PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited vol.1 vol.2

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

最新型のフィルムカメラ「PENTAX 17」を試写して、最新レンズのフィルムにおける高い描写力に驚きました。私の手元には、PENTAX MXという1976年発売のフィルムカメラがあるのですが、現行のレンズでフィルム撮影したらどういう写りを見せてくれるのか、新たな興味が湧きました。今、フィルムカメラにアダプター無しでマウントできるレンズをラインアップしている大手メーカーは、ペンタックスとライカくらいでしょう。ペンタックス一眼レフ用レンズで絞りリングを備えた現行品は、3本のリミテッドレンズ(31mm、43mm、77mm)、HD PENTAX-FA 35mmF2、HD PENTAX-FA 50mmF1.4、smc PENTAX-FA 50mmF1.4 Classic、D FA MACRO 50mmF2.8あたりに限られますが、今となっては存在するだけでも奇跡です。いずれも基本設計はイチナナの「HD PENTAX HF 25mmF3.5 Traditional」(正式な表記法は見つからず)よりも古いので、フェアな比較をするには条件が整い切っていません。ただ、同じく手元にある「HD PENTAX-FA43mmF1.9 Limited」がフィルムでどんな写りを見せてくれるのか、ちょっと試してみたくなりました。ちょうど、昔お世話になった人に20年以上ぶりに会いに函館を訪れるタイミングで、撮影機材はMXと43mmの組み合わせに絞りました。デジタル機器はスマートフォンだけです。通常のVol.2とは少し趣が異なりますが、どうぞご覧ください。

( Photography & Text : TAK )

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

MXはとてもコンパクトで、軍艦部両肩に至ってはM型ライカよりも2cmくらい低いんですよ。流石にペンタプリズム山頂は高くなりますが、それでも5mmほどです。幅は同じくらいですかね。当時「世界最小一眼レフ」を謳っていたのもわかります。フィルムは安定のPROVIA 100Fです。それにしても函館は曇りが似合います。魚の干物というか昆布というか、少し湿気があったからかもしれませんが、濃厚な潮の香りが直行便で鼻腔へ入ってきます。世話になった方と朝の漁港にイカを買いに行って、塩辛を作ったことも思い出しました。イカの漁獲量も以前と比べて減っているようで、最近ではブリも売っているそうです(函館の方はあまり食べ慣れていないご様子でしたが)。もちろん函館名物イカ踊りのほうは健在。あの当時、ふんどし姿で港まつりの神輿に参加したことも良き思い出です。

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

湯の川の旅館にて。読み物も端末の記事はやめて、文庫本を一冊持ってきました。この時はメキシコ旅のセクションを読んでいたと思います。そろそろレンズの話をしましょう。少し絞って撮った記憶がありますが、当然ピント部はちゃんと解像しています。ただ、シャープもトーンも両方主役といった印象です(個人的感覚)。ここで思い出すのは、中判カメラ用のレンズが35mm用よりも階調重視で設計されることが多いということです。一般的にフォーマットが大きくなるほど粒子や画素数に余裕があり、解像度はもちろん階調もよりスムーズに表現できます。5000万画素のシャープな画を見た後に1億画素をその延長路線として期待すると意外にもリッチな階調の方に目が行く、といった話もよく耳にします。同じ現象を今見ているのではないか?と思いました。イチナナが出てくるまでは考えもしなかったことですが。

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

市電のホームの構造物にカメラを置いて、「指圧」にてバルブ撮影を行いました。2秒ほど押しっぱなしにしていたかと思いますが、はっきりとは覚えていません。レリーズケーブル(もちろんアナログ式)の必要性も感じたので翌日最寄りのお店で買いましたが、結局その後は使いませんでした。人生そんなものです。少し前の話ですが、別の地方の店でしたが若そうな店員さんにレリーズケーブルが無いか尋ねると、メーカーは?と聞かれたことがあります。そりゃ、見たことがない世代もいますよね。同社デジタル一眼レフ用の「ケーブルスイッチ」を使うイチナナも現代っ子ですし。さて、写りの方ですが、こちらのカットだと結構シャープな印象ですね。絞り込んでいますし、日中と違って強烈な光が存在しないからかもしれませんが、smcの頃と比較してもやはり収差が抑えられている分確かにシャープになっていると感じます。31mmとかならもっと切れるんじゃないでしょうか。

