PHOTO YODOBASHI
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Canon EOS-1D X Mark III / SHOOTING REPORT
先代モデル登場の2016年から約4年。シリーズ三代目のEOS-1D X Mark IIIがリリースとなりました。連写性能が最大14コマ/秒から16コマ/秒となり、連続撮影可能枚数はRAW+JPEG時でも1000枚以上。測距点は先代の最大61点(クロス最大41点)から最大191点(クロス最大155点)と大幅に向上。映像エンジンには新開発のDIGIC Xを搭載。先代のデュアルDIGIC 6+からシングル構成に変更となりましたが、そのパフォーマンスはDIGIC 6+を大きく上回るパフォーマンスを発揮できると謳われています。さらに、HEIF記録にもシングルエンジンで対応し、動画に関しても5.5K RAWを実現しています。感度は常用感度でもISO 102400の高感度を可能とし、拡張感度はH3でなんとISO 819200。DIGIC Xの性能がいかに高いものであるかがうかがえます。メーカーの顔ともいうべきフラッグシップモデルが、4年という歳月を経てどんな風に進化したのか。その外観と、作例からじっくりと確認してみましょう。
( Photography : A.Inden / Text : Rica )
LOOK & FEEL
フィルム時代から脈々と続く、フラッグシップモデルの風格あるスタイルに大きな変化はありません。必要な機能を必要なカタチのなかに盛り込んでいくと、結果このスタイルになるのでしょう。
トップカバー部に関しても変更はなく、各種ボタンのレイアウトも先代のMark IIと同様です。EOS-1Dシリーズとしては初めてカメラ単独でのFTP転送を実現するWi-Fi通信機能(IEEE 802.11b/g/n)を搭載しており、カメラだけで各種スマートデバイスとの連携、FTP転送、EOS Utilityによるリモート操作が可能になりました。
液晶モニターを含む背面も各種ボタン類のレイアウトに変化はありません。ファインダー右のAFスタートボタン(AF-ON)がスマートコントローラーとなり、ボタンのトップに触れスライド操作を行うことで光学的に指の動きを検出し、測距点を移動することが可能になりました。また、液晶モニターは約210万ドット、大型で広視野角の3.2型クリアビュー液晶II。静電容量方式のタッチパネルを採用し、AFフレームの移動だけでなく、メニュー機能の操作や画像再生時の画像送り、拡大表示なども可能になっています。液晶モニター下部のボタンには、バックライトが搭載されました。表示パネルの表示ボタンを押し、点灯させることができます。撮影前後に設定を確認する際などにとても便利な機能です。
ケーブルレリーズの端子がカメラ左側へ移動となったことに伴い、各端子のレイアウトを再配置しています。外部マイク入力/ライン入力端子、拡張システム端子、Ethernet用RJ-45端子、デジタル端子、HDMIミニ出力端子、シンクロ端子、リモコン(N3タイプ)端子、ヘッドフォン端子があります。
HDMIミニ端子出力はタイプCとなっており、タブレットなどを接続して使用することができます。
連写性能は高速連続撮影時、ファインダー使用時で16コマ/秒、ライブビュー使用時には20コマ/秒と先代からさらに高速化。シャッターボタンを押している間、絶え間なくシャッターが動作し続けます。
SPEC & OVERVIEW
目に見えるスタイルの変化はほぼありませんが、各性能が大きく向上しています。新しい映像エンジン、新しいセンサー、新しいファインダーシステム、そして動画撮影の性能もアップしており、まさに「新しいカメラ」に生まれ変わっているのです。特に、これまでデュアル構成であった映像エンジンはDIGIC Xのシングル構成となっていますが、CMOSセンサーの刷新も伴ってノイズ抑制、解像感アップだけでなく、1基となったことで電力消費や発熱量も抑制できるというメリットもあります。プロフェッショナルの要求にも応えられる自力が全方位にしっかりと備わっているのです。
製品名 | EOS-1D X Mark III | EOS-1D X Mark II | EOS-1D X |
