PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Nikon NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
本レンズは位相フレネル(PF)レンズを採用した、2本目のNIKKOR Zレンズとなります(1本目はNIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S)。特殊なPFレンズを使ってレンズ枚数を減らすことによって、高い描写性能を損なうことなく小型軽量化したという、夢のようなレンズです。600mmの単焦点でありながら重量が1390g(三脚座除く)、全長も278mmとクラス越えの収まりの良さを実現。ちなみに同じ焦点距離を持つ天下のロクヨン(NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S)は、重量約3260g、全長437mmです。格段にコンパクトな本レンズなら手持ち撮影だって余裕で行けてしまうのです。600mmというと、野鳥など遠方の被写体を大きく捉えるためには持っておきたい、いわば「超望遠の標準レンズ」的存在とも言えます。天候や地形など様々な状況で被写体を探し回る中で、軽快に持ち歩ける本レンズの有難さは撮る前から身に染みます。肝心な写り、AF、手ブレ補正などはどうなのか。ただでさえよく写るNIKKOR Z、しかもS-Lineです。大いに期待していきましょう。
( Photography & Text : TAK )
鋭い切れ味、コントラスト、微妙な階調の再現。まさにS-Lineの写りです。つい先日「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」を担当したばかりでその出来の良さに感動していたところですが、本レンズは解像性能もAFもさらに上を行っている印象です。都市部とは違って自然溢れる郊外の野鳥は警戒心が強いので、大型の鳥でもすぐに逃げます。しかし強烈な引き寄せパワーを持つ600mmなら問題ありません。背景は当然ロクヨンほどはボケませんが、被写体を浮かび上がらせるには十分以上のボケ量です。
こちらはカイツブリ。全長26cmの可愛らしい水鳥で、危険を察知すると「弁足」と呼ばれる水かきのような足で水面を滑走し、時には飛び立ちます。このシーン、並の機材だとAFが追いつかないので、出現位置を予測して置きピンで狙うことになります。それが本レンズとZ 8の組み合わせでは、レンズを向けてからでもAFが瞬時に捕捉し、易々と捉えることができました。機材の性能に助けられるとはまさにこのことで、F6.3でAF大丈夫かな?と少しだけ心配もしていましたが、全くの杞憂でした。
水生植物に浮かんだ羽根にピントを合わせています。先鋭度は極めて高く、捉えられた被写体の詳細を余すことなく伝えてくれます。前後のボケも十分にスムーズですね。距離によっては玉ボケに多少のクセが出ているようです。
望遠レンズって実は縦位置も面白いと思っています。手前から遠景までレイヤーのように折り重なる世界が、パラレルワールドのように同時進行している様子が表現しやすいからかもしれません。大きなレンズだと縦位置に構えるのさえ大変です。それが本レンズでは現実的な選択肢となります。ただ、現場では少し絞るために自転車のハンドルにレンズを置いて保険をかけました。それでもぶれやすい焦点距離なのは確かで、1/40秒で止められたのは強力な手ブレ補正のおかげと言わざるを得ません。F8に絞っても前後はぼけて距離感の違いが出ます。このピントの薄さも超望遠の面白さです。
もう一枚、縦位置で歓楽街を捉えてみました。強烈な圧縮効果で、様々な思いが凝縮されているかのようです。このサイズ感だと手持ちスナップもいけちゃいます。取り回し的には、これまたコンパクトでよく写るNIKKOR Z 400mm f/4.5 VR Sを使っているような感覚です。
それにしてもシャープですね。フリンジも皆無。この距離では玉ボケも自然です。
600mmは鉄道に多用する焦点距離ではありませんが、流し撮りを試してみました。50mmなどでは1歩の違いが画角に大きな変化をもたらしますが、600mmとなると田んぼ「3反」くらいでやっと画角の違いを感じ始めます。被写体までの距離は150mくらいでした。それでも1両すら収めきれませんので、一部を大きく捉えるアプローチになります。AFは何の問題もなく被写体を認識、余裕で追従してくれました。手ブレ補正機能を「SPORT」に切り換えると連写時にファインダー像が安定するので、より追いかけやすくなります。ブラックアウトフリーのReal-Live Viewfinderのおかげもあってか、レンジファインダーで追っているかのようなスムーズさでした。2024年3月から、特急「サンダーバード」は北陸新幹線の金沢敦賀間延伸開業に合わせて、大阪-敦賀間での運行となります。雷鳥は福井では絶滅したと考えられているようですが、、、(笑)。
白飛びを抑える露出で撮り、トーンカーブを持ち上げています。金属の質感、朝日を浴びた面の塗装具合、パンタグラフや架線等の細かな描写、まさにS-Lineの底力ですね。脱炭素化が進みドライバー不足が現実となる中、1人の運転士で長距離大量輸送が可能で環境にも優しい鉄道貨物輸送が、再注目されています。今夜はカレーライスですか?スーパーで玉ねぎを買う時、段ボール箱に「北見産」と書いてありませんでしたか?それはきっと北海道北見発の「タマネギ列車」が運んできてくれたに違いありません。
軽くてキレッキレ。600mmの新たなチョイス。
このサイズ感、もはや大三元の70-200mmに近いのではないでしょうか。またまた欲しくなるレンズが、1本増えてしまいました。「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VRも600mm時はF6.3だけど、どう違うの?」「NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR Sにテレコン付けるのはどうなの?」 そんな声もあるかと思います。
前者については、特に解像力と携帯性では本レンズに軍配が上がります。理由はポジションの違いです。180-600mmは「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」の後継的存在であり、超望遠ズームの世界を多くの人に楽しんでいただくためにコストパフォーマンスにも力を入れたレンズです。一方本レンズは、コンパクトであるにもかかわらず動物など近寄りがたい被写体を確実に捉えられる、全く新しいタイプの600mmです。PFレンズを用いた他のレンズ同様、超望遠撮影を一層身近なものとし、決定的瞬間を軽快に切り取ってくれるに違いありません。後者の400mmに関してはS-Line同士の比較となります。1.4xテレコンであれば560mm F6.3の状態になり、焦点距離こそ600mmには届かないものの、テレコンを外せば400mmに「引ける」メリットがありますし、被写体によっては最短撮影距離がより短い400mmを選ぶかもしれません。ただ結局560mmの状態で遠くを撮ることになるかなあという方、本レンズがベストです。もちろんロクヨンという絶対的存在もあります。ザハトラー級のビデオ雲台に据えられた大砲、後光が差しております。ただ、本レンズだって切れ味は全く引けを取りませんし、様々な負荷を抑え機動的に撮り回れることはロクヨンには真似のできない大きな強みです。今回は時間の関係でそこら辺にいる野鳥を撮りましたが、少し珍しい種類になると会える保証すらありませんから。
決してお安くはないことは認めますが、ロクヨンユーザーはもちろん600mmの導入をお考えの方も大いに気になる存在ではないでしょうか。脳内のビッグデータを解析してみてください。「600mm」「出来るだけ軽く」「とにかくよく写る」あたりが抽出されたら、答えはひとつです。
( 2023.11.14 )
600mmで小型軽量という魅惑の選択肢。お気持ちの冷めやらぬうちに、思いを指先にのせましょう。
保護フィルターは、帯電防止コートを新たに採用した最新型のARCREST IIをお買い求めください。ポイントでど〜んとお釣りが来ます。
もちろんテレコンバーターも使用可能です。こちらを装着すれば840mmになります。
2倍テレコンなら1200mmに拡大します。