PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
TAMRON 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD Model A067
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
ニコンZマウント向けのレンズを意欲的に拡充しているタムロンから、その5本目となる「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD(Model A67)」がラインアップに加わりました。2年前にフォトヨドバシでレビューお届けしているソニーEマウント用のマウント違いということになります。諸収差を抑えるために、特殊低分散レンズ、異常低分散レンズ、ガラスモールド非球面レンズ、複合非球面レンズといった特殊硝材を贅沢に注ぎ込んだ18群24枚構成。守備範囲の広い8倍ズームながらワイド端からテレ端までよく写るレンズだということは、先のレビューをご覧になった方ならすでにご存じのはず。そして新たに展開されたZマウント版でも変わらぬ好描写が得られるのかどうか気になるところ。アウトプットはもちろん、AFや手振れ補正といった撮影プロセスにおける挙動も重要ですから確認してきました。では早速、その実力の程をご覧いただきましょう。
( Photography & Text : KIMURAX )
テレ端400mmまで届く超望遠ズームながらワイド端は50mmまでカバーするという所がウリのレンズです。まずは50mmの写りはどうなのか見ていきましょう。えっ、いきなり遠景かよって感じも否めませんがね。こちら絞り開放から十分に解像しているのが分かります。画面をクリックして等倍でご覧になってみてください。開放でここまでディテールをあぶり出すとは驚きです。撮影時には気づいていなかったのですが、上空にヘリコプターが通過していました。そのフォルムもきちっと描き込んでおり、ワイド端はよく写るレベルではなく、かなりよく写る。むしろ余裕すら感じさせるものがあります。
本レンズの最短撮影距離はワイド端:0.25m、テレ端:1.5m。ワイド側(50~70mm)ではハーフマクロ撮影ができます。こちらのカットは50mm、最短での撮影です。寄り切っても収差の類は見られず、雨雫にも変な色付きもないですね。背景のボケもしっとり柔らかで、なかなか芸達者なズームレンズだなと感心します。
それではテレ端の画を見ていきましょう。400mmともなると大抵のものは引き寄せられます。何なら物と物の合間を縫って射抜くこともお手の物。フォーカスしたのはクルマのボンネットのエンブレムですが、キリッとクリアに描写しています。手前の信号機のフードは大きくボケ、フォーカスから外れているスクーターもほんのりボケており、ボケ味は前後共に素直な傾向です。
同じくテレ端での撮影です。フォーカスした本や手がスッと浮かび上がってくるような写りですね。手元までの距離は4~5mほどあったと思います。フレーム中央で捉えた文庫本、その中の文字をどこまで描けているのか、画面をクリックして等倍の画像でご確認ください。百聞は一見に如かずとはまさにこのことでしょう。ピント面上の文字は曖昧になることなく判読できるレベルでシャキッとキャプチャしているではありませんか。シャッタースピードは1/25秒。手振れ補正の効果も上々であることがお分かりいただけるかと。念のため書いておきますが、絞り開放のカットです。恐れ入ります。
守備範囲の広いレンズですから中間域の描写も見てみましょう。こちらは90mm付近での撮影。飲み物やガラスの透明感や質感までもが伝わってきそうなクリアな画です。そして何といっても色味がいいですね。
200mmになりますがカラスの表情といい、羽や艶々した足まで見事に再現しています。枝周りを見ても、フリンジは皆無です。
さあ、300mです。しかも逆光。がっつり太陽を入れた割には思いのほか破綻することもなく、花びらから葉まできちんとトレースしています。これまたフリンジは見当たらず、背景の枝葉は煩くならずに、まるで光の中に溶け込んでいるようです。眩しさをきちんと感じさせながら、ゴーストは軽微と言っていいレベル。レンズ構成もさることながらコーティングがかなり効いていることが推察されます。
AFは様々なシーンで素早く反応し確実に捉えてくれるのでテンポよく撮影が進みます。これだけ解像感がしっかりありながらも、肌の描写はほんのり柔らかさを感じさせる好ましいものです。このあたりにタムロンのレンズらしさが光ります。それにしても超望遠400mmともなると圧縮効果が半端ないですね。
欲しいズーム域を、欲しい描写性能で。
ズーム倍率8倍ながら呆れるほどによく写るレンズでした。両ズーム端においても絞り開放から結像性能がこれだけ高いのですから、ホント文句のつけようがありません。AFの応答性もキビキビしており、動きものでもまったく心配がありませんでした。以前、本レンズの開発者の方にインタビューした際に、開発のきっかけを伺ったことがあります。「運動会で集合写真まで一本で撮れるズームレンズ」が発端だとのこと。あー、仲のいい友達とのツーショットや集合写真の時は、妻のスマホに任せてたよな。お陰でこちらはレンズ交換不要! 土埃も舞う校庭では、交換はできるだけ避けたいですからね。超望遠から50mmまで使えれば、確かに便利だよな~と大きく頷きながら聞き入っていたことを記憶しています。400mmまで届くズームと言えば100mmスタートという相場観が根付いていた所に、欲しいもの・求められるモノをカタチにするという意欲と柔軟さ。しかもズーム端の開放からビシッと解像する性能へのこだわりに頭が下がります。これ一本さえあれば事足りてしまう。ズームレンズの理想のひとつです。「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD(Model A67)」を買って荷物は最小限にしてお出かけください。
( 2024.10.10 )
ズーム全域に渡ってシャープな像を結ぶ頼れる超望遠ズームレンズ。ワイド側では最大撮影倍率1:2のハーフマクロ撮影もできてしまう芸達者な一本です。
業界最高レベルの性能、片面反射率0.1%を達成した超低反射ULCコートを採用。保護フィルターにも上には上があるのですね。