---|---|---|---|
発売日 | 2020年2月14日 | 2016年04月28日 | 2012年06月20日 |
センサー | CMOSセンサー (約35.9×23.9mm) |
CMOSセンサー (約36×24mm) |
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有効画素数 | 約約2010万画素 | 約2020万画素 | 約1810万画素 | 撮影感度 |
標準:ISO100~102400 拡張:L(ISO 50)〜H1(ISO 204800)、H2(ISO 409600)、H3(ISO 819200) |
標準:ISO100~51200 拡張:L(ISO 50)〜H1(ISO 102400)、H2(ISO 204800)、H3(ISO 409600) |
標準:ISO100~51200 拡張:L(ISO 50)〜H1(ISO 102400)、H2(ISO 204800) |
映像エンジン | DIGIC X | デュアルDIGIC 6+ | デュアルDIGIC 5+ |
シャッター速度 |
メカシャッター/電子先幕設定時:1/8000~30秒、バルブ 電子シャッター設定時:1/8000~0.5秒 ストロボ同調最高シャッタースピード=1/250秒 ※動画撮影時は設定範囲が異なる |
1/8000~30秒(すべての撮影モードを合わせて) バルブ、ストロボ同調最高シャッター速度=1/250秒 |
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連写性能(高速連続撮影時) |
ファインダー撮影時:最高約16コマ/秒(16~3コマ/秒に設定可能) ライブビュー撮影時:最高約20コマ/秒 |
ファインダー撮影時:最高約14コマ/秒(14~2コマ/秒に設定可能) ライブビュー撮影時:最高約16コマ/秒(16, 14~2コマ/秒に設定可能) |
超高速連続撮影:最高約14コマ/秒 高速連続撮影:最高約12コマ/秒 |
連続撮影可能枚数 |
1000枚以上 ただし、RAW+HEIF時は約350枚、C-RAW+HEIF時は約420枚 |
JPEGラージ: CFカード:標準:約140枚/高速:Full CFastカード:Full RAW: CFカード:標準:約59枚/高速:約73枚 CFastカード:約170枚 RAW+JPEGラージ: CFカード:標準:約48枚/高速:約54枚 CFastカード:約81枚 |
JPEGラージ:約100枚(約180枚) RAW:約35枚(約38枚) RAW+JPEGラージ:約17枚(約17枚) |
ファインダー倍率 |
視野率:100%(アイポイント約20mm時) 倍率:約0.76倍 |
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AF測距点 | 最大191点(クロス測距点:最大155点) | 最大61点(クロス測距点:最大41点) | |
測距輝度範囲 | EV -4~21(中央F2.8対応測距点・ワンショットAF・常温・ISO 100) | EV -3~18(中央F2.8対応測距点・ワンショットAF・常温・ISO 100) | EV -2~18(中央F2.8対応測距点・常温・ISO 100) |
液晶モニター |
TFT式カラー 3.2型(3:2)/約210万ドット |
TFT式カラー ワイド3.2型(3:2)/約162万ドット |
TFT式カラー ワイド3.2型(3:2)/約104万ドット |
動画記録形式 | 通常動画:MP4 RAW動画:RAW(12bit) |
MOV/MP4 | MOV |
フレームレート | 119.9p/59.94p/29.97p/24.00p/23.98p(NTSC設定時) 100.0p/50.00p/25.00p/24.00p(PAL設定時) ※119.9p/100.0pはFull HDのハイフレームレート動画 |
Full HD:30p/25p/24p HD:60p/50p SD:60p/25p |
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動画記録サイズ |
