PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Nikon NIKKOR Z 50mm f/1.4
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
ニコンZマウント(FXフォーマット用)の50mm単焦点レンズは「Nikon NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」 、「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」、「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」の3本がラインアップ。その空白地(F値)を埋めるように今回「NIKKOR Z 50mm f/1.4」が新たに加わりました。昨今のズームレンズの描写には目を見張るものがあり、さほど不満もない中わざわざ単焦点レンズを手にする理由のひとつに“明るさ”があるでしょう。F1.2ほどのドリーミーさは求めずとも、F1.8よりはもう一息ボケ量が欲しい。できることなら気軽に日常使いできるF1.4があったらどれだけ楽しめることかと、心待ちにしていた方も多かったはず。Zマウントの誕生から早いもので6年ですからね。さて、本レンズは“Sレンズ”ではなく“無印”です。同社のキットレンズはバリバリに解像する強者揃いという印象ですが、そこからステップアップの一本として選ばれる筆頭に、明るい“無印”50mm単焦点の存在感がジワジワと増すことは容易に想像がつきます。リーズナブルな一本でありながら、ラインアップにおける顔となる。標準レンズであるが故に担ったある種の重責を、どんな描写で果たしてくれるのか。身近なシーンでスナップしてきましたので、早速見ていきましょう。
( Photography & Text : KIMURAX )
絞り開放です。ピント面に収まった旗の質感描写が生々しいですね、特に白抜きの文字。ピントから外れた文字の毛羽立ちはスッと柔らかくボケているのがわかります。背景にびっしりと連なっていた提灯は大胆にボケていますが、神社というヒントもあり提灯であることはそれとなく想像できるほんのり芯のあるボケです。かなり高コントラストですからね。実は、撮影したのが太陽が一番高い時間ということもあり、いわゆる雰囲気のある写真を撮ろうとしたら避けたい時間帯。光や距離に影響を受けるボケ味にはかなり意地悪な条件です。そのあたりを勘案すれば決して悪くはない、いやむしろ悪条件を巧くいなしなら、柔らかさをキープしています。
フォーカスした手元はキリッと描き出しながらも、どことなく柔らかさを感じさせます。解像感があるに越したことはありませんが、あり過ぎるとポートレートで使うにはちょっと…となることも。その点、本レンズの開放による肌の質感描写は好ましいものです。50mmで人物をフレームする際は、相手との距離はそこそこ近くなるので、ご家族や大切な人にもってこいではないでしょうか。
ふと通りがかった鉄道の高架下でパチリ。ど真ん中のパイプにフォーカスしたのですが、高架や生い茂る蔦の立体感というか奥行きある表現に正直驚きました。なんの変哲もないシーンにも関わらず、なんだか色気みたいなものを感じてしまう写りなのです。あ、いいなと。
硬質な建物のフォルムがキリッとシャープに際立っています。片やシャドーのトーンの連なりは大変スムーズで吸い込まれそうです。絞り開放で“高さ制限3m”の文字にフォーカスしており、手前の植木はそれなりにボケている一方で、奥のビル群は随分と解像しているように感じます。拡大して見ると明らかにボケているのですが、無粋に溶かしてしまうことなく形状がそれとなくわかるレベルに止まっています。そのためか引いて見ると、密度感があるのかも知れません。
では絞った画も見てみましょう。ひとつ前の絞り開放でのカットで遠景に強い印象でしたが、明らかにシャープさが増しているのがわかります。当然と言えば当然ですが、F8まで絞っても線が太くなるようなこともなく繊細な線で隅々まで描き切っているあたりはさすがです。
金属は金属、ゴムはゴム。至極当たり前のことですが、素材の持つ質感がきちんと再現される。そこは外せない、とても大事なことです。
本レンズの最短距離は37cmですからここからもう一息寄れますが、この距離感でも前後のボケ味が良好なことがお分かりになるかと。赤い被写体、特に花などはデジタルカメラが苦手なものですが、実にリアルに再現しています。ピントピークは十分にシャープ。でも硬くなりすぎずにボケとのパワーバランスを上手く保っているように思います。
フォーカスしたのはアップルパイのポスターが入った額縁ですが、そこに施された模様までしっかりキャプチャされているではありませんか。絞り開放からシャープな像を結ぶあたりはZレンズの系統だなと。とはいえどことなく柔らかさを感じさせる品のある描写に惹かれてしまいます。
開放で。絞って。刺さるF1.4の表現力。
“Zレンズ=高画質”が定着しているところに、何やら面白いF1.4シリーズが台頭してきました。その先陣を切ったのが先日レビューをお届けしたばかりの「NIKKOR Z 35mm f/1.4」で、今回の本レンズが第2弾というところでしょうか。個人的な印象を言わせていただくと、開放ではどことなく柔らかく、絞ればシャープさに磨きがかかるというクラシック路線なのかなと。高画質と良画質は必ずしも一致しないわけで、昔のユルイ写りのレンズでも、見るものを圧倒する画力を有するものがありました。解像力やボケ味その他もろもろのファクターによって一枚の写真が成り立っているわけで、そのバランスが重要なのだと。念のため、本レンズの開放での写りが決して甘いわけではありません(作例カットをご覧いただいた通り)。十分にシャープだけれどもキレすぎない、という絶妙なチューニングが施されているように感じました。リーズナブルなレンズだからこうなった、こうせざるを得なかったということではなく、無印F1.4シリーズの描写スタイルはこうだという明確な意思みたいなものをですね。ある意味、キャラが立っている写りですがコアな層にはもちろんのこと、かなり広く受け入れられそうな予感がムンムンします。軽量コンパクトにしてF1.4に期待されるボケ味も上々。キットズームからのステップアップを検討中の方は必ずや手にすることになるでしょうし、もしかするとFマウントユーザーの方々にも刺さるかも知れません。「AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G」や「AI AF Nikkor 50mm f/1.4D」をマウントアダプター経由でお使いの方、いかがですか?
( 2024.09.27 )
明るくてお手頃価格の50mmを待っていたZマウントユーザーの皆様、お待たせいたしました。心行くまでお楽しみください。
傷防止だけじゃない、帯電防止・撥水・防汚。低反射コーティングでレンズ性能を邪魔しない頼もしいフィルターを。