PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
シグマのレンズがいよいよニコンZマウントに参入しました。まず初めに発売されたのが、かねてから他マウント用で人気を博しているコンテンポラリーラインの16mm、30mm、56mmのDC DNレンズ。こちらの3本、APS-Cのイメージサークルを持ち、開放値はいずれもF1.4の大口径。ミラーレスカメラの利点でもあるカメラ内補正を利用することによってコンパクトなレンズを実現しています。他マウント用のレビューをご覧いただいている通り、いずれのレンズも開放からキレのあるメリハリの効いた描写と、ボケの美しさが際立つレンズばかり。この3本で、おおよそシステムとして完成してしまうところも嬉しいポイント。今回はその中で中望遠域を担う56mmをご紹介します。フルサイズ換算で86mm相当の画角となり、人物撮影はもとより物の形も素直に写りやすく、物撮りなどにも適しています。また小型軽量であることから、大きく重たい大口径中望遠レンズより、持ち出す機会は桁違いに増えそう。必然的に撮れるものも多くなり撮り手の世界を広げてくれるでしょう。今回は小旅行に持ち出してみました。手にすると本当に軽いので、この軽さもあって写りへの期待値はそこまで高くはなかったのですが、カジュアルな扱いながら手応えを感じる写りに「やはり良いレンズ」と、何度唸らされたことか。では早速ご覧ください。
( Photography & Text : TA )
少し離れた距離でもご覧の通り。見せたい部分を浮き立たせるような描写は大口径レンズならではです。というのもピント部にキレがあり、良質なボケがあってのこと。アウトフォーカスにも量感が伴います。
50mmに比べると物の形も素直に写りやすいので物撮りにも適しています。大切にしている自転車やバイク、車はもちろん、どんな物にでもレンズを向けてみたくなります。また描写も撮り手に従順。素直な写りに小型軽量も相まって、撮影者が行動を制限されることがありません。引いたり寄ったりと、自由に動き回ってトライアンドエラーを重ねられる楽しさがあります。
背景の大きなボケによってピント面が際立ち視線を誘導できます。この焦点距離にこの明るさがあれば、APS-Cサイズでも積極的にボケを表現として狙えます。腰に負担のかかる中腰だってさらっとこなせちゃいます。
土や草、自転車のパーツの材質など、色の情報だけでなく一つ一つの質感がしっかりと描きわけられています。アウトフォーカスになっている土やコンクリートの湿り気具合まで。それぞれの時間が描かれている。良いですね。
距離に関わらず開放から安定した写りを見せます。遠景はちょっと、、絞れば、、なんて、そんな野暮なことは言いません。なんてったってシグマですから。撮影が目的でない旅先では、撮影は二の次三の次。そんな肩の力が抜けたカジュアルな撮影でも、きちんと結果をもたらしてくれます。
冒頭のほうで「描写が素直で撮り手に従順」と申しあげましたが、前後のボケ質が素直なのでとても扱いやすく、存分に開放撮影を堪能できます。色再現はあくまでもナチュラル。どこまでも撮り手に寄り添った描写を楽しむことができます。扱いに手をやくことがなく、その上この焦点距離と明るさで、写真の腕が上がったような気分にさせてくれるレンズです。
こんなフレーミングだって、難なく。
もちろんバイクだって。
椅子に腰掛けていた時に、ずんずんと近づいてきた猫ちゃん。夜、蛍光灯下という撮影環境は褒められたものではありませんでしたが、ご覧の通りの写り。AFがスパッと決まってくれたので撮れたようなものです。ほぼ最短50cm付近で捉えています。
手に馴染むF1.4中望遠
いかがでしたか？他マウント用にはなりますが、この56mmのDC DNレンズが発売されてから、もう何年経つでしょう。5年くらいでしょうか。他マウント用に広くリプレイスされ続けている息の長いプロダクトであることからもわかる通り、アートラインにも見劣りしない写りであり、いずれもF1.4の明るいレンズであること。それを小型・軽量なレンズで実現していることがどれだけ稀有な存在かというのを体現しています。おまけにAFが使えます。「やはり良い」と、実際に使っていて何度もしみじみとしてしまいました。冒頭でも申しあげました通り、人物撮影はもとより物撮りなどにも適しています。こんなレンズですから中望遠スナップも楽しいでしょう。持ち出しやすいので必然的に撮れるものも多くなり、撮り手の世界を広げてくれると思います。APS-Cユーザーはもちろんのこと、フルサイズをお持ちの方にも試していただきたい1本です。
( 2023.05.12 )
小型軽量で持ち出しやすく、撮り手の世界を広げてくれる大口径F1.4中望遠。APS-Cユーザーはもちろん、フルサイズユーザーにもぜひ。
高性能保護フィルターを付けて、使い倒してください。