5.5K RAW:5472×2886 4K DCI:4096×2160 4K DCIクロップ:4096×2160 4K UHD:3840×2160 Full HD:1920×1080 |
4K:4096×2160 Full HD:1920×1080 |
Full HD:1920×1080 HD:1280×720 SD:640×480 |
動画撮影可能時間 |
常温(+23度):合計約4時間40分 低温(0度):合計約4時間10分 |
常温(+23度):合計約2時間20分 低温(0度):合計約2時間 |
常温(23度):約2時間10分 低温(0度):約2時間 |
記録媒体 | CFexpressメモリーカード(タイプB:2カードスロット) |
CFカード(タイプI準拠、UDMAモード7対応) CFastカード(CFast 2.0対応) |
CFカード(タイプI・II準拠、UDMAモード 7対応) |
Wi-Fi | あり(IEEE 802.11b/g/n) | ― | ― |
Bluetooth® | 4.2準拠 | ― | ― |
デジタル端子 | SuperSpeed Plus USB(USB3.1 Gen 2)相当 USB Type-C パソコン通信 |
SuperSpeed USB(USB3.0) パソコン通信 コネクトステーションCS100接続 |
アナログ映像(NTSC、PAL対応)/ステレオ音声出力 パソコン通信 ダイレクトプリント(Hi-Speed USB相当) |
HDMIミニ出力端子 | タイプC(解像度自動切り換え) | タイプC(解像度自動切り換え)、CEC対応 | |
バッテリー | LP-E19 1個 | LP-E19/LP-E4N/LP-E4(1個) | LP-E4N/LP-E4(1個) |
幅 | 158mm | ||
高さ | 167.6mm | 163.6mm | |
奥行き(厚み) | 82.6mm | 82.7mm | |
重さ(総重量) | 1440g | 1530g |
PHOTO GALLERY
まずはEOS-1D X Mark IIIの素性のよさを確かめるため、さまざまな条件で撮影をしてみました。有効画素数こそ先代の2020万画素から2010万画素に抑えていますが、新しいCMOSセンサー、そしてEFレンズの解像力をさらに引き出す新開発のGDローパスフィルター、映像エンジンDIGIC Xがもたらす緻密でリアリティある描写をご覧ください。
透明感のあるクリアな描写。黒がグッと締まり、被写体が力強く主張してくる画です。JPEG撮って出しの画からは、これまでキヤノンに感じていたイメージとは違う印象を受けました。筆者はこれまで、キヤノンの歴代のデジタルカメラを使ってきました。その描写はよく言えばニュートラルで何かを強く主張するというタイプの画ではありませんでした。EOS-1D X Mark IIIの描写は、そんな長年の感覚を180度変えるものでした。
カメラの描写傾向が変われば、当然狙ってみたい被写体は変わってきます。ハイキーで優しい雰囲気の写真ではなく、都会をクールに切り取ってみました。標準露出、絞りは開放ではなくいちばん解像力が高いと感じられるF5.6に設定。それは、ここまでクリアでグッとくる描写であれば、設定をアジャストすることなく純粋にファインダーの中で構図を追ってみたいと思わされたからです。
16コマ/秒の連写で車を流し撮り。測距点は最大191点の測距点と細かな設定ができるため、車のサイドミラーにポイントを置きました。一点を追うことで正確な流し撮りができました。
直射日光で白い被写体を撮影。デジタルカメラがいちばん苦手であろう条件ですが、豊かな諧調で繊細に白のグラデーションを再現しています。
逆光に光る工場は空の諧調と金属の質感を出すため、かなりアンダー目に撮影しました。パソコン画面で拡大し確認すると、ほとんど潰れてしまうだろうと思った暗部にも金属の質感が残っていました。
水が撒かれた道路に写り込む夕焼けのグラデーションがとても美しいシーン。高感度の強さを確認しようと終日ISOオートで撮影しました。このカットはISO 4000で撮影されていましたが、高感度で撮影されたことはEXIFを確認するまで全くわからないほど、暗部にもノイズはほとんど見られません(クリックで原寸画像をご覧いただけます)。
