PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Nikon NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
か、軽い、、、。400mm単焦点が1245g。三脚座を取り外せば1160gです。一日中振り回せる革新的な超望遠レンズ、NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S が登場しました。今年はじめに公開されたシルエットでは、400mmまでをカバーする望遠ズーム「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」とほぼ同じサイズ感でした。「NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S 」との棲み分けも考えるとF4辺りになるのかなと想像はしていましたが、いざ実物を手にすると全長234.5mmという数字以上にコンパクトに感じます。しかも高さ35cmほど(内寸)のリュックにボディもフードもついた状態で入ってしまいましたからね。あまりの軽快さに冒頭から少々興奮気味です。以下、作例を交えてご紹介いたします。
( Photography & Text : TAK )
400mmでスナップ?意外に思われる方もおられるかもしれませんが、この身軽さなら余裕でこなせます。ロケ開始直後のカットですが、シルバーの傘の浮き上がり方にゾクっときてしまいまして、早くもKOされました。ボケの量はF4.5のそれですが、やはりピントのキレが抜群で貼り絵のように背景から浮き上がって見えます。傘の陰影も見事でそこだけでもずっと見ていたくなるような画力を感じます。
4車線道路の反対側から撮影しました。背景までの距離があると流石にボケも大きくなり、柔らかく量感もあり好感が持てます。輪郭に濁りが認められないのも嬉しいですね。そしてこのピント。麦わら帽子の感触がここからでもリアルに想像できますよね。ヌケ、コントラストの良さもまさに単焦点ならではです。どこをとってもさすがはS-Lineといったところで、とにかくよく写ります。
3年ぶりの祇園祭山鉾巡行の模様を、少し離れたところから狙いました。鉾全体をピント深度内に収めるために1段絞ってみましたが、見事な分離、立体感を保ちつつ、ボケは柔らかいままです。妙なクセがなく使いやすいと感じます。
高い機動力と俊敏なAFは街頭スナップの強い味方です。400mmならではの強烈な圧縮効果とあいまって、いつもとは違った世界を描き出すことができます。一級品の単焦点超望遠なのに気軽に使えてしまう。このギャップがたまりません。今や400mmはズームにも含まれる焦点距離ですが、この軽さであれば「足ズーム」だってできてしまうわけです。ズーム操作をスルーできる分即応性も高まるのですから、望遠ズームのテレ側を中心にお使いの方にもおすすめします。
飛行機撮影にもトライしてみました。世の常と申しますか、撮影日に限って雨だったのですが、水煙やベイパーなど雨の日ならではの面白さがあります。本レンズは防滴仕様、カメラもZ 9ということで、屋根付きのホームポイントで待機>離着陸時に撮影ポイントまでダッシュ&撮影>ダッシュでホームポイントに帰還&タオルで拭き拭き、というアプローチを取りました。こんな作戦、そもそも機材が身軽でタフでなければ考えもつきません。言うまでもなく、レンズもボディもピンピンしていました。この信頼性こそニコンなんですよね。ニコンだから「行ける!」と思えるのです。ずぶ濡れでブルッと来ていたのは撮影者本人だけでした。
ポジション次第ですが、飛行機に400mm単焦点は近過ぎることもあります。かといって全体を入れるために距離を取ると、テイクオフなど撮りたいシーンを撮りたいアングルで撮れなかったり。そんな時は、画角を変えられないことを逆手にとって大胆に切り取るのも一つの方法です。轟音を立て水煙を上げながら力強く飛び立っていく様は何度見ても感動しますね。描写力についてはご覧の通りで言葉を並べる必要すら感じないのですが、これほどの高画質で再現されると感動が一層リアルに蘇ります。また、このコントラストの低い状況でも、AFは全く根を上げることなく高い精度で追従し続けてくれました。離陸後雲の中に消えてしまう飛行機にさえ、消える瞬間まで合焦し続けていましたからね。
