PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
PENTAX K-3 Mark III Monochrome / SHOOTING REPORT vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5 vol.6 vol.7
with
HD PENTAX-DA★11-18mmF2.8ED DC AW
( Photography & Text : TAK )
超広角のカオスをモノクロで捉えたら
ファーストレビュー以来K-3 Mark III Monochromeで試してみたかったことの一つが、超広角ズームレンズHD PENTAX-DA★11-18mmF2.8ED DC AWとの組み合わせです。捉える範囲が広がり情報量が増しながらも、色情報は抜かれる状態になります。フィルム時代にも同等の経験はしているものの、それでもこのカメラが描き出す世界を見てみたかったのです。色んな要素が否が応でもフレームに入りこんでくるのが大変でもあり面白くもあるのですが、モノクロで捉えることで情報の飽和が抑制され、ダイナミックでカオスなシーンも良い塩梅に整ってきます。色が無いにも関わらず、現実の情報量に一定の収拾がつくのです。結果、見る側の注意力にもバッファが生まれ、形や陰影に注意が向き、被写体を取り巻く背景を想像するモチベーションさえ生まれるような気がします。その内容に「正解」はなく、見る側の人生経験やその時々の事情にも左右されるに違いありません。無論これらの写真がカラーであれば、溢れんばかりの情報を浴びることで場に圧倒されるようなライブ感が出てきます。モノクロの場合は、ある程度の具体性は与えられながらも、そこから先を想像する余地、つまり好きなように解釈する自由がより多く残されるのでしょう。
相変わらずモノクロセンサーの威力は凄まじいですね。素材の階調に想像以上の余裕があり、現像時に明暗どちらに振っても簡単には破綻しません。ノイズが載ってもそもそも色が無いので全くマイナス要素になりませんし、美しい粒状感も味わえます。そして黒の締まりに惚れ惚れします。ジェットブラックを超えて漆黒、陰を超えた闇のような黒の再現で、プリントしたらインク代がかかりそうです(笑)。ハイライトを意図的に飛ばしたりしても美しさが保たれるのも助かりますね。HD PENTAX-DA★11-18mmF2.8ED DC AWの切れ味も抜群で、カメラの解像性能を引き出してくれます。また、輝度差の生まれやすいワイドな世界が豊かな階調特性とマッチするようです。泳ぐように街を彷徨うのに最高のレンズではないでしょうか。
「モノクロって難しそう」と言われます。確かに、カラフルな被写体に反応して「そういえば色写らないんだった」と笑ってしまうこともあります。色が無くて不自由なイメージがあるかもしれませんが、色から解放されることで得られる自由もあるのだなと改めて感じました。K-3 Mark III Monochrome、写真脳を刺激してやまないカメラです。
( 2023.06.02 )