SIGMA インタビュー dp2 Quattroの開発経緯について

 


— 今後のSIGMAとしての物作りのスタンスのようなお話をお聞かせください。

[ 山木社長 ]
カメラにはいろいろな用途があり、だからこそいろいろなものがあっていいと思っています。各社得意なところを伸ばしていけばいいですよね。SIGMAとしては、お客様に驚きを持ってもらえる製品を作っていきたいというのが一番の想いであり、夢でもあります。経営の話になると結局「どういう生き方をするか」といった話に似通ってくるのですが、経済合理性のある場所でモノを作るとか、規模を追って安く買って大量に売るという道もある中で、SIGMAはたまたま日本に残るということを決めたわけです。日本でできることをやろう、ということになると、やはり気心知れた仲間とこだわった製品を作るというのが一番だと個人的には感じています。そのこだわりを工場に伝えて、工場が「よし、わかった。やってやろう」と、自分たちの特性を活かして高いモチベーションと使命感をもって取り組んでいく。そんな物作りをしていきたいと思っています。

— 一眼レフでも最近EVFが進化したことで、ミラー不要論が出てきたりしています。dp2 Quattro のようなカメラが出てきたからこその質問ですが、「こんなカメラを作ってみたい!」といったことがあればお聞かせください。


[ 山木社長 ]
基本的な方向としてはFoveonセンサーで、画の質で勝負したい、驚いていただきたいと考えています。例えば初めて4x5のフィルムをルーペで見て驚き、次に8x10で撮られたオリジナルプリントを見てしまうと、今度は4x5や中判でも物足りないと感じてしまう。そんな風に「画を見て衝撃を受ける」というようなものを提供できたら嬉しいですね。それが古い8x10のようなソリューションではなく、コンパクトに持ち運べるものなのに「ここからこんなに凄い画が出てくるんだ」という驚きをもたらしてくれる。使っていて心地よく、ルックスも持ってるだけで嬉しくなるようなもの。そういったものを作っていきたいと思っています。

僕の原点は中学の時の野球のグローブなのです。初めて買った時には嬉しくて毎日のように触り、オイルを入れて馴染ませたりベッドの横に置いたりしていました。モノが消費されていく現代において、カメラやレンズはまだコモディティになりきらないレアなケースといいますか、愛着が求められている数少ない製品だと思っています。単に美しいデザインであるとかそういうことではなくて、愛着が湧くようなものであること。そのために細部までこだわって、最後まで製造して、お客様にお届けできるのが一番いいかなと思っています。


— 失礼ながらも、山木社長はこの閉塞した時代に、結構のびのびやられているように感じるのですが(笑)

[ 山木社長 ]
企業規模的にですよね。森行が生意気で(笑)。「SIGMAが好き勝手やれるのはこのサイズだからですよね。これ以上大きくなったらもうダメですよね」と生意気にも休憩室でアドバイスされました(笑)。中小企業ならではのフットワークのよさと思い切りみたいなのは大切にしていきたいです。


— ははは。最後に山木社長に思うことはありますか?

[ 幸野さん ]
仕事は昔から自由にさせてもらっています。今も「自由にやれ」と外野から圧力がかからないような組織にしてもらっているのですね。先代の会長の時にもそうだったのですが、2日後には話が変わっていることがある。金曜日に決まったことが月曜日には変わっているというような(苦笑)。


— 幸野さん、それは基本だろうと思います(笑)。経営とは生き物で、そこら中で同じような言い訳を耳にします(笑)

[ 幸野さん ]
そこがよいところでもあり、我々としては振り回されることがあります。技術陣としては「やれ」と言われたことに対して根拠をまず詰めていって、紐づけなくてはならないものが沢山あり、その辺りが大変なのです。しかし、今、本当に面白く仕事をさせてもらっています。

[ 森行さん ]
こんなに面白いものを作れる仕事はありません。カメラの世界でも、SIGMAがいま一番面白いことができるんじゃないかと思って、本当に楽しいですよね。でも、休日出勤はちょっとでいいです(笑)



皆様、お忙しい中ありがとうございました。山木社長が途中でご退席されたので、もう少し掘り下げてもよかったのですが、このあたりで。dp2 Quattroの実写インプレッションも合わせてご覧ください。画についてはもちろん、ボディの使い勝手についてもまとめております。先代モデルに比べて次元が一つあがりました。これまで気むずかしかった一面が結構あったのですが、Foveonの超絶画質をイージーに扱えるようになった印象です。

 

 

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( 2014.06.20 )




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