PHOTO YODOBASHI
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Nikon NIKKOR Z 35mm f/1.4 vol.1 vol.2
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
ニコンZマウント向けに登場したフルサイズセンサー対応の広角単焦点レンズ「NIKKOR Z 35mm f/1.4」のご紹介です。35mmの画角は広角域ながらパースペクティブが控えめで使いやすく、スナップ撮影やポートレート撮影など少し広めの標準レンズとして人気の高い焦点域です。本レンズの全長×最大径と重量は、約74.5×86.5mmに415gと十分コンパクト。一応、同メーカーに既存する「NIKKOR Z 35mm f/1.8S」(約73.0×86.0mm、370g)と比べ僅かに大きく重いですが、開放F1.4の明るさを考慮すればとても軽量でコンパクトといえます。AFにはステッピングモーターを採用し静音で高精度なフォーカシングを実現。さらに価格は他メーカーの同スペック純正レンズに比べおよそ半額と、材料費が高騰しているこの時期にニコンの企業努力が窺えます。そう考えると大変お買い得に感じますが、肝心の写りが気になるところです。そのあたりを確認してまいりましたので、早速作例をご覧ください。
( Photography & Text : Z II )
大口径F1.4の醍醐味は、やはり絞り開放のボケを楽しむことでしょう。これくらいの距離感だと背景はボケ過ぎるほどではなく、柔らかくボケに立体感がある印象です。ピント位置のキレと背景との分離は申し分なく、見せたいところが見事に浮き立っています。
もう少しだけ距離を取ってみても背景に紛れることもなくきれいに分離し、背景の立体感が残るボケ方はとても自然です。
前ボケも変なクセはなく自然な印象です。35mm大口径ゆえの手前ボケとシャープな建物とのコントラストが得られました。
F8まで絞れば、被写界深度が深くなり隅々までシャープな描写が得られます。ハイライトからシャドウそして水面や木々の葉まで細密に描き切っています。
曇天で光線状況が今ひとつな時こそ明るいF1.4の出番です。ピント位置はシャープな描写ですがカリカリするようなことはなく全体的に柔らかな雰囲気です。雲の立体感も相まって夏の湿気を含んだ空気を感じられます。
最短撮影距離は0.27mとかなり寄れるので大きなボケを活かした撮影も可能です。それにしても、ほんとうに自然できれいなボケですね。鶏頭(ケイトウ)の花の柔らかさがより引き立つ写りです。
本レンズの特性である柔らかな描写は人物撮影にも打ってつけです。肌や髪の質感や空気感まで自然に描けています。
素早く静音のAFにより笑顔の瞬間を逃しません。賑やかな店内の雰囲気を残しつつ、背景が柔らかく自然にぼけることで2人の表情が際立っています。テーブルを挟んだ距離感は35mmだと程よいバランスに収まり、会話しながら撮るなんて時にも重宝しそうです。
個性ある写りを味わえる35mm
ご覧いただいたとおり「NIKKOR Z 35mm f/1.4」はキレのある描写やボケに加え、独特の柔らかさを伴った描写を持ち合わせた味わい深いレンズでした。カメラ側の高画素化が進み、それに伴いレンズにも高い描写性能が要求されます。そのためにレンズの収差を抑え込む必要がありました。ニコンはレンズに使用する光学ガラスの高精度化や、各種シミュレータ技術の進歩によりレンズの収差を極限まで抑えることを実現。しかし、収差を抑えた結果どのレンズも写りの次元が高くなるに連れ、その結果似てしまう。つまり個性が薄れてしまうのです。その点「NIKKOR Z 35mm f/1.4」は高い描写性能を維持しながらも収差を消し去るのではなく、収差をコントロールし個性として活かしたレンズに仕上げているように感じました。明るい開放F1.4は低いISO感度設定で適正露出を得やすく手ブレやノイズの面で有効です。また、絞り開放の大きなボケから絞ったシャープな画まで多彩な表現を楽しめます。今回様々なシーンで試してみましたが、特にポートレートで被写体を柔らかく浮き立たせるシーンにおいて本レンズの特性を実感しました。軽量でコンパクトなサイズは、ちょっとしたお出かけにも程よいサイズで付けっぱなしのレンズとしても打ってつけです。「NIKKOR Z 35mm f/1.4」は「よく写る」と「個性」をかけ合わせた、ニコンの新たな表現の提案なのだと確信しました。
( 2024.08.26 )
人物を撮ることが多い方ならこちらがおすすめ。どこかほっとする写りです。私もこちら派。
クルマやバイクなど金属から風景、格好よく撮るならこちら。被写体によってレンズを替えるのって格好いいですよね。
純正フィルターでしっかりと保護しておきましょう。
今回の作例撮影に使用しましたが、コンパクトで大変使いやすいカメラです。
せっかくなら最新モデルという方はこちら。さらに快適な撮影環境が得られます。
ストラップにも個性を見せていきましょう。