PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Nikon F6
AI Nikkor 50mm f/1.2S
防湿ケースに眠っているフィルムカメラは中判、135判とあったのですが、何れもすぐに使える状態になく、特集用のフィルムカメラをどうしようかと悩んでいたところ、なんとNikon F6 と AI Nikkor 50mm f/1.2S を貸していただけるという幸運が巡ってきました。AI Nikkor 50mm f/1.2Sは1981年に発売されてから今もなお新品で手に入るレンズですが、発売された年を考えると立派なオールドレンズ。そのレンズが今なお新品で買えるのは素晴らしいことで、それだけで価値を感じてしまうレンズです。AI-SレンズということもありF6の機能に制約がかかってしまうものの、Nikon F6は1/8000シャッターが使えたり本来優れたAFパフォーマンスを搭載しているハイパーフィルムカメラボディーで、こちらも現行機種です。装填するフィルムは、出たばかりのACROS IIと組み合わせるという観点からも何となく「強そう」ではありませんか。
初めての機材でフィルム撮影ということもあり、Nikon F6の「露出の癖」は、撮影前に実際にシミュレーションして頭に入れておきました。レンズの描写はPYの作例でチェック。笑。やはり、この組み合わせ面白そうです。早速足取り軽く撮影に向かいました。撮影は絞り優先AEで。シーンに応じてマイナス0.7からプラス1くらいまでの間で露出補正をし、中央で測光、それからマニュアル露出で露出を詰め、親指でAEロックしながら再度フレーム決めとピント送り、、とやるのですが、私の手にはF6は少々大きく、意図せず途中でシャッターが切れてしまったということがありました。そういうときに限って自動巻き上げが幸いして連写していたり。慣れてきたフィルム後半にはそのようなことはありませんでしたが、フィルム前半のうちの数カットはそんな理由で撮影されたものもあります。笑。「やってしまった」と思うのですが、なぜかそんな状況すら愛おしいのです。不思議です。新しい玩具を手にして嬉々としている子供のようだったかもしれません。
撮影前から機材の特性を活かして大いに遊びたい。機材の限界を確かめてみたいといった超個人的な事由から、撮影は守りよりも攻めで行こうと決めていました。おかげで仕上がりを見るのが怖いような楽しみなような。上がってきたフィルムをみると、中にはモノクロフィルムならではの良さを感じるカットもあり、フィルムでたわいのない日常を撮りためていったら日々が楽しくなるだろうなと、この特集を機にプライベートでのフィルム撮影を現在進行形で楽しんでいます。「今更」とも思うのです。昔に比べるとフィルムを続けるのはハードルが高くランニングコストもかかりますから。それでも、それら諸々を上回る何かを手にしてしまったのでしょう。
フィルム撮影は手間暇がかかるものですが、手間暇をかけた時間軸が、きちんと一枚の写真に写り込んでいるように感じるのです。フィルムってやっぱり良いなあと思う理由の1つかもしれません。そして色んなフィルムを取っ替え引っ替え装填出来ることもフィルムの魅力の1つかなと思います。そういった意味でも、今、ACROS IIが発売になったことをとても喜んでいる一人です。
( Photography & Text by TA )
※クリックで作例を拡大
( 2020.02.21 )