしまえば簡単なものです。繰り返しますが、これが正真正銘の2573万画素のカラー画像です。使っているカメラはモノクロ機なのに(笑)。

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ただし、お気づきの方もおられると思いますが、この方法は問題を孕んでいます。それぞれのフィルターを使って露光している間に被写体が動いたり光線状態が変わるという、至極当然の現実があります。こちらの画像がまさにそれで、露光間に雲が動いたことで、それぞれのフィルターで得られた色情報にずれが生じた結果、雲の一部がR越し、G越し、B越しの世界になっています。左側の山の一部もよく見ると、光線状態が変わったことで不自然なグリーンが生じています。面白いといえば面白いかもしれませんが、万事これではちょっと参ってしまうでしょうね。事実、遠景から近景まで色々試してみましたが、ほぼ全滅でした。光を完全にコントロール出来る状況が理想ですが、野外でまともなカットを撮るには多くの木々に囲まれた日陰など光が均一なシーンを探したいところです。

ここで思い出されるのはあのFoveonセンサーです。R、G、Bの光の波長が異なること、そして波長を短いほうから吸収するシリコンの特性を利用して、波長の短い順にB、G、Rの順に垂直方向に三層構造としたセンサーです。Foveonセンサーも画素数そのままのカラー画像が得られる実にユニークなセンサーですが、これが1ショットで完結することの素晴らしさを、新たな意味で痛切に感じております。


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モノクロ機が教えてくれる、ベイヤー方式の偉大さ。

いかがでしょうか。K-3 Mark III Monochromeでどうしてもカラーが撮りたい方、あまりおられないと思いますが(笑)、こういう方法もあるということを僭越ながらご紹介させていただきました。こちらのカットはかなり上手くいったほうですが(クリックで等倍拡大。木漏れ日こそポップに「RGB焼け」していますが)、やはり無風で光にも変化がないシチュエーションでないと野外撮影は難しいでしょうね。しかしハマるとものすごいのです。ベイヤーセンサーでこのレベルの画質を得るためには、6000万から1億画素は必要になってくるのではないでしょうか。ただ、だからと言ってベイヤーセンサーが劣るのかというと、全くそんなことはありません。カラー画像を一瞬で得られるということは、どう考えても偉大です。画質と利便性を高次元で両立させることの恩恵を否定する人はいないでしょう。ベイヤーやFoveonなど、カラー画像を得るための様々な技術を編み出した人々には敬意を表します。しかもカラー機であるK-3 Mark IIIには「リアル・レゾリューション・システム」機能が搭載されており、実質同じことができてしまいます。4ショット分の露光時間はかかりますが、フィルターを交換するよりはるかに速いですから。そして、K-3 Mark III Monochromeがなければ、今回の学びもありませんでした。

追伸:ブルーフィルターの件、80Aなど薄めのものを重ねる手もありそうですがどうでしょうね。フィルターの厚みが増す分ピントにも気を配る必要もありそうです。素晴らしいモノクロ機が出てきた今こそ、是非どこかのメーカーさんにリーズナブルなRGBフィルターを(以下自粛)。

( 2023.09.01 )

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こんなぶっ飛んだ遊び、モノクロ専用カメラでしかできません。

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やっぱりカラー機は偉いですよね。まだの方、どうぞ。

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強度と軽量を両立した、しっかりした三脚と雲台をおすすめします。

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