最短撮影距離は2.5mと「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」に比べると長いのですが、400mmの単焦点としてはごくごく標準的な数字です。マクロ的にというよりは遠くの被写体を引き寄せる使い方が多くなると思いますが、近づけば逃げてしまうような被写体には特に有効です。この距離からでもボケは大きく被写体はしっかりと分離されていますので、しっかりと視線を誘導することができます。
遠景も開放からクッキリ解像してくれます。曇天でもコントラストは十分ですね。さすがはS-Line、頼もしい限りです。
今年の夏も暑うございます。熱中症対策をお忘れなく。
ウェッウェッ。
訳:400mmは小鳥などにはちょっと短いかもしれませんが、Z 9やZ 7ならDXクロップ(APS-Cサイズ)で600mm相当になりますし、画素数も1900万画素超とほぼD500の感覚で使えますよ。なお、こちらはFX(フルサイズ)での撮影です。
1枚目に登場した「ゴイサギ」という鳥(全長約60cm)を動画にも収めてみました(音声あり)。手持ちです。たまたまかなり近くまで来てサービスしてくれましたが、AFにとってはかなりタフなテストになりました。この近距離での、認識、追従は御の字でしょう。手ブレ補正も頼もしい限りで、5.5段という数値以上に強力に感じます。カメラに正面顔を見せた時なんかビターッと止まってくれまして、「あの時三脚使ってなかったよね?」と自問しましたからね。あと、しつこいようですがコンパクトさに助けられた話を。この時はリュックに入れて自転車移動しながら撮影していました。ゴイサギさんはご自身の都合で時々対岸に飛んでいきます。その度に私はゴイサギさんの着地点を確認し、「そこでじっとしててね」と祈りつつちょっと離れた橋を渡って対岸の着地点付近に向かうわけですが、レンズが巨大だったらこんな撮り方はできなかったでしょう。最後にもう一つ。ゴイちゃん、時々ズルッと滑るんです。可愛いのなんのって。
撮影領域を一気に広げる、身軽な「ヨンヨンゴ」。
本レンズを一言で形容するなら、「撮り歩ける400mm」。絶対値としての重さはあるものの、ズームでは得られない明るさを持った超望遠レンズとしては例外的とも言える身軽さで連続撮影時間が伸びます。今回はフラッグシップ機Z 9での撮影でしたが、重量バランスも絶妙で特に重いとは感じませんでしたし、これなら一般的な望遠ズームなどと同じような感覚で撮り歩くことができるなと思いました。写りに関してもS-Lineの名に恥じぬトップクオリティで、ヨンニッパとの違いは開放F値、それに起因するボケ質と量くらいでしょう。両者の最大の違いは用途です。ヨンニッパなら撮影ポイントを固定し狙いを定めていざ!というアプローチになるでしょうし、室内のスポーツ競技などでISO感度を少しでも低く抑えつつシャッター速度を稼ぎたい場合は迷わずヨンニッパを選ぶでしょう。ただ、そこまで限定されたシーンではなく、もっと色んな状況で被写体をグッと引き寄せつつズームでは得られないキレとボケをお望みなら、本レンズをおすすめします。いや、たとえ2本ともお持ちでも、こちらはコンパクトなので何かと活躍の機会が多いのではないでしょうか。動物や乗り物はもちろん、スナップでも超望遠が欲しくなる時は割とありますよね。そこに絶妙な匙加減の400mmがあったら、、、あとはご想像にお任せします。
( 2022.07.28 )
ヨンニッパが「ハレ」なら、こちらは「ケのハレ」。普段使いできるトップクオリティをぜひお迎えください。
活躍の機会が多いレンズです。前玉保護をお忘れなく。
パフォーマンス、信頼性、ルックス、そして意外な軽さ。全てに惚れ惚れしてしまうZの親分です。それでこのお値段。ニコンの良心の塊のようなカメラです。
いっそのこと、「ハレ」もいかがでしょうか。