SIGMA インタビュー dp2 Quattroの開発経緯について

 


— 次に、レンズについて伺います。DP2 Merrillに搭載されたレンズとの違いについてお話を伺いたいのですが。

[ 幸野さん ]
レンズの構成自体は変更ありませんが、AFのランプを内蔵したり、モーターをボディから鏡胴内に移したこと、またデザイン的なものなどから鏡胴が大型化しています。

 

— レンズを設計した時期と設計のポイントを伺えますか?

[ 幸野さん ]
レンズの設計は約3年前になります。DP2 Merrillのセンサーに負けないレンズを作ることを第一の目標として設定いたしました。Merrillセンサーのセンサーピッチから申し上げると、100本/mm以上の解像度が必要になりますが、それを周辺のどこまで出せるのかに腐心しました。あらゆる収差を取り除いていかないと、なかなかそこにたどり着けないのですが、特に倍率色収差が少しでも残っていると、周辺で解像してこなくなります。十分な解像はするのですが、ズレたものをセンサーがそのまま記録してしまうのです。

[ 山木社長 ]
レンズの設計データから解像限界がどこまであるかを計算し、Quattroでも問題ないと判断し、そのまま使うことにしました。

— レンズ構成について解説していただけませんか?

[ 幸野さん ]
発想としては絞りがレンズの前方にあり、そこを含めた前群でフォーカスを行っています。ダブルガウスの前側がない変形ガウスとも言える構成で、全長をコンパクトにするために後群にテレコンをつけて焦点距離を伸ばしながら、テレセントリックス性も改善(センサーへの入射角を改善)しています。このレンズ構成はF値が明るいタイプに多いのですが、周辺の性能を出すためにぎゅっと絞って使っている贅沢なものになっています。交換レンズにはそのまま転用できないのですが、考え方としてはミラーレス用の30mm F2.8にもコンセプトが活かされていますね。

 

— なるほど。かなり贅沢な作りですね。ボケ味のコントロールなどはどのようにお考えですか?

[ 幸野さん ]
ボケ味はシミュレーションで極力考慮して設計していますが、まずはきちんと性能が出ることを前提条件としています。絞りの位置は口径食にまず大きく影響しますが、あとは球面収差の倒し方をどのようにするかを考えています。ちょっとアンダー(少し手前に像を結ぶよう)に設計して、解像は落ちてしまいますが後ボケがきれいになるよう設計しています。

 

開発部 開発第2ユニット ユニット副部長 幸野朋来さん
筆者が「クセたっぷりのレンズをお願いします」と何度か見当違いな話を試みるも、にこやかにサラリとかわされました。失礼いたしました(笑)

 



日頃一眼レフ用レンズなどの構成図を見ていると、コンパクトカメラに搭載されるレンズの構成は本当に面白いですね。コンパクト化と画質を両立させるために、ありとあらゆる工夫が盛り込まれています。DP2 Merrill・dp2 Quattroに搭載されるレンズは後ボケが美しく、幸野さんのコメント内容の繰り返しとなりますが、解像力とのバランスをピンポイントで突いて開発されているのだろうと思います。球面収差を完全補正することは事実上不可能といってもいいかもしれません。実写では前ボケの美しさを経験するシーンの方が少ないわけですから、後ボケを重視しますよね。

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