PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Nikon NIKKOR Z 35mm f/1.4 vol.1 vol.2
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
NIKKOR Z 35mm f/1.4 の第2弾レポートをお届けします。2回目ということもあって、本レンズの個性というか、クセのようなものをできるだけ見つけたいと思ってスナップに出かけました。ニコンが新製品として出している以上「写らない」なんていうことはないわけですが、Sラインではない本レンズに期待するのは、このレンズらしい「味わい」です。そもそも個性を見つけようと思って写真を撮っていると、ちょっとした緩さも嬉しく感じられるから不思議なものですね。本レンズがみなさまのお好みに合うものかどうか、ご検討の一助となれば幸いです。
( Photography : Z II / Text : Serow )
まずは紅葉を見上げて一枚。ピント面のシャープな描写が見事です。ピント面まで1〜2mという近距離でボケもわかりやすく、F1.4らしい表現が得られました。前後のボケ具合もなだらかで自然ですね。明るくコンパクトなレンズですから口径食は見られますが、玉ボケも印象的に作用していると思います。
少し被写体と距離をおいても、この写り。画面中心部、建物や人物がしっかり際立って見え、生々しいリアリティを感じます。右上に盛大にパープルフリンジが出てしまいましたが、ここは撮り方をもう少し工夫するべきでした。
傾きはじめた太陽と青空のコンディション、開放での撮影でドーンと周辺減光が得られました。とはいえ実際に使っている感覚としては、わりと大人しい印象。周辺減光を喜んでいるのがどうなのかはさておき、本レビューは概ね開放で撮影しておりますので、このあたりもご判断ください。
グッと踏み込めば標準レンズ的に切り取ることもできる。単焦点レンズとはいえ、自分が動けば広角レンズのようにも標準レンズのようにも使えます。35mmの面白さはこんなところにもありますよね。
絞りを変えて撮影。順番にF1.4、F2、F2.8の描写です。ボケ具合や被写界深度の変化がよくわかります。開放では蕩けるような背景が、絞ることで少しずつ輪郭を取り戻していきます。全体的にボケはきれいで、やわらかな印象です。
F4まで絞ると、グッと端正な写りに。コンクリートの表面が画面の隅々までキッチリ描かれています。客観性をもたせるなら絞って、主観的にいくなら開いて、なんていう考え方もできるでしょうか。
結局、光をどう捉えてくれるかなんですよね。繊細に描かれた芝と樹木の落とす影に、ドキリとしました。
はっきりと光の入った逆光シーンでも、破綻なく被写体を描いてくれる描写力。だからこそ表現できるものがあるわけです。
光をうまく拾ってくれるかどうかは、光量の乏しい場面でもよくわかりますね。夜のスナップが楽しくなるレンズです。
絞りとともに変化する写りを楽しみたい
収差を残したレンズではありますが、さすがに現代の最新レンズです。オールドレンズのような写りになるかといえばそんなはずもなく、開放からしっかり写りますし、絞ればキッチリ仕事をしてくれます。写真をはじめたばかりの方なら欠点など感じないかもしれませんし、ベテランの方が「じゃじゃ馬」と思うこともないでしょう。それでも昨今としては古典的な雰囲気を漂わせるレンズであって、これこそが本レンズの魅力です。例えるならいつも真面目な優等生ではなく、時折ルーズなところを見せる愛らしい子。欠点をうまくカバーしたり、癖を味わいと捉えたりしながら付き合うと、愛着のわく1本になるでしょう。ニコンの新しいZ f/1.4シリーズが提示するのは、たぶんそんな経験。絞ることで収差が改善するとか、周辺減光がなくなるとか、そういう当たり前のことを実感しながら撮影していくことは、きっと私たちの財産になるはずです。そもそも収差を欠点のように考えることが適切なのかも含めて、噛み締めていただきたい1本です。
( 2024.10.24 )
重ねて言いますが、ぐるぐるボケみたいなものは期待しないでくださいね。ちゃんと写る、新製品レンズですから。
レンズは防塵防滴にも配慮した設計ですが、さらなる安心のためにはプロテクターをどうぞ。