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

あ、こんな駅もあったなと思い出しつつしみじみと市電に乗りました。支払い方法は最新型で助かりました。揺れ、音、加速、軌道、車内放送など全てが懐かしいのですが、久しぶりに見ると全く違った景色にも見えてくるので不思議です。車内の空気感からも階調の豊かさを感じます。

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

漁火輝く津軽海峡。こちらも勘露出でバルブ撮影です。この空と海の調子、粒子でしか出せないでしょう。


PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

函館駅に素敵な国鉄急行色のキハ40が。鉄と塗りのマテリアル感がものすごいですが、デジタルだともう少し悩みのない感じになるでしょうか。デジタルほどのヌケはないフィルムだからこそ、このぼってり感が再現できるのかもしれません。

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

前の写真とは別の運行でしたが、同じ車両に飛び乗りました。気動車の旅は格別。音も振動も臭いも全てがごちそうです。ベテラン車両にもいつまで乗れるかわかりませんので、乗れる時に乗っておくのが正解。ただこの車両のクロスシートはピカピカにメンテナンスされていて、座り心地も快適でした。まだまだ頑張ってくれそうですね。

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

上磯駅で折り返しということで、降りることに。発地の函館駅では交通系ICカードでピッと改札をスマートに通過できたのですが、ここではそれができず、車掌さんが処理をしてくださいました。本当に親切な方で、周辺で食事できるところなどを土地の言葉で色々と教えてもらいました。この車両を見て行き先も決めずに思わず乗ったことを伝えると、とても喜んでくださいました。いつも安全運行、ありがとうございます。

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

階段を降りた後、ハセガワストアに行き、まだ午前11時も回ってなかったのにお約束の「やきとり弁当」を店内にて食しました。ご存知の方も多いかと思いますが、つまり豚肉ですね(北海道で「やきとり」は豚)。オンデマンドで焼いてくれるので本当にうまいんですよ。ドリンクは相性を無視して「カツゲン」。旅は「Go local.」であります。

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

今回の旅はほぼノープランで、観光的要素もゼロでした。気の向くままに歩き回ったのですが、何度か行ったことのある喫茶店の前に偶然辿り着いた時は驚きました。素敵な店には素敵なお客さんがいらっしゃいます。函館も予想以上に暑かったのでアイスコーヒーを美味しくいただきました。本当はもっと坂を上がってソフトクリームを食べる予定でしたが、雨が降ってきたので予定を変更したのです。私がカメラを持つとまず太陽が引っ込むという私的マーフィーの法則があるのですが、今思えば雨がこの喫茶店に導いてくれたのかもしれません。

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

センサーではなくフィルムということもあってか、フリンジが全くと言って良いほど認められません。デジタルで使うとパープルフリンジが多少認められるのですが、ここはテレセントリック性などを気にしなくてもよいフィルムの寛容性がプラスに作用しています。もう一つ気がついたのは、イチナナのヌケが素晴らしいということです。ここでイチナナの話を声高にしても仕方がないのですが、本レンズのヌケが足りないということではなくて、あくまでイチナナがずば抜けているのです。この辺りは構成枚数の差が出ているのかもしれませんね。この日はたまたま函館港まつりの日でした。もう少し静かな旅をしたかったのですが、祭自体は昭和初期の大火からの復興加速を由来としているので、大切な行事です。令和の今、来場する方々の表情からそれを感じることはできませんでしたが、みんな笑っていられることに今一度感謝したいものです。