ISO感度を変えながら高感度の比較撮影をしてみました。ISO 200、F3.5で10秒の露出、いかに暗い条件で撮影されたかおわかりになるかと思います。十分に光量があるところで高感度撮影をすると、概ね良好な結果が得られるものですが、EOS-1D X Mark IIIはフラッグシップ機ですから、これぐらいはこなして欲しい!と思い、かなりシビアな条件でテストしてみました。結果ISO 12800でやっと暗部にノイズのようなものが見られました。常用感度としてはISO 6400程度まではまったく問題なく使えるなという印象を受けました(下の4点はクリックで拡大表示できます)。
一眼レフの熟成感と、新時代のハイブリッド感で新たなステージへ
フラッグシップモデルであるEOS-1D X Mark IIIは、プロフェッショナルユースのカメラだと言い切ってしまってもまったく問題ないでしょう。でも、日常的にミドルクラスからハイエンドクラスのフルサイズミラーレス機やAPS-C機を使っている私たちこそ、このカメラの恩恵をいちばんに受けることができるのだと思います。超望遠レンズが必要で、かつ動きの速いスポーツや、予測のできない動きを追うワイルドライフ系の撮影にはもちろん「必要」なカメラであることは間違いありませんが、それらを撮ることで本来のパフォーマンスを発揮するのではなく、どんなシーンでも思うままに撮ることができる。それがフラッグシップモデルの存在意義です。撮った画はハッとするほど繊細でリアリティがあり、画素数だけでは計り知れない力があります。ミラーレス機への過渡期も最後期と考えられる現在にありながら、一眼レフとしてその性能を大幅にアップしてきたEOS-1D X Mark IIIは、いまでも、そのスタイルだけでなくシャッターボタンを押し連写の音を聴くだけで心が躍り、いつかはあのカメラを手にしたいと憧れる存在なのだと思います。これまでのAFの被写体認識、自動追尾(EOS iTR AF)の機能に加え「頭部検出」ができるようになっており、顔検出と併せて測距、追尾の信頼性が大きく向上しています。そう聞いただけで、私たちでもあのスポーツ選手を撮れるかもしれない、あの鳥を追いかけられるかもしれないと夢が広がりませんか? また、AFスタートボタンにその機能を追加したスマートコントローラーは、EOS Rで搭載されたマルチファンクションバーが一眼レフのフラッグシップモデルにふさわしい形に進化したものでしょう。ボタンに触れ、スライドすることで測距点を移動、その状態で押し込めばAFがスタートします。ミラーレス機のメリットを一眼レフに応用し、必要な形に変えることで一眼レフでありながらミラーレス機のシームレスな操作感を得ることができる。新しい時代の一眼レフとして、非常に高い次元で各機能がバランスされています。これだけのパワフルな機能を揃えながら、バッテリーの持ちが非常に良いのも特長のひとつ。一日中撮影をしていてもバッテリーの目盛りが減ることがなかったことに驚きました。もちろん、日常的に使うには少し大きくて重いカメラですし、誰もが手にできるモデルではないかもしれません。ただ、手にすればシンプルに「すごい!」と感動できる貴重なカメラであることに間違いありません。
( 2020.02.17 )
新開発のCMOSセンサー、そして新しい映像エンジンDIGIC X、さらにAF専用のセンサーを搭載するなど、キーデバイスを一新し、基本性能が大幅にアップしたフラッグシップモデルです。
デジタル時代に対応した、新たな光学系でさらなる高画質を実現した標準ズームレンズ。プロのための進化とも言える、全ズーム域での安定した描写力はハイスペックレンズというにふさわしい一本です。
バッテリーパックLP-E19(またはLP-E4N、LP-E4)を2個取り付けて充電できるバッテリーチャージャーです。LP-E19の充電時間は約170分。バッテリーの適正なライフを保つキャリブレーション機能を搭載しています。
大容量のリチウムイオンバッテリー(10.8V/2700mAh)です。前モデルのLP-E4Nから容量が約10%アップしています。また、高速連続撮影を実現する電池特性も備えています。
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