SIGMA インタビュー dp2 Quattroの開発経緯について

 

SIGMA dp2 Quattroは、レンズの基本構成こそ従来機からのキャリーオーバーとなりますが、センサーをはじめとして殆どが刷新されました。ポケットに収まる「コンパクトデジタルカメラ」のパッケージングに大判センサーを搭載する、"カテゴリーの枠を超えたカメラ"を最初に送り出したのはSIGMAでした。しかし今度のdp2 Quattroはどう見てもポケットには収まりそうにありません。ポケットはもとより再びカテゴリーの枠からはみ出してしまったカメラを見て、これはぜひ話を伺ってみたいと、3月にSIGMA本社を訪問いたしました。その模様をお届けしたいと思います。

( 聞き手:K / 撮影:ZII )

 


— 山木社長、それは無理な相談です(笑)。世の中ダウンサイジングに突っ走っている中、先代モデルと比較してサイズアップしたうえに、この形ですから。聞くなというほうが無理というものです。それではdp2 Quattroの開発経緯についてお聞かせいただけますか。

[ 山木社長 ]
まずSIGMAとしては「画質を追求すること」「作品作りにお使いいただくのに、しっかりとそれを支えるカメラであること」。このあたりを最も重要視しています。このコンセプトは首尾一貫したものですが、今回そこに一層原点回帰した面はあります。結果としてこの形に辿り着いていますが、最初からこの形ありきで開発したわけではありません。基本的なコンセプトに沿ってカメラを全方位に渡ってアップデートするなかで、様々な物事を積み上げていった結果なのですね。

山木和人 株式会社シグマ代表取締役社長。
1968年東京生まれ。1993年、株式会社シグマに入社。 2000年、取締役・経営企画室長を経て 2003年、取締役副社長。 2005年、取締役社長就任。2012年代表取締役社長就任。編集部の藪から棒な質問にも、いつもにこやかに答えてくれる紳士な社長さんです。

 



片手でホールドすると少しサイズのことが気になりますが、グリップを握り、本体の底に左手をそっと添えると、なるほどしっかりとホールドできます。レンズシャッターなこともあって、かなり低速までシャッターが切れそうな予感。それほどしっくりくる形です。画素数も上がり、より手ブレに敏感になるわけですから、きちんと撮ろうと思えば望ましい形かもしれませんね。

— なるほど。誰もがこんな形にはなるとは想像もしていなかったと思います。その積み上げられてきた過程についてお聞かせください。

[ 山木社長 ]
まず、今回のQuattroセンサーの開発がありました。どんなセンサーを作るかについてFoveon社と長く協議を続けていましたが、Merrillセンサーから次へ向かうにあたって、SIGMAとしては「画質(解像度)を追いたい=ピクセル数を増やしたい」という考えがありました。そこで、増大するデータ量を改善するために生まれたのがQuattroセンサーです。最初に搭載するカメラを何にするかについては、極めて解像度が高いこともあり、ボディ起因によるショックがなく、専用レンズで周辺までしっかり解像するdpからという流れですね。もちろん今後一眼レフであるSDへの展開も考えています。

DP2 Merrillにも前段処理と後段処理を行う「ダブルDSPシステム」が入っているのですが、今回さらに強力なものを採用しました。センサーから送出されるデータ量はハイエンドの一眼レフとほぼ同じですから、dpではADコンバーターを4つ搭載し、その後2Gbitのメモリーがついたチップで前段処理を行い、4Gbitのメモリーがついたチップ(TRUE III)で後段処理を行っています。カメラとしての性能を上げようとすると、どうしてもシステムが膨大になっていきます。コストはかかるのですが、最新の積層型の基板などを用いることでコンパクトにする努力をしています。

システムが大きくなれば消費電力も大きくなり、バッテリーを大型化すればカメラが大きくなってしまう。dpのようなコンセプトの「大型のセンサーを載せたレンズ固定式コンパクトデジタルカメラ」が各社から出てくる中で、SIGMAとしてはどうあるべきか考えました。そして迷ったときには、常に「画質」を優先してきました。多少は大きくなってもしっかり撮れるカメラを目指そうという考えから、結果として出てきたものが現在のデザインだったのです。初めからこのデザインなのではなく、辿り着いたのがこのデザインなのですね。

— ただでさえ膨大なデータを送出するセンサーを、さらに高画素化するためにQuattroセンサーを開発し、それを駆動するのにパワーも必要。バッテリー容量アップも必要に。カメラの使い勝手(ホールド性)などを含めて、この形になったということですね。


[ 山木社長 ]
そういうことですね。デザインとはその会社が何を考え、どうしたいのかというものが稜線として表れていると考えています。今回のdp2は確かに形に目をひかれる部分があると思いますが、あくまでよりよい作品作りに貢献できるカメラを開発するために、センサーをはじめとしてカメラを構成する各部を刷新し、コンセプトに従って統合した結果なのですね。

 

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