SIGMA インタビュー dp2 Quattroの開発経緯について

 


— さて、スタイルの話に戻ります。従来のものと比べてボディ形状も変わり、使用感を左右するユーザーインターフェイス(以下、UI)を詰めるのも結構大変だったのではないでしょうか。UIのコンセプト、そして煮詰めていく過程についてお聞かせいただけないでしょうか。

[ 山木社長 ]
UIに関してはLCDのメニューのデザインも含めて森行が設計しました。彼は新婚なのに土日もほとんど休まずにやっていました。

— 何やら黒い匂いが・・・(笑)

[ 山木社長 ]
いえ、強制してるわけじゃありませんよ(笑)

[ 幸野さん ]
新婚なのにというか、忙しい最中に結婚したんです(笑)

 

— ははは。実際にUIを詰めていくのは非常に大変な仕事だと思いますが、何を一番重視して開発されたのでしょうか。

[ 森行さん ] (やっとご登場)
どちらかというと多機能が売りのカメラではなく、「写真と向き合う」というところにdpの良さがあると思います。それを的確にサポートし、あまり奇をてらったことをせず、写真と向き合うお客さまがスッと扱うことができる。そんな操作感を追求しました。

 

— 社内でテストをしたり、外部でのテストなどから様々な意見が上がると思いますが、どんなところで折り合いをつけているのでしょうか。設計者の中にはひとつの軸となる考え方があると思いますが・・・

[ 森行さん ]
考え方としては、いわゆるコンパクトデジタルカメラ的なものではなく、プロの方々・ハイアマチュアの方々を意識して、一眼レフのようなものに近づけています。ただベースをそこに置きながらも、様々なユーザーの方々が入りやすいように意識しています。このあたりの兼ね合いが大変難しいですね。


— 今回2ダイヤルになりました。ダイヤルのクリック感やフォーカスリングのトルク感ひとつで操作感は変わったりしますが、そういったものはどのように詰めているのですか?

[ 森行さん ]
まずは社内に基準やノウハウの蓄積がありますので、それをベースにしつつ沢山の試作品を作り、山木にも見せています。ダイヤルの感触などはDP2 Merrillの時から気にしていて、常に議論を重ねてきました。今回一眼レフなどでも一般的な2ダイヤルになったため、感触は最初から追い込むつもりで開発を行いました。これが日本人の感覚だけではダメで、例えば指が触れる部分であれば日本やアメリカではソフトな感触が好まれますが、ヨーロッパ(特にドイツ)ではしっかり・がっちりとした感触が求められるといった、国や地域によって違いが見受けられます。日本だけに囚われることなく、使われる方のプロファイルを広くイメージしながら皆で話し合って作っています。


— なるほど。最終の形に至るまで、グリップの形状など様々なアイデアがあったと思いますが、コンパクトなのにポケットに入らないというような矛盾や葛藤について社内での議論はなかったのですか?


[ 森行さん ]
社内でも「この大きさはまずい」という意見もあり、山木にも相談しました。山木も大変悩んだようですが、それでも優先すべき事を大切にしようという判断になりました。

 

商品企画部 デザイン課 係長 森行浩人さん
そんな会社の製品リリース・スケジュールに合わせて、ご結婚のスケジュールを同期できませんよね(笑)

 

— この形に行き着くまで、紆余曲折があったと思います。バージョンを振るのは難しいと思いますが、いかがでしょうか。


[ 森行さん ]
そうですね。レイアウトは一本道ではなく、様々な紆余曲折を経て、サバイバルのように生き残った結果が採用されています。バージョンで言うのは難しいのですが、期間としてはこのデザインが決まるまでに半年ぐらいの時間がかかりました。

 

— 少しLCD内の使い勝手について。あれだけスマートフォンなどが普及してくると、カメラのメニュー構成などにも少し変革があってもいいのかなと思うのですが、このあたりどのようにお考えでしょうか。


[ 森行さん ]
まず、LCDなどデバイスとして遅れていると思います。スマートフォンは液晶も高精細だったりと、単純に比較すれば遅れているところはありますが、ただカメラとしての操作というところもあるので、表示や操作が全部スマートフォンのようになればいいとは個人的には考えていません。

[ 山木社長 ]
今回は新しいセンサーの能力をきっちり最大限発揮するカメラということで、形以外は普通に作ったつもりなので、まずは違和感なく使えることを意識しました。カメラというデバイスの中で、もう少し新しいUIへの飛躍があっても面白いかなと思っています。例えばApple製品のように、本来的には必要ないかもしれないけれども、使って気持ちいいというところに配慮できることは素晴らしいですよね。ただカメラに入っているデバイスは写真を撮ることに集約していますから、グラフィック系に強いデバイスは含まれておらず、画像処理に強いデバイスしか入っていません。ハードウエアのパフォーマンスが上がってくると、そういうことができるチップを入れるスペースが生まれて、対応できるかもしれません。今後のデバイスの発展と我々の提案力の中で、面白いことをできたらと考えています。

 

 

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