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

こんなことまでしてくれるのは、日本の整備会社くらいでしょう。私も手を振ることにしています。何事も「当たり前」なんてことはひとつもありません。ありがとうございます。

PENTAX MX, HD PENTAX-FA43mmF1,9 Limited, FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

美しく深みのある階調。本レンズはフィルムの組み合わせも最高ですね。


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ポストイチナナにおける、解像と階調のバランスという新解釈

繰り返しますが、絞りリング搭載で様々なクラシックカメラでもフルに使える現行レンズ、という時点で貴重な存在です。イチナナ体験後の状態を「ポストイチナナ」と名付けた上で、その新たな視点に立って写りを評するならば、解像力と階調再現のバランスに優れたレンズです。フリンジの面でもフィルムとの相性が良いので、まだの方はフィルムでもぜひ撮ってみてください。コンパクトでクラシックなデザインの鏡胴は小型のクラシックカメラにもぴったりで、旅の最高の相棒になってくれるはず。ピントリングが少し細めで初めは指が迷いますが、すぐ慣れます。「Film Camera Project」が始まりイチナナという面白い比較対象が出て来てくれました。そしてこれからも色んなカメラがレンズが出て来た時、このレンズの評価もより重層的になり、使い方にも変化が生じるかもしれません。いずれにしても楽しみです。

ほとんど旅行記のようにもなってしまいましたが、ついでにもう一つだけエピソードを。その世話になった方がとても素敵で痛快な方なのですが、久々の訪問後こう言うではありませんか。

「あ〜たカメラマンになったんでしょ。じゃ私の遺影を撮ってよ。」
「イ、イエイ?Funeralの遺影?」
「そう。私と旦那と、で後から姉夫婦も来るから4人分。」
「いや今回さ、フィルムカメラなのよ。フィルムはポジフィルムって言って、、、」
「そんなこと知らないわよ。いいからとにかく撮ってよ。」

そしていざ撮影開始。ISO 100、曇天の午後の4時過ぎ、しかも北海道、三脚無し、こんなことなら77mmやポートラも(以下略)。泣きそうなコンディションですが、世の中の99.9%の人には関係ありません。レフ板を作ろうとも思いましたが、撮れなかったらまたデジカメ持ってくれば良いだろうと妙な保険をかけ、とにかく庭に出ていただいてF4.5あたりの1/30秒で望みます。しょっちゅう目をつぶる方もいるので、各自3カットずつ、世間話をしながら撮影。笑う理由もなく「笑って」なんてことは言いません。手ブレを警戒して横位置のまま、少し引き気味に撮って後でトリミング前提で望みましたが、今までこれほど緊張した撮影はありませんでした。そしてお茶だけのつもりが、そのままご自宅でジンギスカンをご馳走になり、当時も世話になりっぱなしだったのに今回もまた世話になって、、、私の成長しなさ加減も相当なものです。後日現像の上がりを見たらちゃんと写っていたので、安心しました。デジタルだとはるかにスムーズにたくさん撮れたと思うのですが、ここまで「一写入魂」にはならなかったでしょう。この体験は強烈に頭に刻まれていて、今回の一番の思い出となりました。フィルムってやっぱりいいですね。

( 2024.09.05 )

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やっぱり球面は佳いですなあ。余韻を愉しむ旅にもぴったりです。

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シャンパンゴールドに近く、往年の一眼レフのシルバーとは若干異なります。

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フィルターを装着したら、その上からフードをねじ込みます。

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どんどん使えば、業界も再び盛り上がります。

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北海道民の定番の一つ。これで作るチャーハンも絶品。

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平らなプレートでやる方も多いです。

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お腹空いてきました。

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「sheep」は単複同形名詞。どうせ集団だから同じでいい、なんてことはなく、一頭一頭個性があります。メェ〜!

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まだ作ってくださっているだけで、ありがたや。

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地方出身者が「汽車は何時に来ますか」と聞いても、「電車は来ますけど汽車は来ません」と答える勿れ。逆もまた然りでございます。

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