Panasonic LUMIX S PRO 16-35mm F4

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

16-35mm、F4通しの広角ズームレンズです。もちろん時と場合によってレンズは使い分けるものですが、ある程度自分の作風が固まってくると、倍率の高いズームレンズは必要なくなり、それよりも安定した画質や取り回しを担保する方向へとシフトしていきますよね。「広角使い」を自認する方々にとって、もっとも重宝するのはこのズーム域ではないでしょうか。このレンズは「LUMIX独自の厳しいS PROレンズ基準に則り、企画/設計開発/製造される」「描写性能、ボケ味、立体感、操作性のすべてを、一切の妥協を許さず追求」（いずれもパナソニックのサイトより）とあるように、Sシリーズの中でもさらにレンズとしての高い完成度を目指した「S PROシリーズ」のひとつ。小型軽量、画面の隅々までシャープな写り、大きなボケを特長とするレンズですが、その実力をさっそく確認してみましょう。すべて絞り開放です。

( Photography & Text : NB )

画面の隅までシャープ。周辺光量落ちも感じられません。加えて、このような構図は線が少しでも歪んでいると見ていて気持ちが悪いものですが、どうですか、この気持ちよさ。

ボディはS5IIxにつけて持ち歩いていたのですが、重さ（500g）はまったく気になりません。とても軽い。全長（99.6mm）も長いとは感じません。そして直径（85mm）は、握りがいのある、ちょうどいい太さ。これはホールディングの良さにつながります。ホールディングの良さは瞬発力につながります。

遠くの、低く垂れ込めた雲の感じ。窓際のカーテンのあたりの、光が回り込んだ陰影の描写。見ていて気持ちがいい。いいレンズです。

---

ワイド端ですが、歪みをまったく感じないので不自然に拡散していくような広さではなく、とてもナチュラルな伸びやかさが感じられます。そしてじゅうぶんなシャープネスを持っていますが、とは言え決してカッチカチではなく、ほんの少し柔らかさを纏っているのが分かります。「開放の味」がちゃんと味わえます。

「F4」という数字だけを見て明るいか暗いかを断じることはできませんが、とりあえずこんなシチュエーションでも開放で撮れるのは無邪気に嬉しい。手前のテトラポット、小さく見える船、そして遠くの雲までピシッと気持ちよく写っています。特に水平線近くの雲の感じは思わず見入ってしまいます。

ワイド端の最短付近。もう、すぐそこから大きくボケてくれます。このような場面ではAFからMFに切り替えてピントを合わせることがしばしばありますが、ピントリングを前後にスライドさせるだけで切り替えられるフォーカスクラッチ機構は本当に便利。

---

撮影中に驟雨。日没も近かったので撤収。車に戻って乗り込んだら、雨だというのにこの夕焼けあり。これが最初から分かっていたら場所を考えたのになあ・・・って何が言いたいかというと、最短0.25mステキ！ってことです。

テレ端。ピントが合った花のすぐ後ろからすでに始まっているボケが美しい。よーく見ると、本当に軽いフレアのような、これは「まとわり」とでも呼んだらいいのか、雅（みやび）な滲みがあるのですが、それがこのレンズの写りに上品さを感じる秘密かもしれません。

---

プロはやっぱり侮れない

使い勝手がいい。まさにその一言に尽きます。まず「手にする」という面から言えば、ボディ（今回はLUMIX S5IIx）とのバランスは抜群。構えた時、適度な直径の鏡胴は手のひらが吸い付くようで安定感があります。なるほど、手のひらが吸いついちゃって離れないからフォーカスクラッチ機構なのか！ なんて変な納得をしたり。さらには歩きながら手に持っていても、肩から下げた状態で片手で支えていても、疲れもしなければ邪魔に感じることもない。実際にはこの時間がいちばん長いわけですから大事なことです。・・・というぐらい、まずはこの質量とディメンションに思うところがありました。そして「写り」の使い勝手。16mmと35mmの間を行ったり来たりするのは、実に心地がいい。たまに高倍率ズームで撮ると、採り得る選択肢の広さとドラスティックに変化するファインダー像に頭がくらくらしますが、このぐらいの広角ズームなら2、3カット撮ればもう「広角脳」にセット完了。あとは名作を量産するだけです。そして肝心の画質ですが、それはもうご覧いただいた通り。「PRO」の名に相応しい、妥協のない素晴らしい写りを見せてくれました。キャプションにも書きましたが、一言で表現すれば「上品」。柔らかく、自然で、これみよがしなところがない。F4の広角ズームらしからぬ、大きなボケと立体感。何にしても、プロってやっぱりすごいのです。

( 2023.10.12 )